「黒海の真珠」ウクライナ・オデーサを世界遺産に緊急登録。ロシア侵攻から保護
「黒海の真珠」と称されるウクライナ南部の港湾都市、オデーサの歴史地区が、ユネスコの、危機にさらされている世界遺産「危機遺産」に登録された。
世界史や建築史の観点からも国際的に重要とされる港湾都市オデーサは、2022年にウクライナ侵攻が始まって以来、ロシアの爆撃の標的になっている。同年10月、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、国連の文化機関に対し、オデーサの中心部を保護下に置くよう正式に要請した。これは、オデーサが破壊される可能性が高く、国際支援が必要な状況を示すものだ。
ゼレンスキー大統領は、2023年1月25日に行われたユネスコの世界遺産委員会の特別会合で、登録が可決されたことを受けて、「ロシアによる攻撃から私たちの真珠を守ってくれるパートナーに感謝します」とツイートしている。
ユネスコのオードリー・アズレイ事務局長は声明の中で、オデーサを「世界都市、映画、文学、芸術に足跡を残した伝説の港」と表現しており、「この決定は、戦争が続いている間、激動を乗り越えてきたこの都市をさらなる破壊から守るための私たちの決意を表しています」と述べた。
長い歴史の中で、ヨーロッパとアジアの文化が交差するこの街は、オデーサ・オペラハウスや、1925年の有名なサイレント映画『戦艦ポチョムキン』にも登場する港の長い階段などが知られている。アズレイによると、オデーサの危機遺産申請書には、「文化と人種の集合地」であり、「世界中の人々の心に響く遺産と歴史があり、象徴的な存在である」と記されている。
オデーサは黒海に面しており、ウクライナの穀物輸出の重要な中継地であることから、ロシア軍の標的になっている。ウクライナはロシアの猛烈な砲撃に苦しみながらも、占領に抵抗し続けている。
2022年7月の空爆によってオデーサ近代美術館とオデーサ美術館の一部が破壊され、ユネスコは、両美術館の修繕費、作品のデジタル化、保護設備などの資金を提供した。オデーサ美術館には戦前から1万2千点以上の作品が収蔵されていたが、同年2月、美術館の職員によってコレクションのほとんどが安全な場所に輸送され、保管されているという。
ロシアは、近代オデーサの建設にロシアの女帝エカテリーナ2世が関わった歴史を併合の理由にしているが、オデーサ市民は抵抗しており、2022年12月、市民の手でエカテリーナ2世の記念碑が中央広場から撤去された。(翻訳:編集部)
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