ポール・アレン 、S・I・ニューハウス、ロバート・ムニューシン、マリアン・グッドマン、レナード・ローダー、バーバラ・グラッドストーン……。彼らは、過去2年間にオークション へ出品されたコレクションを所有していた著名人たちだ。こうして名前を挙げると、まるで一昔前の名士録のようでもある。
最近のアート市場は──少なくとも大手オークションハウスのビジネスは──回復傾向にある。その大きな要因の一つは、上に挙げた世代のコレクター たちの存在だ。主要オークションハウスは2026年上半期にここ数年で最高の業績 を上げ、クリスティーズ は5年ぶりに売上高45億ドル(最近の為替レートで約7100億円、以下同)を達成。サザビーズ は、過去最高の44億ドル(約7000億円)を記録した。
しかし、アナリストたちが指摘するように、それは市場がコロナ禍後の活況を取り戻したからではなく、並外れたコレクションが売りに出された効果によるものだ。サザビーズの元幹部で、ウィザーズ・アート・アンド・アドバイザリーのパートナー兼責任者、マリ=クラウディア・ヒメネスはこう言った。
「現時点での市場の回復が、こうした重要コレクションに牽引されていることに疑いの余地はありません」
そう言い切れる理由は、アート市場が常に供給不足の問題を抱えていることにある。
「富の大移動」がアート市場の供給不足を緩和
傑作と評される美術品は市場から姿を消しがちだ。美術館に収蔵されて二度と売りに出ない作品や、富裕層のコレクションとして何十年も手放されない作品は少なくない。ヒメネスが「今、傑作が市場に出回ることは極めて稀です」と話すように、「非常に価値の高い傑出した作品群」が市場に姿を現すのは、故人となった大コレクターの遺産が売却されるときだけと言っていいだろう。
2023年から25年にかけてのアート市場の「調整」は、主に最高価格帯で起きていた。そのことについて、アート・バーゼル とUBS によるグローバル・コレクティング調査(Survey of Global Collecting)の著者であるクレア・マッキャンドルーは、2024年にこう述べている。
「必ずしも、美術品に巨額の支出をする意思のある人が減ったわけではありません。ただ単に、そうした買い手に提示されるべき価値の高い作品が減っているのです」
供給不足の問題は、コレクターの死去によって解決されつつある。しかもこれは一過性の現象ではない。今はいわゆる「富の大移動」の初期段階にあり、今後、数十兆ドル(数千兆円)規模の資産が、大恐慌〜第2次世界大戦終結までに生まれたサイレントジェネレーションや戦後のベビーブーマー世代から、X世代、ミレニアル世代 、そしてZ世代 の相続人へと引き継がれることになる。
デロイト・プライベートとアートタクティックのアート&ファイナンス・レポートによると、総計1兆ドル(約160兆円)相当の美術品が今後10年間で継承される可能性があるという 。相続人の中には作品の所有を望む人もいるだろうが、それを現金化したいと考えるケースも少なくないはずだ。
US版ARTnewsのアーカイブには、このことを裏付ける興味深い記事がある 。それは、2020年10月の「Estates in Waiting: Which Collectors Are Being Courted by Auction Houses and Museums?(待機中の遺産:オークションハウスや美術館が熱い視線を注ぐコレクターは誰か?)」だ。
そこで名が挙げられた中には、ジョー・キャロル&ロナルド・ローダー夫妻やポール・アレンがいる。実際、アレンのコレクションは単一所有者によるオークションの落札総額として、史上初めて10億ドル(約1600億円)を突破した 。また、レナード・ローダー(ロナルド・ローダーの兄)のコレクションも同等の好成績を収め 、昨秋のサザビーズの売り上げを牽引した。
重要なのは遺産相続の動向だけではない。ヒメネスは、生前に主要なコレクションを売却したコレクターとして、ポーリン・カーピダスやジョー・ルイスを例に挙げ、「市場への新たな作品の供給は、2種類のコレクターの組み合わせによって起きる」と言った。つまり、「すでに他界した人」と「自身のコレクション活動を終えようとしている人」だ。
遺産相続に伴う義務によって生じる特殊なニーズ
さらに、あまりロマンティックとは言えない理由もある。それは税金だ。
遺産売却は通常の委託販売にはない金銭的義務や期限を伴うことが多く、そのために確実性が重視される。サザビーズの元幹部でアート・マーケット・アドバイザーズの共同創業者、ミッチェル・ザッカーマンは、遺言執行者や遺産受取人の多くが保証付きの出品を選択する傾向にあるとして、こう説明した。
「遺産の相続人や遺言執行者は、相続税を支払う必要がある場合が多いので、品物が売れないリスクを負いたくないのです。彼らは保証に伴う費用を支払うことを厭いませんし、遺されたコレクション全体を保証の対象とするケースも多々あります」
