ウフィツィ美術館が91億円の大改修へ。ボッティチェリ展示室は「ルネサンス・グレー」に刷新
- TEXT BY DEVORAH LAUTER
フィレンツェのウフィツィ美術館が、総額5000万ユーロ(約91億3000万円)を投じる大規模改修計画を発表した。今後約2年をかけ、展示空間の拡張や空調設備の強化など、数十件に及ぶ事業を通じて歴史的施設を刷新する。
イタリア・フィレンツェの「ウフィツィ美術館群」は8月5日、総額5000万ユーロ(約91億3000万円)を投じる大規模改修計画の全容を発表した。
計画の対象となるのは、ウフィツィ美術館の本館に当たる彫刻・絵画館のほか、近隣のピッティ宮殿とボーボリ庭園。数十件に及ぶ事業の一部はすでに完了、または着工しており、残る工事も今後数カ月以内に始まる予定だ。工事期間中も各施設は開館を続ける。
館長のシモーネ・ヴェルデは声明で、「規模と内容の両面で前例のない取り組みが進んでいます。完了後、この美術館群はさらに美しくなり、世界におけるイタリアの象徴として、いっそう重要な存在となるでしょう」と述べている。

今回の計画には、来館者向けサービスの拡充をはじめ、展示や作品解説、館内表示の刷新、展示室の再構成、作品と建物の修復、新たな照明設備の導入、既存空間の用途変更などが含まれる。展示面積も拡張され、美術館群の姿を「根本から変える」計画になるという。
美術館の担当者はUS版ARTnewsの取材に対し、改修工事について「うまくいけば、2年後には完了する見込みだ」と説明した。総額5000万ユーロの事業費は、イタリア文化省の助成金と民間からの寄付で賄われる。民間寄付には、アメリカの慈善家ヴェロニカ・アトキンスによる500万ユーロ(約9億1300万円)も含まれている。
改修の柱のひとつが、館内の空調設備の大幅な強化だ。2基の冷却塔を購入するほか、空調や空気処理システムを拡充する。ヨーロッパ各地が記録的な猛暑に見舞われ、一部の美術館や歴史的建造物が全面または一部閉鎖を余儀なくされるなか、時宜を得た対応といえそうだ。
ボッティチェリ展示室は「ルネサンス・グレー」に刷新
ウフィツィ美術館本館ではすでに、サンドロ・ボッティチェリ(1445–1510)の作品を集めた「ボッティチェリ展示室(第10~14室)」の改修が完了している。壁は現代的な白色から美術館の歴史を踏まえて「ルネサンス・グレー」に塗り替えられ、幅木には対照的な濃色を採用。1950年代以前の展示室を思わせる景観を取り戻した。ニューヨーク・タイムズによると、代表作《プリマヴェーラ》(1477-1478頃)と《ヴィーナスの誕生》(1485頃)には、作品の点検をしやすいよう開閉できる特注の展示ケースが導入された。
さらに、フランドル絵画展示室は展示構成と照明を一新して再開する。ウフィツィ美術館のコレクション形成史を紹介する新たなセクションも設けられるほか、グラーノ広場を見下ろすマリアベキアーナ広間には、来館者の受付と入場管理を担う新エリアが整備される。これらは、今後予定されている変更の一部にすぎない。

未公開の「目の階」も展示室に
ピッティ宮殿では、「目の階(Piano degli Occhi)」と呼ばれる、これまで一般公開されていなかった最上層の区画を改修し、約1000平方メートルの新たな展示スペースとして公開する。
ボーボリ庭園では、植栽の再生も進められている。美術館の公式発表によると、過去2年間に2600本以上が新たに植えられ、2024年に植えられた1000本以上を加えると、計3600本を超える。このほか、円形劇場を一般向け公演に利用できるよう改修するほか、ネプチューンの噴水や「小島」を意味するイゾロットの池も修復する。
ウフィツィ美術館には2025年、530万人が来館した。館内は廊下が狭く、展示室も比較的小規模なため、混雑しやすい構造となっている。それもそのはずで、本館の建物はもともと美術館として設計されたものではない。フィレンツェ公コジモ1世・デ・メディチが1550年にアルノ川対岸のピッティ宮殿へ居を移した後、市の行政機関を集約する庁舎として建設を命じたものだった。「ウフィツィ」という名称も、イタリア語で「オフィス」を意味する言葉に由来する。
ヴェルデ館長は、ニューヨーク・タイムズの取材に対し、豊かな歴史を持つこの美術館における改修の最終的な目標は、建物とコレクションそのものに歴史を語らせることだと説明。次のように結んだ。
「私にできる最良の貢献は、ここを訪れた人に、ウフィツィ美術館は昔からずっとこの姿だったのだと思ってもらうことだと考えています」(翻訳:編集部)
from ARTnews

