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大英博物館、パルテノン神殿の大理石彫刻をギリシャに返還へ。世界に広がる略奪美術品返還の動き

大英博物館は、パルテノン神殿の大理石彫刻の一部をアテネに返還するため、ギリシャ政府と交渉中であることを明らかにした。

大英博物館で展示されている、パルテノン神殿の大理石彫刻。Photo: Nicolas Economou/Nurphoto Via Getty Images

大理石彫刻は、スコットランド人貴族のエルギン卿によってアテネのパルテノン神殿から剥奪された後、1832年から大英博物館で展示されている。これらの返還について、同博物館とギリシャ政府が数ヶ月にわたって話し合いを行っていたと先月、ギリシャの新聞Ta Neaが報じた。 

大英博物館のジョージ・オズボーン会長は、何世紀にもわたる論争を解決するための取引を行う意思を示していたが、会長も同館の評議員も、具体的に話し合いが始まったことは認めていない。 

1月3日、ブルームバーグは、オズボーンとアテネのアクロポリス博物館が、「数年間の交換条件で、大理石彫刻の一部をアテネに返還する」貸与契約を進めていると報じている。匿名の情報筋によると、契約は物品交換が含まれる可能性があり、オズボーンは、パルテノン神殿の彫刻の石膏模型展示を検討しているそうだ。 

大英博物館の広報担当者は、ガーディアン紙の取材に対して、「我々は、ギリシャの友人と新しいパルテノン神殿のパートナーシップを積極的に模索しており、新年を迎えて建設的な議論が続いています」と答えた。 

略奪された美術品の所有権をめぐる議論が世界的に高まる中、大英博物館がギリシャに大理石彫刻を返還するよう圧力が強まっている。 イギリス政府は、同博物館のコレクションに関する決定は法的権限の範囲外であり、彫刻については、エルギン卿が19世紀にギリシャを占領したオスマン帝国から許可を得て、合法的に入手したと主張している。 

大英博物館は声明で、「当館は、人類が創り出したユニークな物語を伝える、素晴らしいコレクションを散逸させるつもりはありません。世界中の国やコミュニティと、前向きで長期的な新しいパートナーシップを求めており、もちろんそれはギリシャを含みます」とコメントしている。 

パルテノン神殿の大理石彫刻は、ヨーロッパ各地の博物館に散逸しているが、徐々にギリシャに戻りつつある。2022年5月、イタリア政府は、シチリアの美術館から貸与されているパルテノン神殿の東側の壁部分の彫刻をアテネに戻すと発表した。そして、パレルモのアントニオ・サリナス考古学博物館は4年間の貸与契約の一環として、チュニックから覗く女神アルテミスの足の彫刻をギリシャに返還している。 

最近では、バチカン政府が、バチカン美術館に収蔵しているパルテノン神殿の3つの破片を返還すると発表した。政府はその中で、返還はフランシスコ法王からギリシャ正教への「寄付 」と表現し、「キリスト教の教派を超えた結束の道に従おうとする法王の、誠実な願いの具体的なしるしです」と述べている。(翻訳:編集部) 

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