ARTnewsJAPAN

カナダの高級住宅地で1000年前の先住民の遺跡を発見。魚を捕獲する非常に珍しい仕掛けも

カナダ・ブリティッシュコロンビア州の高級住宅地に近い海岸で、約1000年前に先住民が暮らしていた村の遺跡や、魚を獲るための非常に珍しい仕掛けが見つかった。

ȾEL¸IȽĆEの村で出土した銛先。鋸歯状の細工が施されている(2023年撮影)。Photo: Brian Thom, courtesy of University of Victoria

カナダ・ブリティッシュコロンビア州の州都、ビクトリア郊外にある海岸沿いの公園で、ビクトリア大学の学生らが先住民の村、ȾEL¸IȽĆE(テル-イーチ)の遺跡を発見した。先住民W̱SÁNEĆ族の土地であるこの場所には、かつて250人ほどが暮らしていたとされる。

発掘プロジェクトを率いるビクトリア大学人類学部のブライアン・トム准教授は、発見の一報を伝えたアートニュースペーパー紙の取材にこう答えた

「砂と堆積物に埋もれた巨大な岩壁を発見しました。堆積物などをきれいに取り除いてみると、それが大きなUの字状の構造になっていることが分かりました。潮が引くと、そこでニシンやキュウリウオが捕れるのです」

カナダ政府の職業訓練助成金を受けて行われているこの調査には、学生に加え、先住民の長老や地域住民も参加。ほかにも狩猟・漁労のための生活用具や火床、食物などの遺物を多数発掘している。

現在、先住民の埋葬地や漁場が点在する海岸沿いのこの場所は、コルドヴァ・ベイの高級住宅地に囲まれている。過去150年間にわたる猛烈な土地開発を考えると、今回の考古学的発見は非常に貴重なものだ。1852年のサウス・サーニッチ条約で、村の敷地や畑は先住民のものとされたが、現実には今回発掘が行われたアゲート・パークの区画だけが先住民に残された土地だった。

2008年にこの地域では、やはり1000年以上前のものと見られる14体の遺骨が住宅建設中に発見された。その後に出土した350点近い遺物の中からは、骨に鋸歯状の細工を施して作られた希少な銛先も見つかっている。(翻訳:石井佳子)

from ARTnews

あわせて読みたい