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制作約50年、全長2.4キロ! マイケル・ハイザーの壮大なアートがついに完成

  • 2022年9月2日
  • INTERNATIONAL

Text: Alex Greenberger

ネバダ州の砂漠で50年以上にわたり制作されてきたマイケル・ハイザーの巨大な彫刻群《City(都市)》(1970-2022)がついに完成、9月2日から予約制で公開される。トリプルオート財団が8月19日に発表した。同財団は、このプロジェクトのためにハイザー自身が設立した非営利団体だ。ランドアートの象徴とも言うべき壮大な作品の全貌が、一般に向けて公開されるのはこれが初めてとなる。

マイケル・ハイザー《City(都市)》(1970-2022) Photo Ben Blackwell/©Michael Heizer and Triple Aught Foundation

多額の費用と年月をかけて制作された《City》の全長は2.4キロメートル以上。これだけの規模の現代アート作品は、世界を見渡してもほとんどない。それゆえに、完成が長い間待ち望まれていた。

作品は土や岩、コンクリートなどで作られ、はるか昔に失われた古代文明の都市区画のように見えることから「コンプレックス」と名付けられた部分もある。ハイザーは他の作品同様、このプロジェクトでも景観への直接的な介入を試みている。そして、その作品はエレガントかつミニマルなフォルムで立ち現れた。

ハイザーの《City》へのこだわりは並々ならぬものがあった。そのため、ロサンゼルス・カウンティ美術館やディア芸術財団といった美術館関係者や、ハイザーの長年の支援者の1人、バージニア・ドワンなどがこのプロジェクトに参画している。ドワンは、著名なアートコレクターでギャラリーオーナーでもあった人物だ。

ドワンは声明でこう述べている。「マイケル・ハイザーは現代の偉大なイノベーターの1人です。彼が《City》に着手した時に感じた通り、これは創造されるべくして創造された作品。制作に何十年もの歳月が費やされましたが、今世紀における最も重要な作品の1つが完成したのはとてもすばらしいことです。斬新で、変革のパワーにあふれたこの彫刻群を、その始まりから目の当たりにしてこれたのはとても幸運なことでした」

以下、《City》の景観を紹介する。


Photo: Photo Mary Converse/©Michael Heizer and Triple Aught Foundation

「コンプレックス・ワン」は、ハイザーが《City》で最初に手がけた作品だ。1972年に作業チームと制作を開始したハイザーは、この区画が完成した77年、その経緯をARTnews に語っている。「まるで建設業者のようだと思われるかもしれないが、私の手元には西部6州における入手可能な土地全てが記された膨大な量の不動産情報がある。その土地の気候や土壌を検討した上で、ここだと思った場所を購入するんだ」


Photo: Photo Mary Converse/©Michael Heizer and Triple Aught Foundation

「コンプレックス・ワン」は、ハイザーが父親とともにエジプトのルクソールを訪れたことがきっかけで発想された。意図的に隆起させた形は、ジェセル王の階段状のピラミッドを想起させる。


Photo: Photo Joe Rome/©Michael Heizer and Triple Aught Foundation

「コンプレックス・ワン」は、やはりピラミッドなど古代エジプトの建築物を彷彿とさせる「コンプレックス・ツー」へと続く。80年代には資金調達が困難となり、プロジェクトは一時中断状態に陥った。しかしその後、起業家のパトリック・ラナンが参画。ラナンは最も重要な支援者の1人になった。


Photo: Photo Joe Rome/©Michael Heizer and Triple Aught Foundation

財政的な課題以外にも数多くの難問があった。近くで鉄道建設が計画された時、ハイザーは《City》が破壊される脅威になると主張。核廃棄物の輸送が意図されていたこの路線計画は、幸いなことに2010年に廃案になった。


Photo: Photo Joe Rome/©Michael Heizer and Triple Aught Foundation

「45°、90°、180°」という名の作品は、古代人が作ったような、そびえ立つコンクリートの構造物群だ。ハイザーはかつて「私の彫刻は、巨石時代の社会から続く伝統を維持しようとするものだ」と語っている。


Photo: Photo Joe Rome/©Michael Heizer and Triple Aught Foundation

2016年のニューヨーカー誌によると、《City》には22.5キロメートルに及ぶコンクリートの縁石が施されている。記事の著者であるダナ・グッドイヤーは、その原始的な特質についてこう記している。「《City》を見るまで、あんなに奇妙な畏怖の念を現代アート作品に感じたことはなかった。一体誰が、何のためにこれを作ったのか、という古代への畏れのようなものを」


Photo: Photo Joe Rome/©Michael Heizer and Triple Aught Foundation

これだけ大規模なのにもかかわらず、《City》の詳細は長年、秘密のベールに包まれてきた。以前、ユタ州のラジオ局KSLは「エリア51(ネバダ州の米空軍基地がある地域)よりもさらに機密性が高い」と表現している。


Photo: Photo Joe Rome/©Michael Heizer and Triple Aught Foundation

近年では、政治家が《City》とその舞台となる土地の保護を試みている。2015年にハリー・リード上院議員と当時のオバマ大統領は、2800平方キロメートル以上の土地を保護する文書に署名し、《City》をベイスン・アンド・レンジ国定公園の一部とした。


Photo: Photo Joe Rome/©Michael Heizer and Triple Aught Foundation

ハイザーがニューヨーカー誌に語っているように、《City》が近い将来なくなってしまうことはないだろう。彼はこう言った。「誰かが私の《City》を潰そうとした時、それがどれだけ大変で無意味なことか分かるはずだ」(翻訳:山越紀子)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年8月19日に掲載されました。元記事はこちら

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