こうした事情が示唆するのは、オークションハウスにとって遺産の出品者が理想的な顧客であるということだ。遺言執行者には義務を果たすべき期限が課され、処分しなくてはならない遺品が数十点から数百点に及ぶこともある。力のあるギャラリーならリヒター の作品を売ることができるかもしれないが、オークションハウスの場合はリヒターだけでなく、家具、宝飾品、デザイン 作品を含むありとあらゆる家財をまとめて競売の日程を組み、最低限の収益を保証できる。ザッカーマンの言葉を借りれば、「一括請負方式」だ。
だから、コレクターの遺品を巡ってクリスティーズとサザビーズが激しい競争を繰り広げるのも無理はない。
その競争は、実際にオークションが行われるずっと前から始まる。サザビーズのグローバル・ファインアート部門のエグゼクティブ・バイスプレジデント、マデリン・リスナーによると、数年先までの計画を立てる家族もあれば、売却の数カ月前に初めてコレクションの取り扱いが検討されるケースもある。それに対して各オークションハウスは、予想価格、保証額、マーケティング計画、そして個人の所有物の処分を一大イベントへと変えるために必要なグローバルな体制を提示して売り込みを行う。
その体制は、大コレクターたちの実際の収集物に合わせて次第に大きくなっている。主要なコレクションが、単一のオークションカテゴリーにすっきり収まることはめったにないからだ。たとえば、5000万ドル(約80億円)の絵画を所有する人物が、驚くほど安い家具やジュエリー、デザイン作品、時計、コインなどを所有していることもある。リスナーは、その幅広さが競争に勝つ上でのポイントになると話す。つまり、グローバルなオークションハウスならほぼ全てを一括して扱えるので、遺産管理者がカテゴリーごとに違う業者に依頼する必要はないというわけだ。
「私たちが接するコレクターの多くは、収集対象を特定のカテゴリーや価格帯に限定しているわけではありません。5000万ドルの絵画を所有する一方で、1万や2万ドル(約160万〜320万円)ほどの様々な品を所有しているコレクターも多いのです」
ストーリー性が遺されたコレクションの価値を高める
遺産全体を一括して売却することには、別の利点もある。それは、コレクターにまつわるストーリー性をセールスポイントにできる点だ。絵画、デザイン、ジュエリーやその他の収集品などの分野を横断して、単一の審美眼が生み出したコレクションとして売り出すことで、リスナーが言うところの全体的な「ハロー(後光)効果」が生み出せる。
また、遺産売却においては金銭的な条件が特に重要になる。遺言執行者は受取人に対して受託者としての義務を負っている。ゆえに、特定の専門業者が個人的に好きだという理由だけで、別の業者からの有利なオファーを断ることはできない。「価値を最大化しなければならないのです」とヒメネスは言う。
しかし、金額が全てというわけでもない。ザッカーマンは、金銭的な条件、マーケティング、そしてその案件に関係する人々という3つの要素で販売業者間の競争を捉えている。たとえ書類上の条件では他に劣っていても、人間的に相性が良いと判断された業者が委託契約を勝ち取ることもある。オークションハウスの担当者は、売却者に対するのと同じようなやり方で、潜在的な買い手に対して売り込みを行うことになるからだ。ヒメネスは単刀直入にこう言った。
「取引の成否は、委託された美術品を販売する担当者で決まります」
遺産売却では、もう一つの売り物がある。それは不朽の名声とでも言うべきものだ。
遺産売却は相続人にとって、いわば親や祖父母の最後の公的な記念碑になるものだ。カタログ、展覧会、動画、そして広報キャンペーンは、コレクターを「優れた審美眼、見識、そして先見の明を備えた」人物へと変貌させる。ヒメネスによれば、こうしたストーリーは遺族にとってとても重要だという。コレクションが散逸した後も長く検索可能な形で残る「レガシー」は、こうした物語を作ることによって生み出されるからだ。サザビーズ自体も、絵画からデザイン、その他の収集品に至るまで、カテゴリーを超えてコレクターの物語を展開することに利点を見出している。
とはいえ、そうした美化された物語が全てのコレクターにふさわしいかは、また別の問題だ。メディア王と言われたニューハウスやマイクロソフト共同創業者のアレンであれば、彼らが所有していたという来歴は作品に大きな付加価値を与えるかもしれない。しかし、コレクション以外ではさほど名の知られていない富豪の場合、その来歴に高い価値が付くことは望めないだろう。当然ながら、オークションハウスはこうした点に対処することでも報酬を得ている。
いずれにしても、根底にあるのは遺産となったコレクションが市場に出回っている現実だ。そして、差し当たってその状況が変わることはないだろう。
リスナーによると、10年前に40歳未満の買い手がサザビーズの顧客全体に占める割合は10%を下回っていたが、今日その割合は約20%に達している。現在の偉大なコレクター世代が今後、故人となっていくことについて、1970年代からオークション業界に携わってきたザッカーマンは、あくまでも実務的な見方をしている。
「美術品を所有するコレクターの遺産は、絶えることなく市場に供給されます」
むしろ問題は、売り出される作品を購入することに、次の世代が関心を持つかどうかだ。(翻訳:清水玲奈)
* US版ARTnews編集部注:本記事の内容は、最新のアート市場動向やその周辺情報をお届けするUS版ARTnewsのニュースレター、「On Balance」(毎週水曜配信)から転載したもの。登録はこちら から。
