ジョン・レノンとアンディ・ウォーホルが使った傷だらけのグランドピアノがオークションに。推定落札価格は最高4億円超
この9月、ジョン・レノンとアンディ・ウォーホルという、20世紀に大きな影響を与えた伝説的アーティスト2人にゆかりのあるグランドピアノが、オークションに出品されることが明らかになった。
オークションはメリーランド州タウソンにあるアレックス・クーパー・オークショニアーズ(ACA)で行われると、同州のニュースサイト、ボルチモア・バナーが伝えている。ACAによると、ジョン・レノンは1978年にニューヨークのボールドウィン・ファクトリー・ストアで、このグランドピアノ「コンサート・グランド・モデルD」を購入した。
レノンは翌年、ピアノを友人のサム・グリーンに譲った。アートディーラーでキュレーターでもあったグリーンは、アメリカにおけるアンディ・ウォーホルの美術館での初個展を、フィラデルフィアのペンシルベニア大学現代美術館で実現した人物だ。ピアノの前面部分にあるボールドウィンのロゴのすぐ上には、「For Sam Love from Yoko and John 1979」と書かれた金のプレートが付けられている。
グリーンは、レノンだけでなくオノ・ヨーコとも親しかった。2人はファイアー・アイランドにあるグリーンの家で過ごすことも多く、レノンはそこでピアノを弾いたり曲を書いたりしていたという。そのうちの何曲かは、1980年に発表された2人のアルバム、『ダブル・ファンタジー』に収録されている。
1983年、グリーンはこのピアノをウォーホルに貸し出す。ウォーホルは、1969年に共同創刊したカルチャー誌「インタビュー・マガジン」のニューヨークのオフィスにピアノを飾っていた。1988年になるとグリーンは、ウォーホルが共同設立したニューヨーク・アカデミー・オブ・アートで「特別なイベント」があるときに使用するため、ピアノを移動させた。
しかし、それはグリーンにとって不幸な決断になった。2000年、当初の目的とは異なり、学生たちが毎日のようにこのピアノを「濫用」していることを知った彼は学校に返却を求めたが、すでにピアノの所有権は学校側にはなかった。学校の地下室に保管されていた他のピアノとともに、ハロルド・カッツという調律師にわずか3000ドル(現在の為替レートで約42万円、以下同)で売却されていたのだ。
グリーンは160万ドル(約2億2700万円)の賠償金を求めて学校を提訴したが、学校側はピアノはグリーンが貸与したのではなく寄贈したものだと主張した。
ニューヨーク・ポスト紙によると、結局このピアノはペンシルベニア州の全寮制進学校マーカースバーグ・アカデミーで発見され、アラバマ州のバディ・ベインという男性がカッツから約10万ドルで買い取っている。そして、グリーンの訴えは棄却された。
ピアノには、エナメル部分のへこみや、灰皿かオイルランプの跡と思われる丸い溶けた跡など、これまでの手荒な扱いが目に見える形で残っている。オークション会社によれば、演奏は可能で、出品前に調律される予定だという。
入札は9月30日から開始され、推定落札価格は200万ドルから300万ドル(約2億8400万から4億2600万円)とされている。(翻訳:石井佳子)
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