ArtnetとArtsyが経営統合を発表。世界最大級のアートプラットフォーム誕生の裏で進む人員削減
4月15日、オンラインアート市場を代表するArtnetとArtsyが経営統合を正式に発表した。しかしその直後、Artnetでは数十人規模の人員削減が実施されたという。新たな経営体制の発足と同時に進められた再編は、業界に波紋を広げている。

オンラインのアートプラットフォームであるArtnetとArtsyが、単一の経営体制のもとに統合されたと4月15日に発表された。関係者によると、その翌日にはArtnetで数十人規模の人員削減が行われたという。
1989年創業のArtnetは、ニューヨーク、ロンドン、ベルリンを拠点に、ニュース配信やギャラリーとの提携による作品販売を展開してきた。加えて、世界各地の主要オークションハウスの落札結果を検索・分析できる「Price Database」を運営している。この有料サービスは、業界関係者や市場分析の専門家に広く利用されてきた。
一方、2009年創業のArtsyは、ニューヨーク、ロンドン、ベルリン、香港に拠点を持ち、世界中のギャラリーや美術機関、オークションハウスと連携した検索機能を強みとする。アルゴリズムによるレコメンド機能も備え、ユーザーは作品を効率的に発見・購入できる。また、展覧会紹介やアーティスト解説などの編集コンテンツも充実しており、メディアとしての役割も担っている。
Artnetは近年、財務面での苦境が続いていた。2025年9月には株主総会を前にCEOが突然辞任し、その数カ月前には、アンドリュー・エヴァン・ウルフが率いるイギリスの投資会社ベオウルフ・キャピタルが同社の過半数株式を取得している。ウルフは当時、「デジタルアート市場は加速的なイノベーションの機会に満ちている」と述べていた。なお、2025年5月時点でのArtnetの評価額は6500万ユーロ(約122億円)だった。
声明によると、今回の統合に伴い、ウルフが新組織の会長に就任する。ArtsyのCEOであるジェフリー・インが、統合後のArtsyおよびArtnetのCEOを務め、両社のサービスやプラットフォーム自体は引き続き独立した形で運営される。両社を合わせると、190以上の国と地域で月間700万人以上の利用者を抱え、SNSでは900万人超のフォロワーにリーチするという。
しかし関係者によれば、この発表の翌日には、Artnetの編集部門であるArtnet Newsを中心に人員削減が行われた。同媒体の中核スタッフが複数離職し、その中には10年以上在籍していたサラ・カスコーンやアイリーン・キンセラといったベテラン記者も含まれている。さらに、オンラインでの作品販売を支えるベルリン拠点のチームも大きな打撃を受けたという。その一方で、かつてUS版ARTnewsのエグゼクティブ・エディターを務めていたアンドリュー・ラッセスが、Artnet Newsの暫定編集長に就くと報じられた。
ArtnetとArtsyの広報担当者は、両社で人員削減が行われたことを認めたものの、具体的な人数や対象部門については明らかにしていない。
両社はUS版ARTnewsへの共同声明で、「ArtsyとArtnetを一体の企業として統合するにあたり、将来に向けた単一のチーム体制を構築するため、組織再編を行い、一部ポジションの廃止を含む決定を下しました。これは困難な決断であり、慎重に検討したうえでのものです」と説明した上で、「Artnetのドイツ法人は別途の事業判断として段階的に終了していく」と明かした。対象となった従業員には退職金や支援を含む契約を提示し、「敬意をもって対応し、移行を支援する」としている。
また、CEOのジェフリー・インは経営統合に関する声明で、「Artnetはアート界の透明性向上を目的に設立され、Artsyは作品の発見と購入をより身近にすることを目指してきました。両社が一体となることで、ギャラリーやオークションハウス、コレクター、美術機関など、アート界のあらゆる関係者が初めて一つの繋がったプラットフォームに集約されるという、前例のない機会が生まれたのです」と強調した。一方で、声明ではスタッフへの具体的な影響についてはほとんど触れられていない。(翻訳:編集部)
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