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美術史上、最も高額で落札された作品は?──オークション記録を塗り替えた16作品
芸術作品には、人々を感動させたり考えさせたりする文化的価値がある。同時に、それが市場を流通するものである限り、金銭的価値に関心が集まるのも事実だ。ここでは、何十年から何百年という時を超えてコレクターを魅了し、駆り立ててきた作品の中でも、とくに高い落札額を記録した16作品を紹介する。
16. フィンセント・ファン・ゴッホ《Orchard with Cypresses(果樹園と糸杉)》(1888):1億1700万ドル(約186億円)
ゴッホ の《Orchard with Cypresses(果樹園と糸杉)》(1888)は、アート市場がコロナ禍による活動制限からようやく抜け出そうとしていた2022年11月にクリスティーズ ・ニューヨークのオークション に出品された。それは故ポール・アレン(マイクロソフト共同創業者)のコレクションのセールで、本作はそこに登場した作品の先陣を切って1億ドル(159億円)の壁を超えている。パンデミック発生後数年間は金利が低水準で推移していたため、高額作品が購入されやすい状況にあった頃だ。
ファン・ゴッホのアルルの住居の近くに並ぶ桜の開花を描いたこの作品は、春にしてはひんやりした印象を与えるが、パリ時代の後にファン・ゴッホが発展させた作風──絵の具の厚塗り、鮮やかな色彩、奔放な表現──の確立に貢献したとされる14点に含まれるものだ。しかし《Orchard with Cypresses》は、同じ11月に1億ドル以上で落札された5点のうちの1点にすぎない。これは非常に稀なことで、当時鑑定士のデイヴィッド・シャピロは、1億ドルの大台を突破した作品の多さについて「前例がない」と述べていた。
《Orchard with Cypresses》が出品されたポール・アレン・コレクションのセールは、一晩で15億ドル(約2385億円)を記録し、単一所有者による史上最高額を樹立した。驚異的な成功を収めたこのセールでは、全ての出品作が落札され、その多くが最高予想価格を上回っている。これにより、不確実な経済状況の中でも高価格帯の作品には底堅い需要があることが裏付けられた。|Photo: Digital image copyright ©Christie’s Images Ltd. via Bridgeman Images
15. エドヴァルド・ムンク《叫び》(1895):1億1990万ドル(約191億円)
ムンク によるパステル画の《叫び》(1895)は、2012年5月にサザビーズ ・ニューヨークで手数料込み1億1990万ドル(約191億円)で落札され、当時の公開オークションにおける最高額作品となった。それまでトップの座に君臨していたのは、2010年にクリスティーズで1億650万ドル(約169億円)で落札されたピカソの《Nude, Green Leaves and Bust(ヌード、緑の葉と胸像)》(1932)だった。なお、ムンクは叫びを主題とする絵画を4点(油彩画が2点、パステル画が2点)制作しており、上記はそのうちの1点だ。
この作品は当時、唯一個人蔵となっていた《叫び》だった。売り手はノルウェーの実業家ペッター・オルセンで、彼の父トーマスはムンクの友人でパトロンでもあった。入札は4000万ドル(約63億6000万円)から始まり、会場内や電話を介した入札者が12分間にわたって激しく競り合った。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道によると、落札者はニューヨーク近代美術館(MoMA)の理事を務める投資家のレオン・ブラックで、その後《叫び》は同美術館で展示されている。
US版ARTnewsの姉妹誌であるアート・イン・アメリカが、「ボサボサの髪に、眼鏡をかけた売り手」と形容したオルセンは落札後の声明で、この作品を気候変動や地球温暖化と結びつけたコメントをしている。「これは人間が、自らが自然環境に与えた影響と、それによる取り返しのつかない変化に気づいた恐ろしい瞬間ではないかと感じます。地球はますます住みにくくなっていき、死が増え、命は減っていく。そして、沈みゆく世界の中で残された救命ボートはごくわずかしかないと思い知る。私は《叫び》を見てそう感じます」| Photo: Digital image copyright ©Sotheby’s
14. ルネ・マグリット《光の帝国》(1954):1億2100万ドル(約192億円)
2024年のオークション市場を代表する「至宝」とクリスティーズ・ニューヨークが表現したこの絵は、マグリット が25点以上も描いた同じテーマの作品中、最も優れた1点と言えるだろう。不思議な夜の情景が描かれている「光の帝国」シリーズでは、木々が立ち並ぶ通りと家は闇に包まれているにも関わらず、その上には青空が広がり、綿のような大きな雲が漂っている。デザイナーで慈善家のミカ・エルテュンのコレクションから出品され、2024年11月に1億2100万ドル(約192億円)で落札されたこの《光の帝国》(1954)は、マグリット作品のオークション記録を更新した。
