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バスキアの立体作品が偽物⁉ 「子どもじみたいたずらだった」

2017年のTEFAFで、ジャン・ミシェル=バスキア作として300万ドルで出品された額の立体作品が、オーストリアの音楽家で芸術家のアンドレ・ヘラーが制作したものであることが明らかになった。

ベルリン国立歌劇場で記者会見するアンドレ・ヘラー  Britta Pedersen/DPA-Zentralbild/DPA (Photo by Britta Pedersen/Picture Alliance Via GETTY IMAGES)

ヘラーの問題作《無題(額)Untitled (Frame)》(1987)は、バスキアのスケッチを木片に貼り付け、釘と黒いほうきの柄の破片を打ち付けて額状にしたもの。オーストリアのファルター誌が11月2日に報じたところによると、スケッチは、彼が1990年に購入した本物であるという。 

この作品はTEFAFでウィーンのギャラリー、ヴィーナーローザー&コールバッハーのブースに出品されたが、結局買い手がつかなかった。 

「今思い返すと、子どもじみたいたずらで、誰かに見せたかった。嘘と真実の愚かな混合物、いわば個人的な寓話です」とヘラーはファルター誌に語った。 

ファルター誌は、ヘラーと、バスキアの専門家で美術史家のディーター・ブッフハートへのインタビューも掲載している。ヘラーは、この作品はバスキアが制作したものだとブッフハートに話したが、それは1度だけだという。なぜ嘘をついたのかという質問に対して、ヘラーは「ブッフハートは、自分が地球上で1番のバスキア通であるかのような素振りだったので、試してみようと思った」と答えた。1987年にヘラーは実際にバスキアと会ったことがある。 

ブッフハートは、ファルター誌の取材でその作品が本物のバスキアでないことを知り、「(ヘラーは)私に嘘をついた、信じられない 」とショックを受けていた。 

ブッフハートはARTnewsにもコメントを寄せた。「2016年6月1日に行われたヘラーへのインタビューで、彼は、ドローイングの小片が入ったフレームの製作はバスキアによるもだのと話しています。それに対して、私は認証したと言ってはいません」 

TEFAFでは売れなかったこの作品は、2018年、ウィーンのアーティスト・マネージャー、アミール・シャリアットが顧客のために80万ユーロで購入している。 

ヘラーは、売買契約書にはバスキアの作品という証明書は出していないと主張し、彼の弁護士は、バスキアのスケッチと(ヘラー作の)フレームは別個のものとして考えていたと声明を出している。 

シャリアットは、「ヘラーはフレームもバスキアのものと言った」と、この弁明をはねつけた。 

ヘラー側は、偽造の疑いはないと反論しつつも、その後作品を買い戻している。(翻訳:編集部) 

*from ARTnews  

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