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《オランピア》が今秋アメリカ初上陸。「マネ/ドガ」展がパリからNYへ巡回

この秋、エドゥアール・マネの名画《オランピア》(1863)が、初めてパリからニューヨークへと旅立つ。メトロポリタン美術館で行われる特別展「マネ/ドガ」で展示されるためだ。同展には日本からも有名作品が貸し出される。

エドゥアール・マネ《オランピア》(1863)。Photo: Musée d'Orsay, Paris (RF 644). Photo ©RMN-Grand Palais / Patrice Schmidt / Art Resource, NY

19世紀後半のフランスを代表する2人の画家、エドゥアール・マネエドガー・ドガの友情やライバル関係を浮き彫りにする「マネ/ドガ」展。現在パリオルセー美術館で7月23日まで開催中の同展は、その後ニューヨークへ巡回し、9月24日にメトロポリタン美術館(以下、メット)で開幕する。

アーティスト同士の俊烈な関係性を通してフランス絵画の変革期を考察するこの展覧会について、メトロポリタン美術館のマックス・ホライン館長は声明で次のように述べている。

「マネとドガは、西洋美術の中で最も挑発的かつ高く評価される作品を生み出しました。今回の特別展は、メットとオルセー美術館が所蔵する比類なき作品群に加え、他の美術館や個人コレクターから貸し出された50を超える名作を集めることで、2人の巨匠への新しい視点を提示するものです」

同展では、ともに裕福な家に生まれたマネとドガの出自や交流、社会的な文脈に重点を置きながら、160点の絵画とドローイングをテーマや年代に沿って展示する。オルセー美術館からは、《オランピア》のほか、修復を終えたドガの《ベレッリ家の肖像》およびドガがマネを描いた2点のドローイングがメットに貸し出される。

この2点に、やはりマネを描いたメット所蔵のドローイング2点を加えた4点は、日本の北九州市立美術館が所蔵するドガの《マネとマネ夫人像》とともに展示される。《マネとマネ夫人像》は、夫人の顔の描き方が気に入らなかったマネが、顔のあたりから右側を切り取ってしまったことで知られる。この一件で 2人の友情には致命的な傷がついたが、それで終焉を迎えたわけではなく、ドガはマネの死後もずっとマネを描き続けた。

「マネ/ドガ」展は印象派の誕生前からスタートし、1860年代後半に出会った2人の画家の姿と重ねながら、その創成期を一気に見せていく。1832年に生まれたマネは、《オランピア》や《草上の昼食》などの傑作で早くから頭角を現した。マネより2歳年下のドガとともに、2人は印象派に分類されることが多いが、彼らは「リアリスト」を自称する異質な存在で、印象派の範疇にとどまらないスタイルの持ち主だった。

マネは、緩やかな筆致とコントラストのはっきりした色彩、独特な構図を特徴とする。一方のドガはパステル調の色彩で、動きや一瞬の表情を捉えることを追求した。2人に共通するテーマには、競馬場や娼婦、バーの酔客など、当時は不道徳とされたものも多い。世間に認めてもらうことを拒否はしなかっただろうが、彼らにとってそれは必要ないものだった。

同展の共同キュレーターを務めるメットのヨーロッパ絵画部門ヘッドキュレーター、ステファン・ウォロホジアンはこう語っている。

「マネとドガの間で交わされた書簡はほとんど残っていませんが、2人の重要な作家が互いをどう評価していたかは彼らの作品が物語っています。幅広い作品を集めた今回の特別展は資料価値も高く、彼らの興味深い関係性を、作品を通して知ることのできる貴重な機会だと言えます」(翻訳:石井佳子)

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