デイヴィッド・ホックニー最大級の版画がオークションへ。全長12メートルの意欲作

デイヴィッド・ホックニーの巨大版画作品が、ロンドンクリスティーズで3月後半に行われるオークションの目玉として出品される。全長12メートルにわたるこの版画の予想落札価格は、20万から30万ポンド(最近の為替レートで約4200万〜6300万円、以下同)。

デイヴィッド・ホックニーによる最大級の版画作品《Autour de la maison, été》。Photo: Christie's

3月17日から31日にクリスティーズロンドンで開催されるオンラインオークション「コンテンポラリー・エディション」に、デイヴィッド・ホックニーの巨大版画《Autour de la maison, été(家の周囲、夏)》(2019)の出品が予定され、注目を集めている。

1枚の紙にプリントされた全長12メートルのこの作品は、ホックニーが制作した版画の中で最大級のサイズであるだけでなく、版画家・ホックニーとしての最も意欲的な作品の1つだ。描かれているのはノルマンディーにある自宅と庭で、中世風の納屋、ブランコ、ツリーハウス、車などが、木々や草、生け垣の緑に囲まれる真夏の風景が繰り広げられている。

クリスティーズの現代版画部門責任者であるジェームズ・バスカヴィルは、この作品のスケールは版画の鑑賞体験を一変させるものだとして、US版ARTnewsにこう語った。

「《Autour de la maison, été》でホックニーは、版画の可能性を映画のようなスケールにまで広げています。鑑賞者はこの作品に誘われ、ホックニーのノルマンディーの庭を巡ります。それはまるで、古代建築の上部に施された連続する絵画的レリーフを読み取っていくような体験です」

バスカヴィルはまた、中世ヨーロッパを代表する全長70メートルの歴史絵巻《バイユーのタペストリー》が、この版画の構成に影響を与えていると指摘。この観点は、後にホックニーが《A Year in Normandie(ノルマンディーの12カ月)》(2020-2021)を制作したことを考えると、的を射たものと言えるだろう。同作品は、紙にプリントされた巨大なiPadドローイングで、全長約90メートルにわたって連続した視覚的な物語が展開されている。

《Autour de la maison, été》のオークションは、ロンドンのサーペンタイン・ギャラリーで行われるホックニー新作展の開幕時期と重なる。また、今秋には大英博物館で、上述の《バイユーのタペストリー》の展覧会が開催される予定だ。しかしホックニーは先日、大英博物館でのタペストリー展示について「狂気の沙汰だ」と批判。繊細な中世の刺繍が、輸送中に修復不可能な損傷を受ける可能性があるとの懸念を表明している。

3月17日から31日までオンラインで開催される「コンテンポラリー・エディション」セールには、《Autour de la maison, été》のほか、20世紀後半以降の版画や新進気鋭のアーティストによるエディション作品が集められた。また、同時期の3月12日~26日に予定されている版画とマルチプル作品のセールは、19世紀〜20世紀の主要なアーティストの作品に焦点を当てている。なお、両オークションの出品作品は、先週末からクリスティーズ・ロンドンで公開中だ。

ホックニーの版画作品に対する需要の高さが示すように、クリスティーズでは版画市場の好調さが続いている。同社は、2025年にグローバルでの版画部門売上高が7030万ドル(約111億円)に達したと報告。そのうちEMEA(欧州、中東、アフリカ)部門は、古美術と近現代の版画の合計で3100万ドル(約49億円)を記録した。

最近の注目すべきセール結果として挙げられるのは、2025年12月3日に行われた故サム・ヨセフォヴィッツ旧蔵品のセールで落札されたレンブラントの《Arnout Tholinx, Inspector(アルナウト・トリンクス、監察官)》(1656頃)だ。落札額は420万ドル(約6億6000万円)に上り、オールドマスターの版画の史上最高額となった。さらに、同日に行われた別のセールでは、ウィリアム・ブレイクの版画もオークションにおける同作家の新記録を樹立している。(翻訳:石井佳子)

from ARTnews

あわせて読みたい