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祖霊を祀る像「ヴィガンゴ」がイリノイ州立博物館からケニアに返還。「元の場所から引き離してはいけないもの」

アメリカのイリノイ州立博物館は、ケニア海岸部のエスニックグループ、ミジケンダ諸族に関連する37点の略奪文化財を、同国の国立博物館組織に返還した。

ケニアに返還された木彫りの記念像「ヴィガンゴ」。Photo: Dannyl Dolder/Courtesy Illinois State Museum

今回イリノイ州立博物館から返還された「ヴィガンゴ」と呼ばれる木彫の像は、祖先の霊を記念する神聖なものと考えられている。同博物館を管轄するイリノイ州当局のプレスリリースによると、返還された37点の記念像は、1980年代にケニアのミジケンダの村から持ち出されたもの。

その後、正式な法的権利のないままディーラーやコレクターの間で売買され、最終的にアフリカの美術品として同博物館に寄贈された。専門家によると、こうしたケニアの祖霊を祀る像は、もとあった場所から移動させるべきものではないとされる。

寄贈当時、イリノイ州立博物館の関係者は、作品がミジケンダの村から不法に持ち出されたことを知らなかったという。同博物館では、ケニア政府にヴィガンゴの関連品を返還する活動を進めており、今回の返還もその一環として行われた。

2006年以来、さまざまな略奪文化財の返還に携わってきた同博物館の人類学担当学芸員ブルック・モーガンは、今月ナイロビを訪問。アメリカの他の博物館や大学関係者とともに、ケニア国立博物館のヴィガンゴ保存計画に関連する返還活動について、ケニア政府関係者と会談した。

モーガンは声明で、ヴィガンゴは「それを創り出した人々から譲り受けることのできないもの」だと説明し、こう付け加えた。「正当な所有者からヴィガンゴを引き離せば、そのコミュニティ全体の精神的な幸福を害することになる」(翻訳:石井佳子)

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