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スルタン・スード・アル・カセミ(Sultan Sooud Al Qassemi)

拠点:UAE・シャルジャ
職業:起業家、フィランソロピスト(Barjeel Art Foundation)
収集分野:近現代のアラブ美術

相続と起業で資産を築いたスルタン・スード・アル・カセミは、中東の政治や社会に関するツイートが人気で、2011年には米タイム誌のベスト・ツイッター・フィードに選ばれた。彼はまた、インターネットのガバナンスに関する組織のメンバーであり、MITメディアラボのディレクターズフェローでもある。主な収集対象はアラブの現代アートで、US版ARTnewsの取材に対し、「美術品の収集と展示は、中東の発展に関する私の社会的コメントの延長線上にある」と述べている。「アラブの春」運動の重要人物とされる彼は、自らが生まれ育った地域の紛争について、忌憚なく意見を述べることで知られている。

アラブ首長国連邦のシャルジャでアル・カセミが設立したバルジール芸術財団は、中東のモダニズムを中心とした近現代の作品を約1200点所蔵している。中でも、マフムード・サブリの《The Hero》(1962)、マルワンの《Untitled (Kopf)》(1975-76)、ハメド・エワイスの《Le Gardien de la Vie》(1967-68)などは注目すべき作品だ。最近、同財団はイラクの画家ディア・アル・アザウィの作品《A Wolf Howls: Memories of a Poet》(1968)を取得。それは、共産主義詩人ムザッファル・アル・ナワブの未発表の詩に基づくもので、イラクのバアス党によるクーデターの余波で息子を失った母親の物語を描いている。

「私がとても大切にしている作品の1つは、1964年にスーダンの画家イブラヒム・エル=サラヒが描いた《The Last Sound》です」と、アル・カセミはUS版ARTnewsに語った。「エル=サラヒはスーダンで最も著名なモダニストの1人で、同国の近代における視覚芸術の発展に多大な貢献をしました。この作品は彼の父親が亡くなった直後に描かれたもので、その魂がこの世から天へ登っていくところを表現しています」

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