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春の京都で写真表現の今を体験! 「KYOTOGRAPHIE 2024」で必見の7展示を一挙紹介

春の京都を代表する芸術祭、「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2024」が開催中だ(5月12日まで)。今年は12会場で13の展覧会が開催されている。その見どころを紹介しよう。

Claudia Andujar, Susi Korihana thëri, Catrimani, 1972–1974. Instituto Moreira Salles Collection © Claudia Andujar / Hutukara Yanomami Association

ひとつの表現媒体であり、芸術的手法である「写真」への理解を深め、その可能性を伝えることを目的に、京都の街を舞台に開催される「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭(以下KYOTOGRAPHIE)」が開催中だ。

今回は「SOURCE(源)」をテーマに、13の展覧会が行われている。KYOTOGRAPHIE共同創設者、共同ディレクターのルシール・レイボーズと仲西祐介はテーマについて次のように述べる。

「源(SOURCE)は“初め”であり、“始まり”であり、すべてのものの“起源”である。 それは生命の創造であり、衝突が起きたり自由を手に入れたりする場所であり、 何かが発見され、生み出され、創造される空間である。 人生の分岐点にかかわらず、私たちは岐路に立っており、原点に戻るか、 新しいことを始めるかの間で揺れ動いている。 生命、愛、痛みのシンフォニーが響き渡るのは、この神聖な空間からなのだ。 その源で、無数の機会が手招きし、何か深い新しいものを約束してくれる」

KYOTOGRAPHIEは、千年の都京都ならではの古今織り交ぜたロケーションも大きな魅力だ。今年は二条城をはじめ、老舗の帯匠・誉田屋源兵衛、明治39年に建てられた辰野金吾建築、旧日本銀行京都支店を利用した京都文化博物館、大正15年に室町随一の豪商「四代目 井上利助」が贅の限りを尽くして完成させた町家建築「八竹庵(旧川崎家住宅)」などが会場に選ばれた。作品と、京都の歴史的建造物とのコラボレーションも楽しもう。

以下、今年のKYOTOGRAPHIEの見どころを紹介する。

1. クラウディア・アンドゥハル「ヤノマミ」(京都文化博物館 別館)

Claudia Andujar, Collective house near the Catholic mission on the Catrimani River, Roraima state, 1976. Instituto Moreira Salles Collection © Claudia Andujar / Hutukara Yanomami Association

スイス出身で、ブラジル移住後に写真家としてのキャリアをスタートさせたクラウディア・アンドゥハルは、ブラジルのアマゾンに住む先住民、ヤノマミ族を撮ったシリーズを紹介している。アンドゥハルは50年以上に渡ってヤノマミ族の権利と主権を守るためにヤノマミ族と共に活動を続けてきた。ヤノマミのシャーマンであり人々の代弁者であるダビ・コペナワの言葉や、ヤノマミ族のアーティストたちによるドローイング、映像作品を通して、この共同作業の物語が語られる。

2. ヴィヴィアン・サッセン「PHOSPHOR|発光体:アート&ファッション 1990–2023」(新聞ビル地下1階《印刷工場跡》)

Presented by DIOR
In collaboration with the MEP - Maison Européenne de la Photographie, Paris 
Eudocimus Ruber, from the series Of Mud and Lotus, 2017© Viviane Sassen and Stevenson (Johannesburg / Cape Town / Amsterdam)

DIOR、Miu Miuなど数々のメゾンとのコラボレーション経験を持つヴィヴィアン・サッセン。ファッション写真とアートフォトの垣根を軽やかに飛び越えながら独自の表現を切り拓いてきた作家によるパリ・ヨーロッパ写真美術館(MEP)での個展が京都に巡回。鮮烈な色彩、強いコントラスト、被写体の抽象的なポージングが特徴の、シュルレアリスム的な作品世界を展開している。

3. From Our Windows 川内倫子「Cui Cui + as it is」、潮田登久子「冷蔵庫+マイハズバンド」(京都市京セラ美術館 本館 南回廊 2階)

Supported by KERING’S WOMEN IN MOTION
Untitled, from the series as it is, 2020 ©︎ Rinko Kawauchi

ケリングがアートとカルチャーの分野で活躍する女性に光を当てることを目的として2015年に発足した、「ウーマン・イン・モーション」の支援により開催されているのは、1972年生まれの川内倫子と1940年生まれの潮田登久子の世代を超えた2人の女性写真家による対話的な展覧会。同会場では川田喜久治の個展も開催。川田は奈良原一高、東松照明、細江英公、佐藤明、丹野章らと共に写真エージェンシー「VIVO」(1959-61年)を設立。敗戦という歴史の記憶を記号化するメタファーに満ちた作品「地図」を1965年に発表し、現在まで、常に予兆に満ちた硬質で新しいイメージを表現し続けている。

4. ジェームス・モリソン「子どもたちの眠る場所」(京都芸術センター)

Supported by Fujifilm
Nemis, Montreal, Canada, from the series Where Children Sleep ©︎ James Mollison

ケニア生まれ、イギリス育ちのジェームス・モリソンは、現在進行中のプロジェクト「Where Children Sleep(子どもたちの眠る場所)」を披露した。これは世界各地の子どものポートレートと、その子どもの寝室の写真を並べて展示するもので、子どもたちの生活の複雑な現実を探求している。

6. ティエリー・アルドゥアン「種子は語る」(二条城 二の丸御殿 台所・御清所)

Presented by Van Cleef & Arpels
In collaboration with Atelier EXB
FABACEAE — Medicago arborea L. Moon trefoil © Thierry Ardouin / Tendance Floue / MNHN

写真家集団「Tendance Floue」の共同設立者でもあるフランスの写真家、ティエリー・アルドゥアンは、人間とその環境とのつながりをテーマにしたプロジェクト「Seed Stories」を紹介。パリの国立自然史博物館の所蔵品などの種子を科学機器を用いて形の多様性と美しさを浮かび上がらせ、「偉大な旅人」である種子の歴史を描き出していく。

7. ヨリヤス「カサブランカは映画じゃない」、「KIF KIF KYOTO」(ASPHODEL、出町桝形商店街)

「カサブランカは映画じゃない」はSupported by agnès b.
©︎ Yoriyas (Yassine Alaoui Ismaili)

モロッコの写真家、振付師のヤシン・アラウイ・イスマイリ(ヨリヤス)は2カ所で展示を行っている。ASPHODELでは、モロッコ、特に自身が住んでいるカサブランカやアフリカのありのままの日常を撮影した作品から、その地での様々な社会的変化について提示する。出町桝形商店街 ―DELTA/KYOTOGRAPHIE Permanent Spaceでは、アーティスト・イン・レジデンスの形で2023年11月に京都に数週間滞在し、鴨川周辺の人々や風景、ストリートの若者、出町桝形商店街の人々を撮影した新作を発表している。

また、会期中は京都市内のギャラリーやカフェ、寺社仏閣、屋外などで120を超える展示が行われるサテライト・イベント「KG+」や、国際的なミュージック・フェスティバル「KYOTOPHONIE」も開催されている。

KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2024
会期:4月13日(土)~ 5月12日(日)
会場:京都市内各所

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