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ベラ・ハディッドがアートから発信するパレスチナへの愛【アートを愛するセレブたち Vol. 3】

パレスチナ難民としてアメリカに渡った父の影響から、同国擁護の立場を表明しているスーパーモデルのベラ・ハディッド。そんな彼女は、自身のインスタグラムから、知られざるパレスチナのアートの素晴らしさを啓蒙すべく、世界に発信し続けている。

2022年9月30日、2023年春夏コレクションのコペルニのショーで、ランウェイ上でベラ・ハディッドの裸体に液状素材を吹き付けてドレスを作成し話題となった。Photo: Estrop/Getty Images

パレスチナのアートと愛をSNSで発信

「ドーハで開催中のパレスチナの刺繍の展覧会『Labour of Love』を見学しました。すべての作品がとても感動的で、思わず涙ぐんでしまいました。今は、そこに生きる人々への敬愛でいっぱいです。私の心は、常にあなた方とともにあります。私のルーツ・パレスチナ、愛しています!」

2022年10月25日、父のモハメッド・ハディッドと写っている写真とともに、インスタグラムにこう投稿したベラ・ハディッド。モハメッドの家族は、1948年に発生したナクバ(*1)の際、パレスチナのナザレからアメリカに逃れてきた元難民だ。そのため、ベラはかねてより中近東──特にパレスチナに特別な思いを寄せ、彼の地のアーティストの発掘に尽力している。そんな父から「ナザレのプリンセス」と呼ばれている彼女が、2022年1月に投稿した肖像画が世界中で大きな注目を集めた。


*1 イスラエル建国時にパレスチナ人が強制的に故郷を追われた惨事

パレスチナ人アーティストのジャマル・バドワンが製作したこの肖像画は、伝統的なパレスチナの衣装「トーブ」に身を包んだ彼女が、戦争による弾痕や破壊された家を背景に佇む彼女の姿を捉えたもの。報道等で彼女がパレスチナ擁護の立場を表明していることを知ったバドワンが、その「パレスチナ愛」を賞賛して描いたものだという。7年前、ヨルダン川西岸・ベツレヘムのキリスト降誕教会付近に飾られた世界最大の絵画でギネスブックに認定されたこともあるバドワンは、母国パレスチナの苦悩を独特のタッチで表現することで知られる画家でもある。

また2022年10月9日には、ニューヨークのレストランでボーイフレンドと26歳の誕生日を祝っていたところ、レバノン出身アーティストのサイード・エラタブが彼女のテーブルに近づき、あるプレゼントを手渡したことが大きな話題となった。エラタブが手渡したのは、彼女の父モハメッド・ハディッドの肖像画。祖国であるパレスチナの美しい建築物を背景に、トレードマークである黒縁のメガネと、仕立ての良いスーツを着用したモハメッドを描写しており、それを見たベラは感涙にむせんだという。

ちなみにエラタブは、自身を「芸術の悲劇」と呼び、2021年に自身の作品に満足がいかないとして絵画を燃やすなどのパフォーマンスをし、一躍全米の注目を集めた画家だ。ベラがインスタグラムでこの肖像画を紹介して以降、ますます知名度が上がったという。

苦難があろうとも、中東の女性たちを支え続けたい

「私たちの姉妹である女性たちは、自由という基本的人権を主張したにも関わらず殺されています。すべての女性には、行動や選択の自由があってしかるべきです。私たち女性が自分たちの身体をどう扱おうが、それは私たちの自由。現在も、無防備な女性たちが警察や暴力と対峙しています。こんなこと、許されてはいけません。今すぐ家父長制度を廃止すべきです」

先述のパレスチナ刺繍展と同時期に開催されていたイスラム芸術博物館の「バグダッド:アイズ・ディライト」見学のため、滞在していたドーハからこうメッセージを発信したベラは、社会的弱者のために声を上げる活動家としても知られている。彼女がドーハに滞在するひと月前、隣国イランでヒジャブを適切に着用しなかったことに端を発した、22歳のマフサ・アミニ殺害事件が発生。彼女の滞在中、中東各国でこれに憤ったイスラム女性たちによる抗議行動が活発化した最中だった。これを受け、ベラはヒジャブを思わせるヘッドドレスに髪を包み、ボディラインを露わにしたオールブラックの装いで会場に登場。大きな注目を集める一方、自身の活動への思いをこう語った

「中近東の女性擁護のために声を上げる私とはもう仕事はできない、とクライアントから何度も言われました。そして、パレスチナへの愛を公然と口にする私とは付き合っていられない、と絶交した友人も沢山います。私自身、正しいと思っていても、それをはっきりと口に出したり、態度で表明することに不安を感じることはあります。ですが、私は自分の信念を貫くために必要な個人的な経験や知識はすべて持っています。それに私は、自分の家族のことを熟知しているし、自分自身の歴史についてもきちんと理解しています。活動するには、それだけで十分でしょう?」

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