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  • 2023.06.30

今週末に見たいアートイベントTOP5: 火薬ドローイングから新作まで網羅するスペクタクルな「蔡國強展」、森田子龍と大山エンリコイサムの2人展「反復の圏域 -Repetitive Sphere-」

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

蔡國強「原初火球 The Project for Projects」P3 art and environmentでの展示風景 1991年  撮影:萩原義弘 提供:蔡スタジオ

1. 東弘一郎 個展「HANMA」(アートフロントギャラリー)

東弘一郎《都市の半間》 2023 / 半間(欅、桐)自転車、鉄 / h2000x4000x1450mm

山車を支える「半間(車輪)」を題材にしたインスタレーション作品

「人が動かす彫刻」をテーマに作品を制作する東弘一郎。現在、東京藝術大学大学院博士課程に在学しながら、アートイベントへの出品や芸術祭の総合ディレクターを務めるなど精力的に活動している。東はこれまで、各地でのフィールドワークを元に、その地域で捨てられた自転車を使った作品を手がけてきた。自転車にもう一度命を吹き込むことで大量廃棄という問題を浮き彫りにすると同時に、大量生産の陰で密かに消えていくものづくりの現場に焦点を当てている。

本展では、新作の体験型インスタレーション作品を発表。ユネスコの無形文化財に指定されている関東三大祭のひとつ「佐原(千葉県香取市)の大祭」で、各地区から繰り出される山車を支える「半間(車輪)」を題材にしている。リサーチを通じて知った土地の風習や、しきたりに関わる人々の思いなど捉えきれないものを、作品として昇華させたという。

東弘一郎 個展「HANMA」
会期:6月9日(金)~ 7月16日(日)
会場:アートフロントギャラリー(東京都渋谷区猿楽町29-18 ヒルサイドテラス A棟)
時間:12:00 〜 19:00(土曜と日曜は11:00 〜 17:00)


2. 色彩について:流 麻二果、ミヒャエル・テンゲス、ぺーター・トレンス(タグチファインアート)

Photo: 加藤健

色彩を主題にして制作活動を行う3人のアーティストを紹介

色彩を主題にして独自の絵画表現を探求するアーティスト、流麻二果、ミヒャエル・テンゲス、ペーター・トレンスによる3人展。

1952年生まれのテンゲスは、彫刻的ともいえる厚みまで塗り重ねられた圧倒的な絵の具の量と多様な色彩を用いるのが特徴。それぞれの色彩は独立した個々の筆致として重ねられるため、先に塗られた色彩が完全に覆われずに、ところどころ見え隠れする。平面と奥行きにおいて色彩の配置を考慮し、三次元的に構築する。

1954年生まれのトレンスは、本展が日本で初の展示機会となる。彼の作品は一見モノクローム絵画に見えるが、無数の層にさまざまな色彩を含んだ筆致が周到に積み重ねられ、それによって画面全体が構成されている。

「色彩の画家」と呼ばれる流は、独自の手法で淡いヴェールを重ねたような作品を制作するほか、日本固有の色彩の研究も行っている。本展では、最新シリーズ「In Between」から数点を発表。 時間的な意味での間、空間的な意味での間、生と死の境界で「死を意識したときに感じる強烈な生命感や、その瞬間に現れる鮮やかな光、あるいは輝く光や色彩の感覚」を表現しようとした作品だという。

色彩について:流 麻二果、ミヒャエル・テンゲス、ぺーター・トレンス
会期:6月10日(土)〜 7月22日(土)
会場:タグチファインアート(東京都中央区日本橋本町2-6-13 山三ビルB1F)
時間:13:00 〜 19:00


3. Ginza Curator’s Room #004『反復の圏域 -Repetitive Sphere-』(思文閣銀座)

Enrico Isamu Oyama, FFIGURATI #495, 2023, Aerosol paint, sumi ink and latex paint on canvas, 150 x 100 cm, Artwork ©︎Enrico Isamu Oyama Studio, Photo ©︎Shu Nakagawa

森田子龍と大山エンリコイサムの2人展を山峰潤也がキュレーション

思文閣銀座で昨年からスタートした、ゲストキュレーターを招聘する展覧会シリーズ「Ginza Curator's Room」の第4回目となる本展は、東京都写真美術館金沢21世紀美術館水戸芸術館での学芸員勤務を経て、インディペンデント・キュレーターとして活動する山峰潤也が担当。書の再解釈と独自の表現を志向し、現代美術史に大きな足跡を遺した森田子龍(1912‐1998)と、ストリートアートの一領域であるエアロゾル・ライティングを再解釈したモティーフ「クイックターン・ストラクチャー」を起点に活動する大山エンリコイサム(1983-)による2人展を企画した。