当時クリスティーズで20世紀・21世紀美術部門を率いていたアレクサンダー・ロッターは、オークション終了後、その晩のセールは「傑作重視のアプローチだった」と説明した。「今の難しい市場において、入手できる限り最高の作品を出そうと考えました。まさにこれらがその好例です」。ロッターはそう語りつつ、コレクターの関心を引けなかったロットも少なからずあったことを認めた。その一方で、「私たちが全力で推した作品群は、その判断の正しさを証明してくれました。複数の入札者が参加し、個人的な趣味嗜好を基盤とする市場が台頭しつつあることを示したのです」とも語っている。|Photo: Digital image copyright ©Christie’s Images Ltd. Artwork copyright © 2025 C. Herscovici/Artists Rights Society (ARS), New York
13. ポール・セザンヌ《サント・ヴィクトワール山》(1888-90):1億3770万ドル(約219億円)
フランスの田園風景とセザンヌ がこよなく愛したサント・ヴィクトワール山が描かれたこの美しい風景画は、2022年11月にクリスティーズ・ニューヨークで開かれたポール・アレン・コレクションのセールから本記事のリストに入った5点の2つ目だ。《サント・ヴィクトワール山》(1888-90)はこのセールで、ジョン・ヘイ・ホイットニー所蔵の静物画が記録したセザンヌ作品の最高額6050万ドル(約96億2000万円)の倍以上にあたる1億3770万ドル(約219億円)で落札されている。
セザンヌによる他の傑作と同様、《サント・ヴィクトワール山》では、世界の事象──この絵の場合はフランスの山──が、まるで三次元の幾何学的形態であるかのように色彩で陰影をつけた形に分解されている。それはパブロ・ピカソやジョルジュ・ブラック といったキュビスト たちに道を開いくものであり、彼らはその後、セザンヌの革新をさらに推し進めた抽象表現を生み出している。|Photo: Digital image copyright ©Christie’s Images Ltd
12. パブロ・ピカソ《腕時計をした女)》(1932):1億3930万ドル(約221億円)
ピカソ が愛人マリー=テレーズ・ウォルターを描いた数多くの絵の1枚である《腕時計をした女》(1932)は、2023年11月にサザビーズ・ニューヨークで1億3900万ドル(約221億円)で落札され、ピカソ作品としてオークション史上2番目の高額を記録した。慈善家の故エミリー・フィッシャー・ランドーが所蔵していた本作は、活発な競り合いの末、サザビーズ・グローバル・ファインアート部門の責任者ブルック・ランプリーを介した電話入札者が落札している。
この作品はまた、1932年にピカソが完成させて以来、所有者がほんの数回しか変わっていないという珍しい来歴を持つ。ランドーが1968年にこの作品を購入したペース・ギャラリーは、その2年前にスイスのバイエラー・ギャラリーからこれを買い取っていた。
ピカソによるマリー=テレーズの肖像は高額で売れることが多い。同じ1932年に制作された《ヌード、緑の葉と胸像》には、2010年に1億650万ドル(約169億円)という記録的な値がついた。だが、これまでで最も高額な値が付いたピカソ作品は、マリー=テレーズを描いた作品ではない。これについては後ほど詳述する。|Photo: Digital image copyright ©Sotheby’s. Artwork copyright © 2025 Estate of Pablo Picasso/Artists Rights Society (ARS), New York
11. 斉白石《山水十二屏》(1925):1億4080万ドル(約224億円)
斉白石の《山水十二屏》(1925)は、2017年12月に北京 のポーリー(保利)・インターナショナル・オークションで、中国美術作品の最高額となる1億4080万ドル(約224億円)で落札された(人民元で9億3150万元)。20分以上に及んだ競り合いでは60回以上の入札で価格が上昇し、ある中国人コレクターが最終的にこの12枚組の作品を落札した。
高さが180cmほどあるそれぞれの絵には、斉が中国各地を旅した際に見た雄大な風景が描かれている。1954年に開かれた斉の個展で初公開されたこの作品は、1958年の追悼展にも並び、以降は斉の弟子だった郭秀儀が保管していた。2017年に落札された当時は、個人蔵となっていた唯一の斉作品として極めて希少なものだった。
なお、1932年頃に描かれ、国民党の軍人だった王纉緒に贈られた類似作が重慶博物館に所蔵されている。|Photo: Courtesy Poly Beijing
10. アルベルト・ジャコメッティ《指差す男》(1947):1億4130万ドル(約225億円)
アルベルト・ジャコメッティ の《指差す男》(1947)は、2015年5月にクリスティーズ・ニューヨークで1億4130万ドル(約225億円)で落札され、オークション史上最高額の彫刻作品となった。不動産王のシェルドン・ソロウが売りに出した高さ約168cmのこのブロンズ像は、その5年前にサザビーズ・ロンドンで《歩く男I》(1960)が樹立したジャコメッティのオークション記録、1億430万ドル(約166億円)を上回った。
