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ウクライナ館の展示は予定通り。ヴェネチア・ビエンナーレ主催者が発表

世界で最も権威のある美術展、ヴェネチア・ビエンナーレの主催者が、ロシアの侵攻にかかわらず、ウクライナ館は予定通り4月に開館すると発表した(第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の会期は2022年4月23日~11月27日)。

2022年のヴェネチア・ビエンナーレは4月に開幕 Courtesy Venice Biennale

ロシアとの戦闘でウクライナの主要都市が壊滅的な打撃を受ける中、何百万人もの市民が脱出を試み、現地に残る多くの市民が戦禍にさらされるなど人道上の危機が生じている。2月、出展予定のウクライナ代表アーティスト、パブロ・マコフは、自分を含むウクライナ館関係者のイタリア渡航の準備を中止せざるを得ないと述べた。現状、ウクライナの首都キーウ(キエフ)を発着するすべての便は欠航となっている。

「危険が差し迫っているわけではないが、状況は危機的で、刻々と変化している。現在、命の危険があるため、ウクライナ館のプロジェクトを続けることはできない」。マコフとキュレーターのリザベタ・ジャーマン、マイラ・ランコ、ボリス・フィロネンコは、こうツイートしていた。

このツイートの時点で、マコフは家族とともにハリコフで避難生活を送っており、キュレーター3人はキーウ(キエフ)に残っていた。両都市とも、現在ロシア軍による激しい砲撃を受けている。

3月最初の週末、ビエンナーレ側はウクライナ館の関係者と作品をヴェネチアへ安全に移動させるため「あらゆる方法で協力しており、今後も協力を続ける」と述べたが、移動をどう実現するのかは明言しなかった。ウクライナ館の当初の計画では、壁に三角形に設置した78個のブロンズ製の漏斗(ろうと)から、水が滝状に流れ落ちるマコフのインスタレーション《The Fountain of Exhaustion(枯渇の泉)》(1995)をアップデートした新作を展示すると発表していた。

3月第1週には、プーチン大統領によるウクライナ侵攻に抗議して、ヴェネチア・ビエンナーレのロシア館で展示を予定していたアーティストのアレクサンドラ・スハレワとキリル・サフチェンコフ、キュレーターのライムンダス・マラサウスカスが参加を辞退している。

ロシア国内でも、戦争に抗議して美術館の要職を退く動きが相次いでいる。3月初めにモスクワのVAC財団で芸術監督を務めるフランチェスコ・マナコルダが、ウクライナでの戦争を理由に辞任したことを明らかにした。また、やはりモスクワにあるプーシキン美術館のウラジーミル・オプレデレノフ副館長も辞任を発表。ロシア当局が反戦デモや言論の自由を弾圧する中、戦争への不支持を訴える美術関係者が強制的に職務から退かされているのではないかとの疑いも出ている。(翻訳:清水玲奈)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年3月7日に掲載されました。元記事はこちら

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