博物館に眠る「マンモスの化石」は別の動物だった──DNA解析が明かした意外な正体
1950年代に発見され、「マンモスの骨」として長らく博物館に所蔵されてきた化石が、DNA解析によって別の動物であったことが判明した。きっかけとなったのは皮肉にも、「マンモスの里親になろう」と名付けられた化石再調査のためのチャリティプログラムだった。

博物学者のオットー・ガイストは1950年代初頭、アラスカ州フェアバンクスを探検していた際にマンモスの背骨と思われる化石を発見した。以来、この化石はアラスカ大学北方博物館に保管されてきた。その後、同館が2022年に実施したチャリティプログラム「Adopt a Mammoth(マンモスの里親になろう)」の一環で再調査を行なった結果、この骨は1900〜2700年前のものであることが明らかになった。
「Adopt a Mammoth」は、マンモスの骨や牙などの標本の放射性炭素年代測定を行うために寄付を募る取り組みだ。寄付者は研究費を支援する対価として標本の「里親」となることができ(標本は博物館が引き続き保管する)、写真や採集場所、年代測定結果などの情報を受け取ることができる。
もし、1900〜2700年前の化石であることが正しければ、マンモスが絶滅した時期が覆されることになる。さらには、アラスカ大学北方博物館が史上最も若いマンモスの化石を所蔵することになる。しかし、こうした期待とは裏腹に、今回、さらなる解析によって予想外の事実が明らかになった。
研究チームが骨の成分分析を行ったところ、想定とは異なる特徴が確認されたのだ。この結果について、研究者たちは学術誌『Journal of Quaternary Science』に発表した論文の中で、骨が「マンモスのものとは一致しない」と報告している。分析データは古代クジラの骨と類似しており、海洋生物である可能性が高いことが示された。
標本の起源を詳しく調査するため、科学者たちは古代DNA解析に着手。骨からミトコンドリアDNAの抽出に成功し、遺伝学的にはミンククジラとタイセイヨウセミクジラのものであることが特定された。後者は現在では希少種だが、研究チームによれば「いずれの種も特定の季節にアラスカ沖の海域に出現する」という。
調査によって骨の正体は明らかになったものの、古代クジラの骨がアラスカ州内陸部のフェアバンクスで見つかった理由は、新たな謎として残った。クジラが川を遡上した可能性や、腐肉食動物が骨を運んだとする説も検討されたが、いずれも状況的に現実性は低いとされている。現在、有力視されているのは、先住民の交易を通じて骨が内陸部に運ばれたという説だ。記録によれば、先住民はクジラの背骨を食器や家具、儀式用具として利用していたという。
さらに有力な説として、数十年前の化石の収蔵時に、地理情報が誤って記録された可能性も指摘されている。発見者であるガイストはアラスカ各地で化石を採取しており、実際には海岸近くで見つかったクジラの骨が、誤って内陸部のものとして登録された可能性がある。研究者たちは、なぜこの骨がマンモスのものと考えられたのかについては解明が難しいとしながらも、今回新たに2体分の古代クジラの標本が記録・分類されたことは、今後のクジラ研究にとって重要な成果だと評価している。