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MET理事から押収した略奪美術品が中国に返還。「文化財は異なる国や文化をつなぐ重要な架け橋」

5月9日、ニューヨーク・マンハッタン地区検事局は、350万ドル(約4800万円)相当の略奪由来の石棺の彫刻2点を中国に返還したとプレスリリースで発表した。

中国に返還された石彫と、中国大使館の黄平総領事。Photo: Courtesy Huang PingPhoto: Courtesy Huang Ping

重さ1000ポンド(450キロ)を超えるこの2つの彫刻は、ニューヨークメトロポリタン美術館の理事であるシェルビー・ホワイトのコレクションから押収された89点の古美術品のうちのひとつ。同美術館に1998年から貸し出されており、1つは展示されていたが、もう1つは倉庫に保管されていた。

マンハッタン地区検事アルヴィン・L・ブラッグは声明で、「これら2つの素晴らしい古美術品は盗難品で、そのうち1つは、30年近く展示されないままでした。非常に残念なことです。これらの作品のディテールは驚くほど美しく、極めて貴重といえるでしょう」と述べている。

彫刻は、悪魔に勝利する善良な悪魔、番犬、鳥の足を持ち羽毛のマントをまとった仮面の管理人など、ゾロアスター教にまつわる場面が描かれている。

検察の古物売買課は、この遺物は7世紀のもので、1900年代初頭に中国から略奪され、密輸されたものであることを突き止めた。その後、石棺からのこぎりで切断され、後にホワイトに売却されたという。

当局が押収した89点は10カ国から集めたもので、その価値は約6900万ドル(約93億円)にものぼるという。当局がホワイトのコレクションから作品を押収するのは、今回が初めてではない

石棺の彫刻は、9日にニューヨークの中国領事館で行われた引き渡し式で披露された。今後、中国の文化財管理局に移管される予定だ。

中国大使館の黄平総領事は声明で、「文化財は、人間の知恵と創造性を具現化したものです。そして、過去と現在、異なる国や文化をつなぐ重要な架け橋でもあります。だからこそ、文化財に対する犯罪の取り締まりを神聖な使命と考えるのです」とコメントしている。(翻訳:編集部)

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