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ゴッホとモディリアーニ作品の中から作品を新発見。しのばれる画材節約の日々

  • 2022年7月21日
  • INTERNATIONAL

Text: Francesca Aton、Angelica Villa

ヨハネス・フェルメールの《窓辺で手紙を読む女》の壁面に描かれたキューピッドの画中画がX線の調査で見つかり、修復の上、東京都美術館「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展」(2月10日~4月3日、大阪、宮城にも巡回)で披露されたことは記憶に新しい。美術品の調査技術が進み、「作品の中に隠された作品」が続々と発見されている。このたび見つかった、巨匠画家の2例をご紹介しよう。

フィンセント・ファン・ゴッホ《農婦の頭部》(1885) Antonia Reeve/National Galleries of Scotland

ゴッホの初期作品の裏面に自画像

フィンセント・ファン・ゴッホが女性を描いた絵画のX線調査で、これまで知られていない自画像が隠されていることが分かったとBBCが報じた。スコットランド国立美術館の専門家が、近日開催される展覧会に先立って作品をスキャンした際に見つかったものだ。

ゴッホの隠された絵が見つかったのは、初期の作品《農婦の頭部》(1885)だ。保存修復士が、裏面の糊と厚紙の層の下に、つばのある帽子をかぶりネッカチーフを巻いたひげ面の男性の横顔があることを発見。顔の左側しか見えないが、見る者を突き刺さすような鋭い眼光を放っている。

保存修復士のレスリー・スティーブンソンは、BBCに「衝撃的」だったと語っている。「今までに分かっているゴッホの生涯に、新たな知見を加える非常に重要な発見だ」

オランダの画家ゴッホは、1890年に37歳で亡くなった。作品が高い評価を得るようになったのは死後のことで、生前のゴッホが金銭的に報われることはなく、しばしばカンバスを再利用したり、両面を使ったりして費用を節約していた。同じ時期に制作された絵画の裏面に別の作品が発見されたのは、今回が初めてではない。

《農婦の頭部》は、1883年12月から1885年11月まで住んでいたオランダ南部のヌエネンの女性を描いたもの。一方、裏面の自画像は、86年にパリに移ってから描かれたと考えられている。

この作品は、ゴッホの死から約15年後にアムステルダム市立美術館の展覧会に貸し出された。その際にカンバスに厚紙で裏打ちをし、額装したものと専門家は考えている。現在、保存修復士たちは、作品を傷めずに接着剤や厚紙を取り除くことが可能かどうか、さらに調査を重ねているという。

その後は多くの人物の手に渡ったが、スコットランドにやってきたのは1951年、アレキサンダー・メイトランドとロザリンド・メイトランド夫妻にコレクションされた時のことだ。さらに所有者がエジンバラの著名な弁護士に変わり、60年に同弁護士がスコットランド国立美術館に寄贈している。


発見された自画像のX線画像 Graeme Yule/National Galleries of Scotland

スコットランド国立美術館のフランス美術部門シニアキュレーター、フランシス・ファウルはBBCに対し、「こんな瞬間はめったにないこと。世界で最も重要で人気のある芸術家の1人、フィンセント・ファン・ゴッホの未知の作品を発見したのですから」と述べている。

なお、スコットランド国立美術館で2022年7月30日まで開催中の展覧会「A Taste for Impressionism: Modern French Art from Millet to Matisse(印象派の味わい:ミレーからマティスまでのフランス近代美術)」では、見学者がライトボックスでゴッホの絵のX線画像を見ることができる。


モディリアーニの両面描きの絵の中から、さらに3点のスケッチ

X線調査で最近発見された絵は他にもある。ゴッホの自画像発見のニュースが報じられる少し前、アメデオ・モディリアーニの《Nu au chapeau(帽子をかぶった裸婦)》(1908)の下に、3点のスケッチがあることが分かったのだ。こちらは、2022年10月に米国のバーンズ・コレクション(フィラデルフィア)で開催される展覧会を前に作品を調査していたところ見つかった。


アメデオ・モディリアーニ《Nu au chapeau(帽子をかぶった裸婦)》(1908) 逆さにつるされているのは、裏面にある別の絵が上向きに描かれているため Ariel Schalit/AP

未完成のスケッチを発見したのは、イスラエルのハイファ大学ヘクト博物館。同博物館が1983年から収蔵しているモディリアーニの裸婦像について、制作過程を明らかにするためにX線を用いた科学的調査を行っている最中だった。なお、モディリアーニの知られざるスケッチがX線調査によって明らかになった例は過去にもあり、2018年にはロンドンのテート・ギャラリーで、ある絵の下から別の肖像画が発見されている。

イタリア出身のモディリアーニは、パリのモンマルトルに集った自由な思想のボヘミアン芸術家仲間とともに活躍し、1920年に35歳で死去。アフリカやギリシャの美術の様式を織り交ぜた、手足や顔立ちが細長い裸婦像で有名になった。

《Nu au chapeau》で特徴的なのは、カンバスの両面で2人の女性が上下逆向きになっていることだ。片面にはモディリアーニのモデルの1人、モード・アブランテスが、もう片面には別の女性の裸婦像が逆さまに描かれている。

実は、10年以上前にヘクト博物館のキュレーターが、アブランテスの服の下に一対の目が描かれているように見えることに着目していた。今回の調査では、目が描かれたデッサンと、その上に重ねて描かれたと思われる他の2つのデッサンが見つかっている。

ゴッホもそうだが、経済的に苦しい中で画材を節約しようとした画家たちの間では、以前に制作したスケッチの上に重ねて絵を描くのはめずらしいことではなかった。なお、ヘクト博物館は、デッサンの具体的な内容については明らかにしていない。(翻訳:清水玲奈)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年7月13日と14日に掲載された記事をまとめたものです。それぞれの元記事はこちら(7月13日7月14日)。

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