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今週末に見たいアートイベントTOP5: ヴェネチア・ビエンナーレの展示作を再構成「ダムタイプ」展、19年ぶり奈良原一高のファッション写真に焦点 「Fashion」ほか

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

「インターフェアレンス」展 フランシス真悟、スザンナ・フリッチャー、ブルーノ・ボテラ、宮永愛子(銀座メゾンエルメス フォーラム)よりFrémissements / Flickering 2020 | Silicone threads, 16 acrylic tubes, 20 rotary air diffusers | Sound installation Centre Pompidou-Metz, France (Curator: Emma Lavigne) Photo: Susanna Fritscher

1. 三島喜美代 | 個展(艸居)

三島喜美代《Copy 16-1 〜Copy 16-15(合計15点)》(2016)印刷したセラミックに⼿彩⾊、インスタレーションサイズ17平方メートル

90歳の現在も鳴らし続ける、社会への警鐘

1932年に生まれ、地元大阪と陶磁器の産地・岐阜県土岐市で制作を行う三島喜美代。大量消費や情報化社会に恐怖心を抱き、60年代後半から70年代前半にかけて、ゴミをモチーフにしたセラミック作品などを通じて警鐘を鳴らしてきた。落とすと粉々に砕けてしまうセラミックを用いることで、社会への危惧感をリアルに表現する。

本展は、広告チラシをセラミックに転写して手彩色を加えた赤色の「ビラ」15点からなるインスタレーションを中心に展開。60年代のペインティングの初期作から、前衛美術界に存在を示すことになったコラージュ作品、金属や木片といった廃材を組み合わせた彫刻、最新のセラミック作品までを展示する。ニューヨーク滞在中に、アンディ・ウォーホルロイ・リキテンスタインらと交流しつつも、自身の作品を「ポップアートではない」と語る三島。独自の表現を探し続けてきた軌跡をたどる。

三島喜美代 | 個展
会期:2月2日(木)~4月26日(水)
会場:艸居(京都府京都市東山区元381-2)
時間:10:00 ~ 18:00


2. 奈良原一高 「Fashion」(amanaTIGP)

奈良原一高《海を渡る馬》(1961)ゼラチン・シルバー・プリント、24.9 x 19.9 cm © Narahara Ikko Archives/Courtesy of amanaTIGP

芸術性の新風を吹き込んだ、奈良原一高のファッション写真

海外でも高い評価を獲得し、2020年に没した写真家・奈良原一高のファッション写真に注目した展覧会。1960年代に、雑誌『婦人画報』『日本カメラ』などへ発表した18点を展示する。奈良原のファッション写真のヴィンテージプリントが見られるのは19年ぶり。

1962年からの3年間に欧州で撮影した写真集『ヨーロッパ・静止した時間』などの代表作と同時期に、精力的にファッション写真の仕事にも取り組んでいた奈良原。流行を生みだすスタイルブックのイメージに留まらず、躍動感ある実験的な構図といった芸術的な表現で、新たなアプローチを提示した。長く親交のあった森英恵らがデザインした衣装、パリコレにも出演したファッションモデルの松本弘子らを被写体にした作品を紹介する。

奈良原一高 「Fashion」
会期:2月10日(金)~3月11日(土)
会場:amanaTIGP(東京都港区六本木5-17-1 AXISビル 2F)
時間:12:00 ~ 19:00 


3. ケアリング/マザーフッド:「母」から「他者」のケアを考える現代美術(水戸芸術館現代美術ギャラリー)

本間メイ《Bodies in Overlooked Pain(見過ごされた痛みにある体)》(2020)

誰もが当事者となる「ケア」を、アートから考える

誰もが相互に依存しながら生きている社会において、「ケア」について考える企画展。現代作家15組の作品を手掛かりに、結び付けられがちな「ケアリング(ケアをする行為)」と「マザーフッド(母親である期間や状態)」という言葉を解きほぐし、ケアを「ひとり」から「つながり」に展開させることを試みる。ケアの担い手としての母親像ではなく、ひとりの人間としての母親に向き合う作品を提示する。