《指差す男》は、同じ型から鋳造された6点(このほかにアーティストプルーフも存在する)の1点で、このオークションに出されるまで45年もの間、個人蔵となっていた。ほかの4点は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)やロンドンのテートなど主要美術館に所蔵されているため、この時のオークションはコレクターにとってまたとない機会だった。
当時クリスティーズのグローバル・プレジデントだったユッシ・ピルッカネンは、この作品を「私が取り扱いの栄誉にあずかった芸術作品の中で、最も優れたものの1つ」だと評価している。この作品の買い手は明らかにされていないが、その人物も同じ意見だったのは間違いない。|Photo: Digital image copyright ©Christie’s Images Ltd. Artwork copyright © Succession Alberto Giacometti/Artists Rights Society (ARS), New York 2025
9. フランシス・ベーコン《ルシアン・フロイドの3つの習作》(1969):1億4240万ドル(約226億円)
2013年11月にクリスティーズ・ニューヨークで1億4240万ドル(約226億円)で落札されたフランシス・ベーコン の三連画《ルシアン・フロイドの3つの習作》(1969)は、2012年にサザビーズで1億1990万ドル(約191億円)を記録したエドヴァルド・ムンクのパステル画《叫び》(このリストで15位)の記録を塗り替え、当時オークション史上最高額の作品となった。
それぞれ高さ2メートル弱の3枚に描かれている歪んだ体の人物は、ベーコンの長年の友人で、同じ画家としてライバル関係にあったルシアン・フロイドだ。また、この肖像画には複雑な来歴がある。1970年代にあるディーラーが3枚をそれぞれ別のコレクターに売ってしまい、そのうちの1人が残りの2枚を買い取る1989年まで15年間バラバラになっていたのだ。
オークション開始前には8500万ドル(約135億円)以上で売れると予想されていたこの作品は、5分間の激しい入札合戦の末、ニューヨークのアクアベラ・ギャラリーが代理を務める入札者のものとなった。クリスティーズは、《ルシアン・フロイドの3つの習作》を手に入れられなかった人々がほかの作品に挑戦できるよう、同作品をセール序盤の9番目のロットに出す戦略を取っていた。これが功を奏し、その夜の落札総額は当時のクリスティーズの記録を塗り替える6億9160万ドル(約1100億円)に達した。
落札からまもなく、この三連画は匿名の買い手によってポートランド美術館に貸し出され、2013年12月から2014年3月まで一般公開された。|Photo: Digital image copyright ©Christie’s Images Ltd. Artwork copyright © The Estate of Francis Bacon/DACS, London/Artists Rights Society (ARS), New York 2025 (CR 69-07)
8. ジョルジュ・スーラ《ポーズする女たち(小)》(1888):1億4900万ドル(約237億円)
20世紀初頭にジョルジュ・スーラ が描いた傑作《ポーズする女たち(小)》(1888)は、2022年11月にクリスティーズ・ニューヨークで1億4900万ドル(約237億円)で落札された。スーラの代名詞とも言える点描法で3人の裸婦を描いたこの作品は、個人蔵のスーラ作品の中でも特に希少なものとされ、ポール・アレン・コレクションのセールでは1億ドル(159億円)を超えると予想されていた。
入札は7500万ドル(約119億円)から始まり、ニューヨークやアジアの顧客の代理を務めるスペシャリストを含む4人が競り合った。数分間にわたる激しい応酬の末、1億3000万ドル(約207億円)でハンマーが振り下ろされ、クリスティーズのアジア地域のチェアマンが担当していた顧客が、手数料込み1億4900万ドル(約237億円)でこの作品を落札した。それまでのスーラのオークション記録は、2018年に《The Harbor at Grandcamp(グランカンの港)》(1885)が達成した3400万ドル(約54億円)で、本作はそれを大幅に更新した。
《ポーズする女たち(小)》がそれ以前に市場に出たのは1970年で、クリスティーズでの落札額は100万ドル(約1億5900万円)強だった。また、アレンのコレクションに入る前は、20世紀初頭の近代アーティストたちの支援者だった有力コレクター、ジョン・クインがこの絵を所有していた。|Photo: Digital image copyright ©Christie’s Images Ltd
7. アメデオ・モディリアーニ《横たわる裸婦(左を下にして)》(1917):1億5720万ドル(約250億円)
