「偏執狂的批評バレエ」のための舞台装置が競売へ。約19メートル×30メートル、ダリ最大の絵画
サルバドール・ダリ(1904-1989)による最大の絵画作品とされる舞台装置《バッカナール》(1939)が、3月26日にパリで競売にかけられる。予想落札価格は23万6000〜35万ドル(約3700万〜5500万円)。

サルバドール・ダリによる最大の絵画作品とされる舞台装置《バッカナール》(1939)が、3月26日にパリのボナムズで開催される「第4回シュルレアリスム・オークション」に出品される。
これまで個人コレクションに収められていた《バッカナール》は、1939年11月9日にニューヨークのメトロポリタン歌劇場で初演された、モンテカルロ・バレエ・リュスによるシュルレアリスム・バレエ『バッカナール』の舞台装置として制作された。同作には、バレエ・リュスの振付師兼監督レオニード・マシーンが関わり、衣装とアクセサリーをココ・シャネルが担当。さらに舞台美術には、バレエ・リュスの舞台装置を手がけたアレクサンドル・シェルヴァチゼ公爵が参加するなど、豪華な顔ぶれがそろっていた。
ダリが制作した舞台装置は約19メートル×30メートル、13枚のパネルによって構成されている。写真のように精密に描かれた構図の中央には、中世ドイツの騎士タンホイザーが快楽の生活を送ったとされる、愛の女神ヴィーナスが住む楽園ヴィーナスベルクに由来する「ヴィーナスの山」が描かれている。その背後には、ダリのスペインの故郷近くに広がる岩だらけの荒地、アンプルダン平原が続き、さらに遠くにはラファエロの1504年の絵画《聖母の結婚》に描かれた神殿がそびえ立つ。
この舞台装置には当初、巨大な木製の白鳥も含まれていた。この白鳥は胸の部分が裂ける構造になっており、その内部からダンサーたちが舞台へ登場する仕掛けだったが、1968年に破壊されてしまった。ダリは舞台装置の制作に加えて、この作品の台本も執筆し、衣装の一部のデザインも手がけている。
ダリは政治的発言をめぐってシュルレアリスム運動の創始者アンドレ・ブルトンを苛立たせ、最終的には運動から事実上追放されることになった。しかし1938年の《ロブスター電話》のようなフェティシズム的なオブジェや超写実的な絵画によって、一般的にはシュルレアリスムと最も強く結びつけられる芸術家として知られている。ダリは《バッカナール》を、自身にとって初めての「偏執狂的批評バレエ」と呼んだ。これは、自ら意図的に偏執的な妄想状態を作り出し、そこからイメージを生み出す「偏執狂的批評的方法(パラノイアック・クリティカル・メソッド)」というダリ独自の創作手法を指す言葉だ。
《バッカナール》の公演初日には、第2次世界大戦の影響によってダリはパリで足止めされ、シャネルが制作した衣装の一部もニューヨークへ届けることができなかった。それにもかかわらず公演は好評を博し、その後アメリカ各地に巡回した。
《バッカナール》の予想落札価格は23万6000〜35万ドル(約3700万〜5500万円)。今回の「第4回シュルレアリスム・オークション」には、そのほかにも、レオノール・フィニ、ヴァランティン・ユゴー、ジェーン・グラヴェロール、アンドレ・マッソン、マン・レイ、フランシス・ピカビアといったヨーロッパのシュルレアリスムの巨匠たちによる絵画や紙作品が出品される。
中でも注目は、グラヴェロールによる1945年頃の絵画《Tête en l’air(空を見上げる頭)》で予想落札価格3万~4万5000ドル(約470万円~710万円)、ピカビアの妻オルガ旧蔵の油彩《La Polonaise(ポーランド舞曲)》(1940)予想落札価格23万~35万ドル(約3600万円~5500万円)を含む、ピカビアの絵画および紙作品11点だ。(翻訳:編集部)
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