2. シモーネ・マルティーニ《受胎告知》(1333年)Photo: Uffizi Gallery
上部に華麗な彫刻が施され、金箔とテンペラで描かれたこの大作は、ルネサンスへの移行期における傑作の1つ。【作品の詳細はこちら】

3. パオロ・ウッチェッロ《サン・ロマーノの戦い:ニッコロ・マウルジ・ダ・トレンティーノは、ベルナルディーノ・デラ・カルダを倒した》(1435-40年頃)Photo: Uffizi Gallery
1432年のサン・ロマーノ(ピサ)の戦いを描いた3連作の板絵の1枚。【作品の詳細はこちら】

4. ピエロ・デッラ・フランチェスカ《ウルビーノ公夫妻の肖像》(1473-75年)Photo: Uffizi Gallery
ルネサンス期の最も有名な肖像画の1つであり、傭兵隊長として活躍したフェデリーコ・ダ・モンテフェルトロ公爵と、出産後に26歳で命を落としたその妻バッティスタ・スフォルツァを描いた作品。【作品の詳細はこちら】

5. ピエロ・デル・ポッライオーロ、サンドロ・ボッティチェリ《7つの美徳》(1469-72年)Photo: Uffizi Gallery
仮想の最高裁判所のようにも見える威風堂々たるこの連作絵画には、7つの美徳を擬人化した女性像が描かれている。【作品の詳細はこちら】

6. サンドロ・ボッティチェリ《ヴィーナスの誕生》(1485年)Photo: Uffizi Gallery
さまざまな雑貨に、この作品が印刷されているのを見たことがある人は多いに違いない。彼女はリーボックのスニーカーの売り上げに貢献し、著名アーティストのインスピレーションの源泉になってきた。【作品の詳細はこちら】

7. イノシシ(紀元前2-1世紀)Photo: Uffizi Gallery
このリアルなイノシシは、無名のローマ人彫刻家による大理石の彫刻で、ヘレニズム時代のブロンズ像を参考にしたものと考えられている。【作品の詳細はこちら】

9. ピエロ・ディ・コジモ《アンドロメダを救うペルセウス》(1510-15年)Photo: Uffizi Gallery
翼のあるサンダルを履いたペルセウスが空を飛び、尻尾の先がくるくる巻いた巨大な海の怪獣がアンドロメダを襲おうとする場面を描いている。【作品の詳細はこちら】

10. レオナルド・ダ・ヴィンチ《東方三博士の礼拝》(1482年)Photo: Uffizi Gallery
1481年にダ・ヴィンチは、フィレンツェ近郊のサン・ドナート教会に飾るための絵を、アウグスチノ会の修道士たちから依頼された。【作品の詳細はこちら】

13. ヘルマプロディートス(紀元2世紀)Photo: Uffizi Gallery
元前2世紀の古代ギリシャのブロンズ像をもとにしてローマ時代に作られたこの作品は、ギリシャのパロス島で採掘された大理石から彫られている。【作品の詳細はこちら】

14. エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン《自画像》(1790年)Photo: Uffizi Gallery
画家ルイ・ヴィジェの娘で、有名な画商ジャン=バティスト=ピエール・ルブランの妻だったエリザベートは、肖像画で成功を収めた作家だ。【作品の詳細はこちら】

15. パルミジャニーノ《長い首の聖母》(1534-40年)Photo: Uffizi Gallery
聖母の長い首と指、そして乳首とへそが見える薄布の衣服が描かれたこの絵には、典型的な聖母子像にはない官能性がある。【作品の詳細はこちら】

16. ポントルモ《エマオの晩餐》(1525年)Photo: Uffizi Gallery
ポントルモの《エマオの晩餐》は、復活したイエスが旅人に扮し、2人の弟子とともに食卓にいる様子を描いている。【作品の詳細はこちら】

17. ロッソ・フィオレンティーノ《エテロの娘たちを守るモーセ》(1523-27年)Photo: Uffizi Gallery
筋骨隆々の男たちが、カンバスから飛び出そうな勢いで前面に押し出されている混乱したシーンは、聖書の物語の一場面で、そこに登場するモーセが活劇のヒーローのように描かれている。【作品の詳細はこちら】

21. アルテミジア・ジェンティレスキ《ホロフェルネスの首を斬るユディト》(1620年頃)Photo: Uffizi Gallery
この有名な物語は多くの画家が題材として取り上げているが、その中でも最も真に迫ったものの1つがこの作品だ。【作品の詳細はこちら】

22. ユストゥス・スステルマンス《Madonna “Domenica delle Cascine,” la Cecca di Pratolino, e Pietro Moro》(1634年)Photo: Uffizi Gallery
人物同士がやり取りをしている瞬間をカメラで捉えたかのように描写されている。【作品の詳細はこちら】