アメデオ・モディリアーニ が描いた裸婦像の中でも特に評価が高い《横たわる裸婦(左を下にして)》(1917)は、2018年5月にサザビーズ・ニューヨークのオークションで手数料込み1億5720万ドル(約250億円)を記録した。ハンマープライスは1億3900万ドル(約221億万円)と、非公開の予想価格だった1億5000万ドル(約239億円)にはわずかに及ばなかった。それでもこの絵は、当時のサザビーズにおける最高額の作品となっている。
肩越しに鑑賞者を見つめる裸婦を描いたこの大作は、サザビーズの印象派・近代美術セールの目玉だった。オークショニアのヘレナ・ニューマンの進行で1億2500万ドル(約199億円)から入札が始まったオークションの値動きは漸進的で、慎重な競り合いの末に決着している。落札したのは、サザビーズの印象派・近代美術部門のグローバル共同責任者のサイモン・ショーを介した電話入札者だった。
この作品は、モディリアーニが1916年から19年にかけて制作した革新的な裸婦像のうちの1枚だ。1917年にパリの画商ベルト・ヴァイルのギャラリーで初めて展示された際、これらの官能的な絵は大スキャンダルを巻き起こし、展覧会はわずか2日で警察によって中止された。当時売れたのは、デッサン2点のみだったという。
サザビーズでの落札額は驚異的だったものの、モディリアーニ作品のオークション記録更新には至らなかった。その記録は今も、2015年にクリスティーズで中国のコレクター、劉益謙に1億7040万ドル(約271億円)で落札された《横たわる裸婦》(1917-18)が保持している。それでもサザビーズは本作を画期的なものとして位置付けており、サイモン・ショーは「裸婦像には、モディリアーニ以前と、モディリアーニ以後がある」と述べている。|Photo: Digital image copyright ©Sotheby’s
6. アメデオ・モディリアーニ《横たわる裸婦》(1917-18):1億7040万ドル(約271億円)
2015年11月、アメデオ・モディリアーニの《横たわる裸婦》(1917-18)が、クリスティーズ・ニューヨークで1億7040万ドル(約271億円)で落札された。事前予想を大きく超えたこの金額は、それまでモディリアーニのオークション記録だった7070万ドル(約112億円)の倍以上に相当する。1億ドル(159億円)を超える予想価格が付いていたこの絵画は、当時オークションにおける史上2番目の高額作品となった。
出品されたのは、20世紀の傑作を数多く集めて話題性を狙ったイブニングセール「The Artist’s Muse(アーティストのミューズ)」だ。ウィレム・デ・クーニングやルシアン・フロイドの作品を含むいくつかの主要作が不落札に終わるなど、この夜の結果にはばらつきがあったが、モディリアーニの裸婦像は会場を大いに沸かせた。熾烈を極めた入札合戦を制したのは、電話で参加していた中国のコレクターだったと、オークション終了後にクリスティーズのピルッカネンは明かしている(後に中国の億万長者で実業家の劉益謙であることが判明した)。
この絵は、1916年から19年にかけてモディリアーニが制作した横たわる裸婦シリーズの1枚で、1917年にパリのベルト・ヴァイルのギャラリーで初めて展示されると大いに物議を醸した。展覧会が警察の取り締まりによって中止を余儀なくされるまでになったのは、従来にない官能性と大胆なポーズが理由だったが、今日では近代の裸婦像の中でも特に重要な作品群とされている。
《横たわる裸婦》は、まちまちの結果に終わったイブニングセールのハイライトとなった。この夜の落札総額は4億9140万ドル(約781億円)で、予想最低額の4億4000万ドル(約700億円)を上回ったものの、同じ年に行われた同種のセールが叩き出した7億580万ドル(約1122億円)には遠く及ばなかった。セールではギュスターヴ・クールベ やバルテュス 、ロイ・リキテンシュタイン などのオークション記録も更新されたが、主役は間違いなくこの《横たわる裸婦》で、アート市場で有数の人気作家としてのモディリアーニの存在感を示した。|Photo: Wikimedia Commons
5. パブロ・ピカソ《アルジェの女たち(バージョンO)》(1955):1億7940万ドル(約285億円)
パブロ・ピカソの《アルジェの女たち(バージョンO)》(1955)は、2015年5月にクリスティーズ・ニューヨークで1億7940万ドル(約285億円)で落札され、当時オークション史上最も高額な絵画となった。15点あるピカソの「アルジェの女たち」シリーズ(1954-55)のうち最後に描かれ、最も複雑なこの作品は、激しい競り合いの末に1億4000万ドル(約223億円)の予想価格を大幅に上回る額で落札された。
この傑作への入札は、全て電話を通じて行われた。当時クリスティーズの幹部だったロイック・ガウザーとブレット・ゴーヴィがそれぞれ競り合う入札者の代理を務め、入札額が1億4000万ドル(約223億円)を突破したときには、オークショニアのピルッカネンが「まだ多くの入札者が残っています」と声を張り上げた。最終的にゴーヴィが代理を務めた入札者が1億6000万ドル(約254億円)で競り勝つと、会場からは歓声が上がった。
