池田亮司が第9回ナムジュン・パイク賞を受賞。音やデータ、数学を横断する実践を評価
音や映像、データを用いた作品で知られる池田亮司が、第9回ナムジュン・パイク賞を受賞した。5000万ウォン(約584万円)の賞金が贈られるほか、2027年には韓国のナムジュン・パイク・アートセンターで個展が開催される。
第9回ナムジュン・パイク賞の受賞者に、ビジュアルアーティストで作曲家の池田亮司が選出された。隔年で授与される同賞の受賞者には、5000万ウォン(約584万円)の賞金が贈られるほか、韓国・龍仁(ヨンイン)のナムジュン・パイク・アートセンターで個展を開催する機会が与えられる。受賞にあたり、池田は声明で次のようにコメントした。
「ナムジュン・パイク賞を受賞できたことを、大変光栄に思います。晩年のナムジュン・パイクにお会いする機会に恵まれましたが、彼の作品は、私の制作の根底にある問いと今も響き合っています」
音を探究する作家として知られる池田は、1990年代からデジタルオーディオに生じるグリッチノイズなどを素材に作品を制作してきた。例えば、バービカン・センターやメトロポリタン美術館などで上演された65分間のオーディオビジュアル・パフォーマンス《superposition》(2012)は、量子力学を手がかりに、人間が自然界をどのように理解するのかを問いかける作品だ。
2019年には、ヴェネチア・ビエンナーレで大規模な映像と音によるインスタレーション《data-verse 1》を初公開した。オーデマ ピゲ・コンテンポラリーの委嘱による同作では、アメリカ航空宇宙局(NASA)や欧州原子核研究機構(CERN)、ヒトゲノム計画などが公開する膨大な科学データを、映像と音を通じて知覚できるものへと変えている。
池田のインスタレーションは、東京都現代美術館、パーク・アベニュー・アーモリー、ポンピドゥー・センター、台北市立美術館、ロンドンの180スタジオなど、世界各地の美術館や文化施設で展示されてきた。2025年には、アトランタのハイ美術館や光州の国立アジア文化殿堂でも展覧会を開催している。
今回の受賞者選考には、キュレーターのチェチリア・アレマーニ、ナオミ・ベックウィズ、ジョン・G・ハンハルトらが参加した。香港を拠点にメディアアーティスト育成プログラムを展開する非営利芸術団体、ビデオテージの共同創設者兼アーティスティック・ディレクターで、推薦委員会のメンバーでもあるエレン・パウは、データビジュアライゼーションやアルゴリズム、信号理論などを長年作品に取り入れてきた池田の姿勢が、パイクの先見的な姿勢と響き合うと評価している。複雑な情報システムを映像や音を通じて体感できる作品へと落とし込み、情報や監視、スケールをめぐる議論を展開してきた点にも触れた。
パイクと長年親交があり、今回の審査委員長を務めたハンハルトは、ニューヨークのグッゲンハイム美術館でシニア・キュレーターを務めた人物でもある。ハンハルトは池田を次のように評価する。
「ナムジュン・パイクと同じように、池田は鑑賞者にとっての冒険であり、瞑想の空間でもあるような作品を生み出しています。それらは私たちの経験や知識の幅を広げ、新たなものの見方に開かれた機会を与えてくれます」
別の審査員で、バーゼルのハウス・オブ・エレクトロニック・アーツのディレクターを務めるザビーネ・ヒンメルスバッハは、音、データ、数学、コンピューティングを没入型のインスタレーションへと結びつけてきた点を、池田の特徴として挙げた。科学や計算を支えるシステムを感覚的な体験へと変えるその手法について、パイクの実験精神を「データとアルゴリズム文化の時代」へと引き継ぐものだと述べている。
同賞は2009年に創設され、京畿道(キョンギド)政府の資金提供によって運営されている。実験的、革新的な実践によって現代アートに新たな可能性を示したアーティストを隔年で顕彰しており、過去の受賞者にはブルーノ・ラトゥール、ダグ・エイケン、トレヴァー・パグレン、ジョーン・ジョナスらが名を連ねる。
9月8日には池田を称える授賞式が行われ、その後キュレーターのサム・オゼルとの対談が予定されている。ナムジュン・パイク・アートセンターでの池田の作品展は2027年に開幕する予定だ。(翻訳:編集部)
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