トレビの泉を環境活動家が真っ黒に。北イタリアの洪水による文化財への被害に抗議
5月21日、イタリアの環境活動団体「ウルティマ・ジェネラツィオーネ」の活動家8人が、ローマの観光名所、トレビの泉に炭を溶かした液体を投げ入れ、黒く染める抗議行動を行った。
この抗議活動は大勢の観光客の前で15分間行われ、その後活動家全員が逮捕された。トレビの泉の噴水部分に破損や汚染はないが、水を抜いて洗浄する予定だ。
ロベルト・グアルティエリ・ローマ市長は、21日のFacebook投稿で、「多くの労力と公的費用を伴う複雑な清掃作業が必要になるでしょう。迅速な対応をする警察がいなければ、被害が拡大する危険性がありました」と、抗議行動を非難した。
しかし、トレビの泉は通常、週に1度清掃されており、長期的な被害や大きなコストは発生しないだろう。
この抗議行動は、北イタリアのエミリア・ロマーニャ州で今月発生した洪水に対して行われたものだ。年間降水量の半分の量が36時間で降る豪雨に見舞われ、現在12人以上が死亡している。
この洪水で、同州の複数の美術館が浸水し、サンタ・マリア・デル・モンテの修道院の一部が崩壊したほか、図書館は多数の本を失っている。抗議者たちは、21日のプレスリリースで、気候変動を緩和するために何かをしない限り、イタリア全体の文化遺産が危険にさらされると主張した。
エミリア・ロマーニャ州は、家を失った3万6000人の市民や、インフラや農業への甚大な被害、経済的に重要なバカンスシーズンへの対処を優先しており、文化遺産に対する被害の全容解明はまだ行っていない。
ウルティマ・ジェネラツィオーネの19歳の活動家マッティアは、プレスリリースで以下のように述べている。
「エミリア・ロマーニャ州で起きた悲劇は、干ばつと激しい洪水が交互に起こるという、人類を待ち受ける暗い未来への警告です。このような事態を防ぐためには、化石燃料の使用を止めるしかありません。しかし、私たちの政府は、化石燃料産業に毎年数百億ユーロの公的資金を与えることを臆面もなく続けています。それらの補助金を廃止するよう、政府に圧力をかけたいと考えています」
イタリアは、イギリスなど欧州8カ国の中で最も多い84億ユーロを化石燃料プロジェクトやプラントに投入している。ロイター通信によると、最近、欧州8カ国と連名で海外の化石燃料プロジェクトに対する公的支援を終了する誓約書に署名することを合意したにもかかわらず、土壇場でその誓約書の内容を変更しようとしている。(翻訳:編集部)
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