「アルジェの女たち」は、ウジェーヌ・ドラクロワ が1834年に描いた同名の傑作にインスパイアされたシリーズだ。フランスの植民地支配に抗うアルジェリアの独立運動に触発されたピカソが制作したこの連作は、ヨーロッパのオリエンタリズム美術と、当時の政治情勢に対する彼の関心を反映している。中でも「バージョンO」は、特に完成度が高い作品とされている。
この絵の来歴も注目に値する。1956年にニューヨークのコレクター、サリー&ヴィクター・ガンツ夫妻が伝説的画商ダニエル=ヘンリー・カーンワイラーから直接購入したのち、1997年に初めてオークションに出品され、3190万ドル(約51億円)で落札された。つまり、20年足らずの間に6倍近くも価格が高騰したことになる。
クリスティーズは落札者の名前を明かしていないが、その後の報道によれば、買い手はカタールの元首相ハマド・ビン・ジャーシム・ビン・ジャブル・アル=サーニーだったという。この結果は、アート市場におけるピカソの圧倒的な存在感を再確認させ、《アルジェの女たち(バージョンO)》を2010年代のハイライトの1つとしてオークション史に刻んだ。|Photo: Digital image copyright ©Christie’s Images Ltd. Artwork copyright © 2025 Estate of Pablo Picasso/Artists Rights Society (ARS), New York
4. ジャクソン・ポロック《ナンバー7A》(1948):1億8120万ドル(約288億円)
幅が約3.3メートルあるジャクソン・ポロック の《ナンバー7A》は、第一級の来歴と素晴らしい歴史的価値を兼ね備えている。1948年、ポロックは絵の具を筆で塗る代わりにカンバスに垂らすドリップ・ペインティングの技法を生み出し、翌年この絵を制作した。その技法を使うようになって以来、ポロックは自らの手で描くことをやめ、絵画制作を偶然に委ねるようになっている。
実業家でサザビーズ元オーナーのA・アルフレッド・タウブマンは、同社を買収する数年前の1980年にこの絵を手に入れ、2000年に出版界の大物S・I・ニューハウスに売却した。そして、ニューハウスの死から10年近く経った2026年5月、クリスティーズのオークションに出品されて1億ドル(159億円)の予想価格が付けられ、ポロックの記録を更新すると見られていた。この作品が公の場に出されたのは1977年以来のことだった。
《ナンバー7A》は最終的に予想を大幅に上回り、史上最高レベルの金額で落札された絵画の1つとなった。入札は8000万ドル(約127億円)から始まり、60回の応酬を経て1億5700万ドル(約250億円)でハンマーが下ろされている 。手数料を含めた落札額は1億8120万ドル(288億円)だった。|Photo: Christie's Images Ltd. 2026
3. アンディ・ウォーホル《ショット・セージ・ブルー・マリリン》(1964):1億9500万ドル(約310億円)
現代アートにおける最も象徴的なイメージの1つであるアンディ・ウォーホル の《ショット・セージ・ブルー・マリリン》は、2022年5月にクリスティーズ・ニューヨークで手数料込み1億9500万ドル(約310億円)で落札され、当時最も高額な20世紀アートの作品となった。これは、マリリン・モンロー の映画『ナイアガラ』(1953年)のスチール写真をもとにしたシルクスクリーンの肖像画で、有名な「ショット・マリリン(撃ち抜かれたマリリン)」シリーズの1点だ。シリーズ名は、1964年にパフォーマンス・アーティストのドロシー・ポドバーが、積み重ねられていたウォーホルの作品に向けて発砲した事件に由来する。
オークションの目玉だった《ショット・セージ・ブルー・マリリン》では、電話入札者3人と会場の入札者1人の計4人が競り合った。最終的に会場にいたアートディーラーのラリー・ガゴシアンが1億7000万ドル(約270億円)のハンマープライスでこの絵を手に入れたが、これは予想価格の2億ドル(約318億円)をかなり下回る額だった。
「撃ち抜かれたマリリン」シリーズの作品は、わずか5点しか存在しないため、ウォーホル作品の中でも特に入手が難しい。50年間にわたり個人蔵となっていた本作は、スイス のディーラー、ドリス&トーマス・アマンの遺産管理団体によって出品された。保証なしでオークションにかけられたこの作品が高値で売れたことは、ウォーホルの市場だけでなく、現代アート市場全体にとっても重要な節目となった。
2015年にピカソの《アルジェの女たち(バージョンO)》(1955)が樹立した1億7940万ドル(約285億円)の記録を《ショット・セージ・ブルー・マリリン》が上回ったことで、ウォーホルは価格面における近現代アートの頂点に立った。このセールを画期的と捉える専門家がいる一方で、プライベートセールではかなり前から2億ドル(約318億円)の大台を超える作品が出ていたとの指摘もある。|Photo: Digital image copyright ©Christie’s Images Ltd. Artwork copyright © 2025 The Andy Warhol Foundation for the Visual Arts, Inc./Licensed by Artists Rights Society (ARS), New York
