ニューヨーク発の没入型アート専用施設が今夏オープン! 皮切りはクリムト展
米国初のデジタルアートの常設展示施設が、この夏ニューヨークでオープン予定だ。これは、2021年に人気を博した、ゴッホの没入型エキシビションのファンには朗報だろう。
Hall des Lumières(光のホール)という名称のこの施設は、パリのAtelier des Lumières(光のアトリエ)の姉妹館。マンハッタンもパリと同じコンセプトで、アニメーション化された有名アーティストの絵画作品が、音楽とともに巨大なスケールで投影される。ちなみに、Atelier des Lumièresは、ネットフリックスのドラマ「エミリー、パリヘ行く」にも登場する。
現在、このプロジェクトを手がけるCulturespaces(カルチャースペース)は、シティ・ホール・パークの向かいにあるボザール様式の建物(旧エミグラント・インダストリアル貯蓄銀行)を改装中だ。オープニング展では、グスタフ・クリムトの絵画を組み合わせたインスタレーションが行われる。
「Gustave Klimt: Gold in Motion(グスタフ・クリムト:動き出す金色)」と題されたこのエキシビションは、クリムト作品を「五感で味わえる」ことを売り物にしている。Hall des Lumièresのウェブサイトでは、《接吻》や《アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像》、《扇を持つ女》などのクリムト作品が投影されるイメージを見ることができる。
同展では、クリムトと同じオーストリアの建築家で、ビジュアルアーティストでもあるフリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサーの作品をもとにした「デジタル体験」も提供されるという。また、会場となる旧エミグラント・インダストリアル貯蓄銀行の歴史と建築デザインに関する展示もある。同行はニューヨークで最も古い金融機関の一つだ。
コロナ禍の時代に漂う現実逃避願望にあと押しされてか、世界中の何十もの都市で没入型のデジタルアート展が開かれている。昨年の夏、ニューヨークではゴッホ作品の没入型体験ができる二つのエキシビションが同時に開催され、ともに多くの観客を集めた。また、全米30カ所でも同様に、ゴッホの没入型展示が行われている。
その後、フリーダ・カーロ、クロード・モネ、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品がデジタル化され、バルセロナからシカゴまで多くの都市で期間限定開催された。どの会場でも、作家の代表作をアニメーション化した映像のプロジェクションを中心に、作家の略歴紹介と、何らかのバーチャルリアリティ体験が提供されるのが定番だ。
常設施設となるHall des Lumièresでは、10〜12カ月ごとに新しいインスタレーションを展示する予定。初のエキシビションの日程は3月頃に発表される。(翻訳:野澤朋代)
※本記事は、2022年2月10日の米国版ARTnewsに掲載されました。元記事はこちら。