本展では、森田の「圓」を書いた5点と、その反復と差異に呼応するかのようにクイックターン・ストラクチャーを変奏した大山の新作5点を発表する。活動ジャンルや時代背景は異なるものの、書くことと描くこと、身体性とドローイングの関係など、多数の共通点をもつ2人の「圏域」の重なりを楽しんでもらいたい。

Ginza Curator’s Room #004『反復の圏域 -Repetitive Sphere-』
会期:6月24日(土)〜 7月8日(土)
会場:思文閣銀座(東京都中央区銀座5-3-12 壹番館ビルディング)
時間:10:00 〜 18:00


4. ホーム・スイート・ホーム(国立国際美術館)

潘逸舟《ほうれん草たちが日本語で夢を見た日》2020 年 , 神戸アートビレッジセンター サウンドインスタレーション、ダンボール箱 , Dimensions variable 撮影:表恒匡 ©Ishu Han 展示風景:ART LEAP 2019「いらっしゃいませようこそ」神戸アートビレッジセンター(兵庫) 2020 年 写真提供:新開地アートひろば(旧称:神戸アートビレッジセンター)

現代美術作家たちの作品を通じて「ホーム」とは何かを考察する

「ホーム」をテーマに、国内外で活躍する8名の現代美術作家たち(アンドロ・ウェクア、竹村京、潘逸舟、マリア・ファーラ、石原海、鎌田友介、ソンファン・キム、リディア・ラウメン)が参加する展覧会。歴史、記憶、アイデンティティ、場所、家族のあり方・役割等、キーワードに表現された作品群から、私たちにとっての「ホーム」──家、国そして家族とは何か、私たちが所属する地域、社会の変容、普遍性を浮かび上がらせることを試みる。

潘逸舟は、1987年上海で生まれ、現在は東京を拠点に活動する。映像、パフォーマンス、インスタレーション、写真、絵画など多様なメディアを用いて、共同体や個が介在する同一性と他者性について考察する作品を発表している。

鎌田友介は、国家の文化やアイデンティティ形成のツールにもなる建築をテーマに、美術と建築を横断する活動を続ける。近年は、日本占領下の韓国や台湾で作られた日本家屋や、アメリカ合衆国で焼夷弾実験のために作られた日本村の設計などの調査を通じて、異なる歴史的背景と場所において日本家屋が孕んだ多様な意味を描き出すプロジェクトを手がける。

ホーム・スイート・ホーム
会期:6月24日(土)〜 9月10日(日)
会場:国立国際美術館(大阪府大阪市北区中之島4-2-55)
時間:10:00 〜 17:00(金曜と土曜は20:00まで、入場は閉館の30分前まで)


5. 蔡國強 宇宙遊 ー〈原初火球〉から始まる(国立新美術館)

蔡國強「原初火球 The Project for Projects」P3 art and environmentでの展示風景 1991年  撮影:萩原義弘 提供:蔡スタジオ

2000平方メートルを横断する巨大インスタレーションは必見!

火薬を創造的に用いた作品を制作する蔡國強。これまで、神話的で人類学的な壮大な世界観を表した火薬ドローイングやインスタレーション、屋外爆発プロジェクトなど、スケールの大きな制作を手がけ、国際的に高く評価されてきた。

国立新美術館サンローランの共催となる本展は、蔡が30年前に開催した個展「原初火球」を彼の芸術における「ビッグバン」の原点と捉え、この爆発を引き起こしたものは何であるか、その後今日まで何が起こったかを探求する。蔡が作家として歩み始めた中国時代、アーティストとしての重要な形成期である日本時代、そしてアメリカや世界を舞台に活躍する現在までの創作活動と思考を、日本初公開の新作を含む約50件の作品群で紹介する。蔡自らが展示構成を手掛けた。2000平方メートルの展示室は壁がすべて取り払われ、ふたつの大規模なインスタレーション〈原初火球〉と《未知との遭遇》を展示。それらを取り囲むように大小さまざまな作品が並ぶ。

蔡國強 宇宙遊 ー〈原初火球〉から始まる
会期:6月29日(木)〜 8月21日(月)
会場:国立新美術館(東京都港区六本木7-22-2)
時間:10:00 〜 18:00(金曜と土曜は20:00まで、入場は閉館の30分前まで)

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