ハウザー&ワースがイタリア進出を発表。シチリアの歴史的建築に19カ所目の新拠点開設へ
世界4大メガギャラリーの一角を占めるハウザー&ワースが、シチリア島パレルモの歴史的建造物を利用したギャラリーの開設計画を明らかにした。同ギャラリーにとって初のイタリア進出となる。

12月5日、世界18カ所に拠点を構えるハウザー&ワースが、イタリア初の拠点をシチリアに開設する予定であることを発表した。新たな拠点は同島最大の都市、パレルモのパラッツォ・フォルチェッラ・デ・セタに設けられる。
19世紀に建てられたネオ・ゴシック様式の貴族の邸宅、パラッツォ・フォルチェッラ・デ・セタはこれまで、文化的施設としていくつもの歴史を刻んできた。1937年から1940年まで、ここにはパレルモ初の商業アートギャラリー「ガレリア・メディテラネア」があり、2018年にパレルモで開催された現代アートの国際ビエンナーレ、マニフェスタ12の会場にもなっている。
その後、2020年に建物の大部分が売りに出され、ハウザー&ワースは2023年に現地調査を開始。この11月、正式な契約が締結された。同ギャラリーが取得したのは約1860平方メートルで、展示スペースとして使用されるメインフロアのほか、2つの翼部分とギャラリーの事務所に使用される建物が含まれる。
ただし、歴史的建造物に指定された建物であるため、シチリア州政府とイタリア文化省には、60日以内に建物を購入できる優先買取権がある。この権利が行使されなければ、ハウザー&ワースは2026年に現地での改修作業を開始し、2030年までに完成させるとしている。同ギャラリー代表のイワン・ワースは、声明でこう述べている。
「シチリア島パレルモにある歴史的建造物、パラッツォ・フォルチェッラ・デ・セタを取得したことを正式に発表します。このように重要かつ美しい場所を修復し、数世紀にわたる文化交流の地として知られる建物に、新たな芸術の拠点を作り上げる機会を得られたことを光栄に思います。今後数カ月のうちに、私たちの構想と計画の詳細をお伝えできるのを楽しみにしています」
声明で同ギャラリーは、チューリッヒ、ロンドン、ニューヨーク、メノルカ島などで歴史的建築を保存しながら文化プロジェクトを創出する「長く確立された実績」があることを強調。イギリスのサマセット(18世紀の農場)、スペインのメノルカ(旧海軍病院)、そしてロサンゼルス(元製粉工場)における細心の注意を払った建物保存に対し、数々の賞が授与された事例が挙げられている。(翻訳:石井佳子)
from ARTnews