ルーブル窃盗事件で破損したウジェニー皇后の王冠は「完全修復可能」──修復担当者の公募がスタート
- TEXT BY GEORGE NELSON
昨年10月、パリのルーブル美術館で発生した窃盗事件で破損したウジェニー皇后の王冠。修復担当者によると、深刻な損傷を受けながらも完全修復は可能だという。
昨年10月19日、ルーブル美術館に侵入した窃盗犯らは、推定1億200万ドル(現在の為替で約160億円)相当の宝飾品を盗み出した。だが、逃走の最中に犯人たちは、ウジェニー皇后の王冠を落としてしまう。ダイヤモンドとエメラルドが散りばめられた王冠は落下の衝撃で破損してしまい、「ガレリー・アポロン」で再び公開される前に修復が行われる予定となっている。捜査当局は当初、証拠品として王冠を押収し、翌日には美術館の装飾芸術部門に移送した。その直後、同部門のディレクター、オリヴィエ・ガベと副ディレクターのアンヌ・ディオンが状態を確認したところ、損傷は深刻だった。
王冠は軽量で柔軟な構造だったため、衝撃を受け大きく変形していた。捜査当局によれば、犯人らは電動カッターで保護ガラスを切断したものの、開口部が狭く無理やり取り出した可能性があるという。実際、アーチ型の金属部分の1つは展示室内で折れ、押しつぶされていた。ダイヤモンドとエメラルドで作られた8つのパルメット装飾のうち4つが外れ、交互に配置された金のワシの1つが紛失していた。
The Louvre is looking for restorers to repair the crown of Napoleon III’s wife, which was damaged during a museum robbery.
— Visegrád 24 (@visegrad24) February 5, 2026
The deformed diadem was found several hundred meters from the museum. The emeralds remain intact, but 10 diamonds near the base were lost.
The third photo… pic.twitter.com/pUKHhHEEyD
とはいえ、王冠を彩る宝石の多くは無事だった。修復担当者によれば、65個のエメラルドはすべて無傷で、1354個のダイヤモンドも紛失していたのは土台に沿って配置された小さな石10個にとどまったという。また中央のダイヤモンドとエメラルドの球体は無傷だった。このため、美術館関係者は、形を整えれば完全な修復が可能だと見通しを語った。
この王冠は1855年、ナポレオン3世が「万国博覧会」に合わせ、自身の王冠とともに制作を命じたものだ。皇帝の公式宝石商アレクサンドル・ガブリエル・ルモニエが中心となり、彫刻家フランソワ・ジルベールと協力して鷲の形をしたアーチ部分を作り、宝石商ピエール・マウーと共同で完成させた。ウジェニー皇后が実際に戴冠することはなかったが、この王冠は現存するフランス統治者の王冠3点のうちの1つとされる。1988年にルーブル美術館のコレクションに加わった。
美術館は現在、フランスの遺産法、博物館法、公共調達法に則って、認定された修復専門家を任命するための公募を開始した。修復担当者が決定した後は、ルーブル美術館館長ローランス・デ・カールが委員長を務める諮問委員会によって作業が監督される。
なお、窃盗事件に関与した容疑者の一部は逮捕されている。しかし、盗まれた宝飾品の大半は依然として回収されていない。事件はカルチャー面にも影響しており、1月にパリで開催されたスキャパレリのクチュール・ショーでは、盗まれた宝飾品をモチーフにしたジュエリーが発表された。(翻訳:編集部)
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1. ハンムラビ法典(紀元前1792-1750年頃)|Photo: Wikipedia Commons/Mbzt
2. コルサバードの有翼人面牡牛像(紀元前713-705年頃)|Photo: Copyright ©Musée du Louvre, RMN / Thierry Ollivier
3. 射手の壁面装飾(紀元前522-486年頃)|Photo: Copyright ©2015 Musée du Louvre / Thierry Ollivier
4. エビフ・イルの像(紀元前2500–2340年頃)|Photo: Copyright ©2011 Musée du Louvre / Raphael Chipault
5. カロママの像、アメンの神聖なアドラトリス(紀元前865-809年頃)|Photo: Copyright ©Musée du Louvre / Christian Décamps
6. タニスの大スフィンクス(紀元前2620-2500年頃)|Photo : Copyright ©Musée du Louvre, RMN / Christian Décamps
7. 書記座像(紀元前2620-2500年頃)|Photo: Copyright ©2015 Musée du Louvre / Christian Décamps
8. サモトラケのニケ(紀元前200-190年頃)|Photo: Copyright ©2014 Musée du Louvre / Philippe Fuzeau
9. ミロのヴィーナス(紀元前150-125年頃)|Photo: Copyright ©Musée du Louvre, RMN / Anne Chauvet
10. 夫婦の棺(紀元前520–510年頃)|Photo: Wikimedia Commons / Jérémy-Günther-Heinz Jähnick
11. ガビイのディアナ(紀元前4世紀)|Photo: Wikipedia Commons/Marie-Lan Nguyen
12. アル・ムギーラの小箱(968年)|Photo: Wikimedia Commons/Marie-Lan Nguyen
13. モンソンのライオン(975-1100年頃)|Photo: Wikimedia Commons/G. Garitan
14. レオナルド・ダ・ヴィンチ《モナリザ》(1503-1519)|Photo: Wikimedia Commons/C2RMF
15. ヨハネス・フェルメール《レースを編む女》(1669-1670)|Photo: Wikimedia Commons
16. ジャック=ルイ・ダヴィッド《皇帝ナポレオン1世と皇后ジョゼフィーヌの戴冠式》(1806-1807)|Photo: Wikimedia Commons
17. ウジェーヌ・ドラクロワ《民衆を導く自由の女神》(1830)| Photo: Wikimedia Commons
18. ミケランジェロ《抵抗する奴隷》《瀕死の奴隷》(1513-1515) |Photo: Wikimedia Commons/Shonagon
19. グレゴール・エアハルト《マグダラのマリア》(1515-1520年頃)| Photo: Wikimedia Commons/Leyo
20. ギヨーム・クストー(1739-1745)|Photo: Wikimedia Commons/Jastrow
21. アントニオ・カノーヴァ《プシュケとクピド》(1787-1793) |Photo: Wikimedia Commons/Jean-Pol Grandemont
22. フランス王冠の宝石P(1710-1774)|Photo: Wikimedia Commons/Cristian Bortes
23. マリー・アントワネットのシリンダーデスク(1784) |Photo: Wikimedia Commons/Tangopaso
24. ナポレオン3世の居室|Photo: Wikimedia Commons/Daniel Perez Sutil
25. アケテテプの墓(紀元前2445–2385年頃) |Photo: ©2003 Musée du Louvre, Dist. GrandPalaisRmn/ Christian Décamps
26. エジプトのミイラ(紀元前305-30年頃)|Photo: Wikimedia Commons/ Shonagon
27. 聖ルイ王の洗礼盤(1325–1340)|Photo: ©2009 Musée du Louvre, Dist. GrandPalaisRmn/ Hughes Dubois
28. 詩作競争のタイル画(1600–1700年頃)|Photo: ©2012 Musée du Louvre, Dist. GrandPalaisRmn/Raphaël Chipault
29. ロッソ・フィオレンティーノ《ピエタ》(1530–1540)|Photo: ©1998 GrandPalaisRmn (Musée du Louvre)/René-Gabriel Ojéda
30. ジャンヌ・デヴルーの聖母子像(1324–1339)|Photo: Wikimedia Commons/Shonagon