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若きセザンヌ本人か? 静物画の下に描かれた肖像画を発見

オハイオ州シンシナティ美術館の保存修復師が、ポール・セザンヌが26歳頃に描いた同館所蔵の静物画の下に、セザンヌの自画像と思われるものを発見した。

《パンと卵の静物》(1865) Courtesy Cincinnati Art Museum

同美術館のリリースによると、セザンヌの《パンと卵の静物》(1865)を修復する必要があるかどうか調査していた保存修復師のセレナ・アリーが絵に小さな亀裂を見つけ、その下に、明らかに静物画の一部ではない真っ白な絵の具が光っていることを発見したという。

アリーがその絵をX線で撮影してみたところ、静物画の下に「はっきりとした肖像画」が隠れていることが判明した。

2022年5月24日に撮影された、《パンと卵の静物》のX線画像。

CNNの取材に対し、アリーはこう語る。

「そこには、身体ををねじらせてこちらを見ている人物が描かれています。このポーズから、自画像であるというのが一般的な見解です。もし、セザンヌ本人ではなく他のモデルの肖像画であれば、全身が描かれているはずですから」

《パンと卵の静物》が描かれた当時、セザンヌはまだギュスターヴ・クールベなどのリアリズムやスペインのバロック絵画に魅了されていた。しかし数年後、1874年に開催された第1回印象派展への出品を契機に、モダンアートへの道を切り開く独自のスタイルを確立していくことになる。

シンシナティ美術館のヨーロッパ絵画・彫刻・素描のキュレーターであるピーター・ジョナサン・ベル博士は、「今後数カ月から数年の間に、調査に適した機関やセザンヌ研究の権威と協力しながら、絵画の画像解析や肖像画の主題に関する研究を続けていきたいと考えています」と述べている。

同館によると、《パンと卵のある静物》は、1955年に慈善家でコレクターのメアリー・E・ジョンソンから寄贈されたもので、所蔵する2点のセザンヌのうちの1点だという。「これまで2点あったセザンヌが、今回の発見で3点になりました」とアリーは冗談めかしてコメントしている。(翻訳:編集部)

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