1960年代から70年代の第2波フェミニズムに共鳴した米国のアーティスト、マーサ・ロスラーとミエレル・レーダーマン・ユケレス、「誰かの重さ」など、形の無いものの可視化を試みる二藤健人、亡き母の遺品を撮影した石内都、1人の女性の育児日記の再読を通して震災からの10年を捉えなおしたAHA!プロジェクトらが参加する。他に青木陵子、出光真子、碓井ゆい、ラグナル・キャルタンソン、マリア・ファーラ、リーゼル・ブリッシュ、ホン・ヨンイン、本間メイ、ヨアンナ・ライコフスカ、ユン・ソクナム。

ケアリング/マザーフッド:「母」から「他者」のケアを考える現代美術
会期:2月18日(土)~5月7日(日)
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー(茨城県水戸市五軒町1-6-8)
時間:10:00 ~ 18:00 (入場は30分前まで)


4. 「インターフェアレンス」展 フランシス真悟、スザンナ・フリッチャー、ブルーノ・ボテラ、宮永愛子(銀座メゾンエルメス フォーラム)

Frémissements / Flickering 2020 | Silicone threads, 16 acrylic tubes, 20 rotary air diffusers | Sound installation Centre Pompidou-Metz, France (Curator: Emma Lavigne) Photo: Susanna Fritscher

振動、意識、宇宙……4作家が誘う知覚の世界

光、振動、波動など、身体に介入するゆらぎの感覚を通じて知覚を探求する、国内外4作家のグループ展。干渉という意味をもつ展覧会名の「Interference」は、光の当たり具合で蝶の鱗粉のように色が変わる、フランシス真悟の絵画シリーズのタイトルでもある。

オーストリア出身のスザンナ・フリッチャーは、部屋の中に潜む振動や鼓動を伝達させながら、無数の白い糸で雨のように空間を満たす。フランス出身のブルーノ・ボテラは、キュレーターのカリン・シュラゲターとともに、「意識下に潜む知覚を触発する作品」を制作。日用品をかたどったナフタリンのオブジェで知られる宮永愛子は、オンラインで「日常から宇宙を感じる茶会」を開催する。鑑賞を通じて、身体の感覚や無意識と、より深く向き合うことができる。

「インターフェアレンス」展 フランシス真悟、スザンナ・フリッチャー、ブルーノ・ボテラ、宮永愛子
会期:2月23日(木・祝)~6月4日(日)
会場:銀座メゾンエルメス フォーラム(東京都中央区銀座5-4-1 8・9F)
時間:11:00 ~ 19:00 (入場は30分前まで)


5. 第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 ダムタイプ|2022: remap(アーティゾン美術館)

「ダムタイプ|2022 remap」展 キーヴィジュアル

ヴェネチア・ビエンナーレの新作を再構成、日本初公開

様々な分野のアーティストが参加し、映像や音楽、機械装置などを組み合わせたインスタレーションや舞台作品で、テクノロジーと身体の関係を問い続けるダムタイプ。第59回ヴェネチア・ビエンナーレの日本館展示で発表した新作《2022》を再構成した、《2022: remap》を日本初公開する。

今回の新作では音楽家の坂本龍一が初参加し、本作のためにサウンドトラックを制作。1850年代の地理の教科書に掲載された質問文をレーザー装置で壁に投影し、坂本の友人で歌手のカヒミ・カリィらが朗読した音声を加えて「見えるか見えないか、聴こえるか聴こえないか」という独自の世界観を演出する。過去作《Playback》で使用したターンテーブルなども再び取り入れ、重層的に表現を更新するダムタイプの創造性が垣間見える。

第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 ダムタイプ|2022: remap
会期:2月25日(土)~5月14日(日)
会場:アーティゾン美術館(東京都中央区京橋1-7-2)
時間:10:00 ~ 18:00(5月5日を除く金曜は~20:00、入場は30分前まで)

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