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  • 2022.04.01

マリーナ・アブラモヴィッチ、ウクライナ支援オークションでパフォーマンス再演

2022年4月、マリーナ・アブラモヴィッチは、彼女の最も有名なパフォーマンスの一つ《The Artist is Present(作家は在廊中)》を再演する。オークションで参加者を募り、売上はウクライナへの支援金にあてられる。

2010年にニューヨーク近代美術館で開催された、マリーナ・アブラモヴィッチのパフォーマンス作品《The Artist is Present》 Courtesy Sean Kelly Gallery2010年にニューヨーク近代美術館で開催された、マリーナ・アブラモヴィッチのパフォーマンス作品《The Artist is Present》 Courtesy Sean Kelly Gallery

オンライン・アート・プラットフォームのArtsy(アーツィー)を通じてオークションに出品されたのは、アブラモヴィッチの個展が開催されているニューヨークのSean Kelly Gallery(ショーン・ケリー・ギャラリー)で、最終日の4月16日に《The Artist is Present》のパフォーマンス(*1)に参加する権利だ。

*1 来訪者と、沈黙のまま向かい合って椅子に座るパフォーマンス。

パフォーマンスの様子は、写真家のマルコ・アネッリによって撮影される。アネッリは、2010年にニューヨーク近代美術館(MoMA)でこのパフォーマンスが行われた時、アブラモヴィッチの向かいに座るために集まった1500人以上の人々を撮影している。

落札者は、アブラモヴィッチとアネッリのサイン入り額装写真と、2021年に刊行されたアネッリの写真集『Portraits in the Presence of Marina Abramović(マリーナ・アブラモヴィッチに向かい合う人々の肖像)』を受け取ることになる。オークションの入札は3月17日〜3月25日に行われ、一人用と二人用の二つのロットが出品された。売上はすべて、ダイレクト・リリーフ(世界各地で人道支援を行うNPO)によるウクライナ支援活動に寄付される。

ギャラリーオーナーのショーン・ケリーは声明で、「我われはウクライナと連帯し、プーチンの侵略とそれがウクライナの人々に与えている言いようのない苦しみに深く心を痛めている」と述べている。

セルビア人アーティストのアブラモヴィッチは、早くからロシアによるウクライナ侵攻を批判していた。国連は3月24日に、侵攻による民間人の死者は1000人超に上ると発表している。

アブラモヴィッチは2021年10月に、ウクライナの首都キーウ(キエフ)のバビ・ヤール・ホロコースト・メモリアル・センター(第二次世界大戦中にナチスによって2日間で3万3000人以上のユダヤ人が虐殺された場所)に、《Crystal Wall of Crying(クリスタルの涙の壁)》というモニュメント的作品を設置した。

ところが3月初め、この近くにあったテレビ塔がロシアの砲撃を受けて5人が死亡。同センターが新しい博物館として使う予定だった建物も被害を受けた。アブラモヴィッチのモニュメントには損傷がなかったことが確認されている。

ロシアによる一方的な戦争が始まって数日後、アブラモヴィッチはウクライナに連帯を表明するビデオを投稿し、かつてソ連に侵略された旧ユーゴスラビアに生まれたことについて語った。その中で彼女は、ウクライナの人々を「誇り高く、強く、威厳がある」と評し、次のように述べている。

「耐えられないことが起きている今、私は(ウクライナ国民に)全面的に連帯します。ウクライナへの攻撃は私たち全員への攻撃で、人道への攻撃でもあります。必ず止めなければなりません」(翻訳:野澤朋代)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年3月18日に掲載されました。元記事はこちら

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