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倉庫に60年も眠っていた作品が巨匠の絵画と判明! 学芸員は発見に大興奮

18世紀イギリスの重要な画家、トマス・ゲインズバラ(1727-1788)の作品に似ていると言われながら60年以上美術館の奥底に眠っていた絵画が、この度ゲインズバラ作品であることが判明した。

トマス・ゲインズバラ作品と判明した、イギリスのグリニッジ王立美術館所蔵の肖像画。Photo: ROYAL MUSEUMS GREENWICH-NATIONAL MARITIME MUSEUM

1960年にコレクターのエドワード・ピーター・ジョーンズからイギリスのグリニッジ王立美術館(RMG)に寄贈された、この無記名の肖像画はフレデリック・コーンウォール大尉を描いている。ゲインズバラ作とされていたが、当時のRMGの学芸員は、「類似はしているが、粗すぎる」と判断した。

しかし2022年、ゲインズバラ研究者のヒュー・ベルジーが、イギリスの名門ディーラー、アグニューズで、今回の肖像画が載った20世紀初頭のリストを発見。ジョーンズの所蔵まで突き止めたが、その後の行方は掴めなかった。そして知人が偶然、RMG内にある国立海事博物館の所蔵品図録でこの肖像画を見つけた。

ベルジーはRMGに連絡し、本物のゲインズバラであることを確認。同館学芸員も同意した。

RMGの現キュレーターであるキャサリン・ガザードは、この時の様子について、ガーディアン紙に次のように話した。「ベルジーからメッセージが届いて、私たちは倉庫から絵を取り出し確認しました。すると、1762年の若きゲインズバラがバースで描いていた頃の特徴をすべて備えていたのです」

また、ガザードは、この一件を教訓にして所蔵作品の帰属に細心の注意を払っていきたいとも語った。

「しかし、恥ずかしいというより、この発見に興奮しています」

1960年代のキュレーターがこの肖像画を本物のゲインズバラだと信じなかった理由について、ベルジーは「(当時)ゲインズバラは非常に速いペースで成長していたので、スタイルがめまぐるしく変わりました。多くの注文を受けながら彼のスタイルはより確かなものになり、筆致はより自由になりました」と話す。

RMGは、絵画と額縁の修復に約6万ポンド(約1100万円)かかると予想されるため、資金を集め始めた。2024年、修復されたこの絵はRMGのクイーンズ・ハウスで展示される予定だ。(翻訳:編集部)

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