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マイケル・ジョーダンの伝説的シューズ6足がオークションへ。ブルズを優勝に導いた「コレクターズアイテムの最高峰」

マイケル・ジョーダンがNBAファイナルで優勝を勝ち取ったときのシューズ6足が、サザビーズのプライベート・セールに出されることが2月28日にドバイで公表された。日本円で億単位の値がつくと予想されている。

プライベート・セールに出される6足のエアジョーダン。いずれも、90年代にNBAファイナルで実際に着用されたもの。Photo: Courtesy Sotheby's

マイケル・ジョーダンのシューズはスニーカーコレクターにとって《モナリザ》級!?

プライベート・セールに出されるエアジョーダンのバスケットシューズは、「ダイナスティ・コレクション」と名付けられている。1990年代にマイケル・ジョーダンがNBAファイナルに6回出場したときに着用されたもので、ジョーダンは6回ともシカゴ・ブルズを優勝に導き、MVPを受賞した。6足のシューズデザインを手がけたのは、ナイキのティンカー・ハットフィールドだ。

セールのニュースを最初に報じた米ウォール・ストリート・ジャーナル紙のメンズファッションコラムニスト、ジェイコブ・ギャラガーは、「この6足は、《モナリザ》と、ダビデ像と、モネの連作《睡蓮》をひとまとめにしたようなものだ」と書いている。

サザビーズのストリートウェア&モダン・コレクティブルズ部門の責任者、ブラーム・ワクターは、「唯一無二の聖杯」という表現で、この品がコレクターズアイテムの最高峰であることを伝えている。というのは、このシューズコレクションにはNBAチャンピオンシップにおける歴史、スタイル、そしてマイケル・ジョーダンがバスケットボールの殿堂入りを果たしたという途方もない要素が凝縮されているからだ。

サザビーズの声明で、ワクターはこう述べている。「伝説的な6回のNBAファイナルで着用されたシューズは、シカゴ・ブルズの黄金期を作りました。マイケル・ジョーダンのレガシー、圧倒的な強さとスーパースターとしての人気が詰まったこのコレクションが、ポップカルチャーとバスケットボールに圧倒的な影響力を持つことは明らかです」

シカゴ・ブルズ時代を描いたドキュメンタリーの人気が価格を押し上げる

ジョーダンのサインに加え、1993年のエアジョーダン8には、シカゴ・ブルズ対フェニックス・サンズの試合の最終スコアと「Our LAST Fucking Game!」という言葉が書かれている。1991年のエアジョーダン6は、ソール部分にひび割れと黄ばみがある。

サザビーズによると、今回出品されるのは「これまでにマーケットに出たエアジョーダンの中で、最も貴重で重要なコレクション」だという。

ある専門家はウォール・ストリート・ジャーナル紙の取材に、コレクションがいくらで売れるかを見積もるのは難しいとしながらも、最近ジョーダンのメモラビリア(直筆サイン入りの品や使用済みの用具などのグッズ)への関心が急上昇し、また希少なスニーカーに驚くような値段がついていることから、1000万ドル(約13億6000万円)をはるかに超える可能性もあると答えている。

ジョーダンへの関心が高まっているのは、シカゴ・ブルズの選手としてプレーした最後のシーズンを描いた10部作のドキュメンタリー、『マイケル・ジョーダン:ラストダンス』(ESPN制作)によるところが大きい。2020年に批評家から絶賛され、プライムタイム・エミー賞を受賞したこのドキュメンタリーで紹介されたシューズも、「ダイナスティ・コレクション」に含まれている。

投資対象になったスニーカーに金融メディアも注目

2021年に147万ドルで落札された、1984年のレギュラーシーズンにジョーダンが着用していたナイキのシューズ。Photo: Courtesy Sotheby’s

希少価値の高いスニーカーの二次流通市場は、株式や債券、美術品に代わる投資対象として、コロナ禍で熱い視線を送られるようになった。

『マイケル・ジョーダン:ラストダンス』がESPNで放送される数カ月前の2020年1月、US版ARTnewsのクリスティーナ・ビンクリーは、サザビーズの2019年7月のオークションで100足の古いスニーカーが129万ドル(約1億7000万円)で落札され、「中でも1972年のナイキのトラッククリートは、それまでの記録の2倍を上回った」ことを伝えた。落札したカナダの投資家マイルズ・ナダルは、トロントにある自らの私設博物館にシューズを展示する予定であるとし、「スニーカーカルチャーとそのコレクションがブレイクする日は近いと思う」とサザビーズに語っていた。

このときの落札価格の記録は、ジョーダンのメモラビリア3点がオークションに出されると、たちまち塗り替えられた。2021年10月、ジョーダンが1984年のレギュラーシーズンに履いていたナイキのシューズのうち、最も古いサイン入りエアシップがサザビーズのオークションで147万ドル(約2億円)で落札。同年、ニューヨークのオークションハウス、ヘリテージ・オークションズでは、ノースカロライナ大学で活躍していたときのジャージが138万ドル(約1億9000万円)で落札。2022年のサザビーズのオークションでは、1998年NBAファイナルの開幕戦で着用したジャージが1010万ドル(約13億円)で落札された。

オークションハウスやStockXのようなオンライン転売業者の間で価格が高騰していることには、金融メディアも注目している。2021年2月、米ブルームバーグ ビジネスウィーク誌は特集記事で、「スニーカーの熱狂的コレクターのおかげで、エアジョーダンやイージー(カニエ・ウエストアディダスの提携によるスニーカーブランド)は、投資対象の資産になった」と断言した。

ドバイでの「ダイナスティ・コレクション」のプライベート・セールの後には、エアジョーダンの誕生ストーリーを実話に基づいて映画化した『Air/エア』の公開が4月5日に控えている(日本公開は4月7日)。この映画は、1980年代にナイキでバスケットボール部門の立て直しを命じられたソニー・ヴァッカロが、まだ無名のマイケル・ジョーダンを見いだし、一発逆転の賭けに出る姿が描いている。監督はベン・アフレックで、アフレックのほかマット・デイモンやヴィオラ・デイヴィスなどが出演している。(翻訳:清水玲奈)

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