2. グスタフ・クリムト《エリザベート・レーデラーの肖像》(1914-16):2億3640万ドル(約376億円)
グスタフ・クリムト の《エリザベート・レーデラーの肖像》(1914-16)は、2025年11月にサザビーズ・ニューヨークで2億3640万ドル(約376億円)で落札され、オークション史上2番目に高額な美術作品となった。また、それまでのクリムト作品のオークション記録を塗り替えただけでなく、近現代美術作品の史上最高額を樹立している。クリムトがパトロンの依頼に応じて制作した同種の作品(モデルの全身を描いた肖像画)のうち、個人蔵のものは当時これを含め2点しかなかった。そうした希少性もあり、この作品は故レナード・A・ローダー・コレクションのセールの目玉となった。
入札は1億3000万ドル(約207億円)から始まり、20分にわたる緊迫した競り合いの終盤には、サザビーズのスペシャリスト、デイヴィッド・ガルペリンとジュリアン・ドーズが代理する2人の電話入札者が残った。最終的にドーズが担当した入札者が2億500万ドル(約326億円)のハンマープライスで勝利を収め、会場からは拍手が湧き起こった。2億ドルの大台を超えたこの作品はサザビーズの史上最高額となり、2015年に1億7940万ドル(約285億円)で落札されて以来、《アルジェの女たち(バージョンO)》が保持していた近代アート作品の最高記録を更新した。
クリムト最大のパトロンだったレーデラー家の依頼を受けて描かれたエリザベートの肖像画は、第2次世界大戦中にナチスに没収され、1948年に遺族に返還された後、1980年代にローダーのコレクションに加わった。予想価格が1億5000万ドル(約239億円)を超えていたこの作品は、クリムトのオークション記録を更新すると予想されていたが、結果はそれ以上の大成功だった。クリムトは現代のアート市場においてコンスタントに1億ドル(約150億円)以上の高値をつける数少ない近代初期の画家の1人としての地位を確固たるものにし、今後さらに2億ドルの壁を突破する作品が出てくる可能性を示した。|Photo: Sotheby's
1. レオナルド・ダ・ヴィンチ《サルバトール・ムンディ》(1500年頃):4億5030万ドル(約716億円) レオナルド・ダ・ヴィンチ の《サルバトール・ムンディ》(1500年頃)は、2017年11月にクリスティーズ・ニューヨークで4億5030万ドル(約716億円)という驚異的な値で落札され、オークション史上最も高額な美術品となった。ロックフェラー・センターのクリスティーズ本社内の満員の会場で行われたこのオークションでは、19分にわたり激しい入札合戦が続いた。
競り合いは保証価格だった1億ドル(約159億円)を超えてから本格化し、急速に熱を帯びていった。そして2億ドル(約318億円)の大台を突破すると、会場から歓声と拍手が沸き起こった。この時もオークショニアを務めていたピルッカネンは、終盤にかけて入札額が小刻みに上昇する中、巧みに会場を盛り上げた。そうするうちに3億5000万ドル(約557億円)を超え、最終的に4億ドル(約636億円)で決着。そこに手数料としてさらに5000万ドル(約80億円)が加算された。
《サルバトール・ムンディ》をめぐっては、オークションに出される前から真正性に関する議論や、ダイアン・モデスティニが手がけた修復への賛否など、憶測も含めて話題が尽きなかった。このように不確実な要素が多かったにもかかわらず、この絵の驚くべき背景と、真作か否かにかかわらずレオナルド・ダ・ヴィンチと関連したものであることがコレクターたちを魅了した。この作品は、レオナルドの弟子の作品とされていた2005年に、わずか1175ドル(約19万円)で売却されたが、その後、修復を経てレオナルド自身の作品として再評価されている。
このセールに先駆け、クリスティーズは世界各地でこの絵を展示し、パティ・スミスやレオナルド・ディカプリオなどの著名人が登場するプロモーション動画を制作するなど、綿密なマーケティングキャンペーンを行っていた。それが功を奏し、《サルバトール・ムンディ》の落札価格は、2015年の5月に史上最高記録を更新したパブロ・ピカソの《アルジェの女たち(バージョンO)》(1955)の1億7940万ドル(約285億円)を大幅に上回った。この成功は、オークションハウスにとって記録すべき瞬間となっただけでなく、絵画の価格がその歴史的・芸術的意義を覆い隠してしまうこともあるアート界において、市場価値の影響力がますます増大していることを浮き彫りにしている。
落札から1カ月後、《サルバトール・ムンディ》の買い手はサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子であることが明らかになった。彼は同作品を将来リヤドで公開するため、密かに計画を練っているという。|Photo: Wikimedia Commons (翻訳:野澤朋代)
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