「呪われた宮殿」の噂も──モネが作品に描いた15世紀ヴェネチアの名建築が販売中
- TEXT BY ANDY BATTAGLIA
クロード・モネ(1840-1926)が《ヴェネチア、パラッツォ・ダリオ》(1908)に描いたヴェネチアの宮殿が、売りに出されている。貴族の邸宅の面影を今に伝える名建築だが、2022年以降、所有者不在の状態が続いているのには理由があるようだ。
ヴェネチアの大運河沿いという一等地に建つ著名な宮殿、パラッツォ・ダリオが、クリスティーズ・インターナショナル・リアル・エステートを通じて売りに出されている。
パラッツォ・ダリオは、もともとゴシック様式の宮殿として存在していた。15世紀後半、ヴェネチア共和国の外交官と元老院書記官を務め、第一次オスマン・ヴェネチア戦争後の和平交渉にも関わった貴族ジョヴァンニ・ダリオが、建築家ピエトロ・ロンバルドに依頼して大改装を行った。アートネットによれば、1494年にダリオが死去した後は娘マリエッタに継承され、その後18世紀後半まで、マリエッタの嫁ぎ先であるバルバロ家が所有し続けたという。19世紀には改修も行われ、宮殿の外観は、大部分が保存修復された。
宮殿の敷地面積は約1000平方メートルで、建物は4階建て。物件情報によると、円形の多色大理石象嵌で装飾された壮麗なファサードには、高級石材として知られるピエトラ・ディストリアが用いられている。その装飾性については、外交官として活動したダリオが接した東方文化の影響が反映されていると指摘されることも多い。
内部には、ムラーノガラスのシャンデリアと大きな暖炉を備えた大広間があり、最上階には複数の寝室がある。屋外にはボート用スロープと船着き場、中庭、テラス、庭園が備えられており、ヴェネチアの貴族の邸宅らしい構成を今に伝えている。
モネをも魅了した建築にまつわる「黒い噂」
この宮殿は、長い歴史の中で多くの文化人を惹きつけてきた。19世紀イギリスを代表する美術評論家ジョン・ラスキン(1819–1900)は、自身の著作『ヴェネチアの石』(1851–53)の中で、パラッツォ・ダリオをゴシックからルネサンスへの移行期を示す重要な建築例として評価している。
また、1908年秋にヴェネチアを訪れたクロード・モネは、大運河沿いの光と水面のきらめきに魅了され、「ヴェネチア連作」を制作。そのうちのひとつ、パラッツォ・ダリオ周辺を描いた《ヴェネチア、パラッツォ・ダリオ》(1908)は現在、シカゴ美術館に所蔵されている。
しかし、こうした芸術史的な名声とは裏腹に、パラッツォ・ダリオはいわくつきの建物としても知られる。TOWN&COUNTRYによれば、同物件は2022年以降、買い手がついていないという。この宮殿は、かつてテンプル騎士団の埋葬地があった場所に建てられたという噂があり、20世紀以降、所有者や関係者に不幸が続いたことから「呪われた宮殿」と呼ばれるようになった。
1980年代にこの宮殿を購入したイタリアの実業家ラウル・ガルディーニは、汚職スキャンダルの渦中にあった1993年に自ら命を絶った。また、2002年にイギリスのロックバンド、ザ・フーのベーシスト、ジョン・エントウィッスルが、この宮殿を借りた直後にラスベガスで死亡したことも、こうした噂に拍車をかけた。地元アートスタジオのマネージャー、マファルダ・アリヴァベーネは、2023年にAir Mailの取材に対し、「この場所に入る者には、喪失、破産、あるいは死のいずれかが起きると言われている」と語っている。
物件情報によると、2025年には宮殿の包括的な鑑定が実施され、現在はその証明書付きで販売されている。販売価格は非公開だが、TOWN&COUNTRYは、2024年時点での評価額が約1800万ユーロ(約33億円)だったと報じている。(翻訳:編集部)
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