ルーブル窃盗事件で破損したウジェニー皇后の王冠は「完全修復可能」──修復担当者の公募がスタート

昨年10月、パリのルーブル美術館で発生した窃盗事件で破損したウジェニー皇后の王冠。修復担当者によると、深刻な損傷を受けながらも完全修復は可能だという。

破損する前のウジェニー皇后の王冠。Photo: VCG via Getty Images
破損する前のウジェニー皇后の王冠。Photo: VCG via Getty Images

昨年10月19日、ルーブル美術館に侵入した窃盗犯らは、推定1億200万ドル(現在の為替で約160億円)相当の宝飾品を盗み出した。だが、逃走の最中に犯人たちは、ウジェニー皇后の王冠を落としてしまう。ダイヤモンドとエメラルドが散りばめられた王冠は落下の衝撃で破損してしまい、「ガレリー・アポロン」で再び公開される前に修復が行われる予定となっている。捜査当局は当初、証拠品として王冠を押収し、翌日には美術館の装飾芸術部門に移送した。その直後、同部門のディレクター、オリヴィエ・ガベと副ディレクターのアンヌ・ディオンが状態を確認したところ、損傷は深刻だった。

王冠は軽量で柔軟な構造だったため、衝撃を受け大きく変形していた。捜査当局によれば、犯人らは電動カッターで保護ガラスを切断したものの、開口部が狭く無理やり取り出した可能性があるという。実際、アーチ型の金属部分の1つは展示室内で折れ、押しつぶされていた。ダイヤモンドとエメラルドで作られた8つのパルメット装飾のうち4つが外れ、交互に配置された金のワシの1つが紛失していた。

とはいえ、王冠を彩る宝石の多くは無事だった。修復担当者によれば、65個のエメラルドはすべて無傷で、1354個のダイヤモンドも紛失していたのは土台に沿って配置された小さな石10個にとどまったという。また中央のダイヤモンドとエメラルドの球体は無傷だった。このため、美術館関係者は、形を整えれば完全な修復が可能だと見通しを語った。

この王冠は1855年、ナポレオン3世が「万国博覧会」に合わせ、自身の王冠とともに制作を命じたものだ。皇帝の公式宝石商アレクサンドル・ガブリエル・ルモニエが中心となり、彫刻家フランソワ・ジルベールと協力して鷲の形をしたアーチ部分を作り、宝石商ピエール・マウーと共同で完成させた。ウジェニー皇后が実際に戴冠することはなかったが、この王冠は現存するフランス統治者の王冠3点のうちの1つとされる。1988年にルーブル美術館のコレクションに加わった。

美術館は現在、フランスの遺産法、博物館法、公共調達法に則って、認定された修復専門家を任命するための公募を開始した。修復担当者が決定した後は、ルーブル美術館館長ローランス・デ・カールが委員長を務める諮問委員会によって作業が監督される。

なお、窃盗事件に関与した容疑者の一部は逮捕されている。しかし、盗まれた宝飾品の大半は依然として回収されていない。事件はカルチャー面にも影響しており、1月にパリで開催されたスキャパレリのクチュール・ショーでは、盗まれた宝飾品をモチーフにしたジュエリーが発表された。(翻訳:編集部)

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