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アマチュア考古学研究者が大発見! ラスコー洞窟の壁画から「原始の文字」

氷河期のヨーロッパを生きた狩猟採集民による洞窟壁画は、単なる芸術的表現ではなかった。2万年前に描かれた記号は、動物のライフサイクルに関する情報を記録する原始的な文字だったことが、新しい研究によって明らかになっている。

新たな研究結果によれば、フランス南西部のラスコー洞窟にある旧石器時代の壁画に描かれた点や線などの記号は、動物の繁殖周期を記録するのに使われていたようだ。Photo: Pictures From History/Universal Images Group via Getty Images

氷河期のヨーロッパで描かれた洞窟壁画の画像600枚以上から「原始の文字記録」を発見したのは、アマチュア考古学研究者のベン・ベーコン。本業は家具の修復職人である彼は、トナカイ、野生馬、魚、現在は絶滅している種類の牛といった動物の絵に付随する点や線などの記号の解読を試み、専門家・研究者チームとの共同作業を行った。

ベーコンが自らの仮説についてアドバイスを求めた専門家の1人で、のちに共同研究者になったユニバーシティ・カレッジ・ロンドン名誉教授のTony FreethはBBCの取材にこう語っている。「動物の上に描かれた点や線などの記号の数が、その動物のライフサイクルにおける重要な出来事のあった太陰月を表しているという彼の考えを聞いて驚きました」

研究チームは、現代の動物の繁殖周期と符号の数を対比し、それらが太陰暦での生殖サイクルを記録していたという結論に達した。これは、他の記録手法より少なくとも1万年以上も古いものだ。ベーコンと専門家チームメンバーによる研究論文は、1月5日にケンブリッジ大学出版局の学術誌 Archaeological Journalに発表された。

ベーコンは、大英図書館やネット上で公開されている洞窟壁画の画像などからデータを収集し、どんなパターンが繰り返されているかを調べたという。彼はBBCの取材にこう答えている。

「絵の中の記号に意味があるのか、ずっと興味があり、古代ギリシャ語の解読と同じようなアプローチで記号を読み解こうとしたのです。大英図書館で2万年前の人々が何を記録していたかを少しずつ解明していくのは非現実的にも思えましたが、長い時間をかけて苦労した甲斐がありました」(翻訳:石井佳子)

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