米メディア界の大物サイ・ニューハウス旧蔵コレクションが競売へ。ポロックなど総額700億円

『VOGUE』などを擁するコンデナストを率いたアメリカ・メディア界の重鎮、故サイ・ニューハウス(1927-2017)のコレクションが、クリスティーズ・ニューヨークでのオークションに出品される。予想落札総額は約4億5000万ドル(約702億円)にのぼる見込み。

S.I.ニューハウス。2006年9月撮影。Photo: Evan Agostini

アメリカのメディア王で、出版社コンデナストの会長を長く務めたサイ・ニューハウスのコレクションからおよそ40点が、5月にクリスティーズ・ニューヨークで開催されるオークションに出品されるとアートネットが報じた。

1927年生まれのサイ・ニューハウスことサミュエル・アーヴィング・ニューハウス・ジュニア(Samuel Irving Newhouse Jr.)は、父が築いた巨大メディア企業アドバンス・パブリケーションズを兄ドナルドと共に継承した。1975年には、『VOGUE』『Vanity Fair』『GQ』などを刊行するアドバンス・パブリケーションズ傘下のコンデナスト・パブリケーションズの会長に就任。『Vanity Fair』の復刊や『GQ』『Self』『W』などの拡大を通して、同社を「世界で最も影響力のある雑誌出版グループ」へと育て上げた。

トップ200コレクターズの常連

一方で、ニューハウスと妻ヴィクトリアは、US版ARTnewsのトップ200コレクターズに名を連ね続けたコレクターとしても知られ、自身のコレクションのために最大7億ドル(現在の為替で約1100億円)を費やしたとも言われている。ニューヨーク・タイムズによると、このコレクションにはアンディ・ウォーホルによるマリリン・モンローの肖像画《Shot Orange Marilyn》(1964)や、ルシアン・フロイドの自画像《Painter Working, Reflection》(1993)などが含まれていた。

2017年にサイ・ニューハウスが死去した後、遺族はそれらのコレクションの管理を、かつてサザビーズの主任オークショニアを務めたアートアドバイザーのトビアス・マイヤーに委ねた。ニューハウス家はマイヤーの助言のもと、コレクションの売却を進めている。

アートネットによれば、ニューハウスの死去後まもなく、《Shot Orange Marilyn》はクリスティーズを通じたプライベートセールで売却され、金融家ケン・グリフィンが約2億ドル(現在の為替で約314億円)で購入したという。この金額は、2023年5月にクリスティーズ・ニューヨークで開催されたニューハウス旧蔵コレクションのオークションで記録された全売り上げ約1億7800万ドル(同・約280億円)を上回る。このセールでは、フランシス・ベーコンウィレム・デ・クーニングパブロ・ピカソなどの作品を含む16点が出品され、全て落札された。

また、2019年5月にクリスティーズ・ニューヨークで行われたオークションでは、ニューハウスコレクションからジェフ・クーンズの彫刻《Rabbit》(1986)が出品され、9110万ドル(同・約142億円)で落札されている。この価格はクーンズ作品のオークション記録を更新するとともに、当時、存命アーティストの作品としても最高額となった。

目玉はポロック《Number 7》

アートネットは、今回のオークションはジャスパー・ジョーンズやパブロ・ピカソといった巨匠の作品による最大40点ほどで、評価額の総額は約4億5000万ドル(約702億円)と報じている。

中でも目玉は、ジャクソン・ポロックのドリッピング絵画《Number 7》(1948)で、予想落札価格は約1億ドル(約156億円)。これは彼の現在の記録である6120万ドル(現在の為替で約97億円)を大きく上回る額だ。また、ブランクーシの褐色のパティナと金箔を施したブロンズの頭部像《Danaïde》(1913)も出品予定で、こちらの予想落札価格は1億ドル(約156億円)とされている。現在のブランクーシの最高落札額は7120万ドル(現在の為替で約111億円)だ。クリスティーズはアートネットの報道を正式に認めてはいないが、伝えられた通りであれば、近年稀にみる規模の取引となる。

近年の低迷からの回復に苦しんでいる美術市場であるが、昨年11月には、とりわけサザビーズのオークションに「トロフィー作品」と呼ばれる最高級の作品が多数出品・落札されたことで、市場にとって大きな追い風となった。クリスティーズは、ニューハウスのコレクションに含まれる名品が同様の効果をもたらすことを期待しているに違いない。(翻訳:編集部)

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