イランの世界遺産、攻撃被害からの修復作業続く。日本からゴレスタン宮殿保存支援申し出も
アメリカとイスラエルによるイランへの空爆で、世界遺産を含む数多くの歴史的建造物に被害が及んだ。60日間の停戦合意が期限切れになった8月半ば以降、再び攻撃と報復の応酬が続く中、現地では保存修復の専門家たちが復旧対応に尽力している。

2月28日に始まったアメリカとイスラエルによるイランへの大規模な攻撃では、軍事施設に加え、民間施設や文化資産にも大きな被害が生じた。イラン文化遺産・手工芸・観光省(MCHTH)がアート・ニュースペーパー紙に提供した資料によると、18州・29都市における149の歴史的建造物への被害が専門家によって確認されている。
損傷を受けた中には、ユネスコの世界遺産に登録された建造物も含まれる。約400年の歴史を持つテヘランのゴレスタン宮殿(バラの庭園と8つの構造物で構成される)、17世紀に建てられたイスファハンのチェヘル・ソトゥーン宮殿、そして北のカスピ海と南のペルシャ湾を結ぶイラン縦貫鉄道などだ。
今回の文化遺産への被害は、近年のアメリカおよび同盟国による軍事作戦と比較しても異例の規模となっている。 ロイター通信が6月に公開した調査レポートによると、過去20年間にイラク、シリア、リビア、アフガニスタンで行われたアメリカおよび同盟国による地上・空爆作戦では、ユネスコの登録遺産が被害を受けた事例は確認されなかったという。
世界遺産を含むイラン国内の文化遺産を統括するMCHTHのファルハド・アジジ・ゼラニは、「歴史的建造物の被害に関する新たな報告が入るたびに、貴重な遺産を守ることに尽くしてきた同僚たちの長年にわたる努力、専門知識、そして献身に思いを馳せずにはいられませんでした」と話す。
開戦当時、テヘランで博物館や文化遺産に関するプロジェクトに従事していた国際博物館会議(ICOM)のバイスプレジデント、タイエベ・ゴルナズ・ゴルサバによると、当初は通信やインターネットへのアクセスが制限されていたため、情報収集や同僚との連絡は困難を極めていた。
そうした状況下でもスタッフは可能な限り被災現場への訪問を続け、建物の安全確保、破損箇所の養生、屋根の補修、防護用足場の設置、将来の復元に備えるための崩落した装飾部材の記録・分類といった作業を行ってきた。ゴルサバは、こうした記録の作成は極めて重要で、将来の保存修復作業の指針になると指摘する。
ゴレスタン宮殿でも、破損した木材や装飾の破片を回収・分類し、識別番号を割り当てる作業が行われている。秋が近づく中、最優先事項となっているのは、雨水で崩壊が拡大するのを防ぐための屋根の応急処置だ。アジジ・ゼラニによると、日本から宮殿の保存支援の申し出があるという。
チェヘル・ソトゥーン宮殿では、現場の安全確保、損傷箇所の補強、危険箇所の除去が完了しており、資金が確保され次第、本格的な修復作業が行われる予定だ。イラン縦貫鉄道では、被害を受けた直後に専門チームが緊急の修理を実施し、輸送網の混乱を防ぐため運行を再開させた。
開戦以来、イランはユネスコの世界遺産センターや1954年ハーグ条約事務局、さらに他の国際機関と「広範なやり取り」を行い、技術的・財政的支援や国際評価チームの派遣を要請しているとアジジ・ゼラニは説明する。しかし、協力の意向は示されているものの、現時点では具体的な財政支援は実現していない。なお、1954年ハーグ条約は、武力紛争下における文化財の保護を定めた国際条約で、文化財やその周辺を軍事目的で使用することや、文化財を敵対行為の対象とすることを原則として禁じている。