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今週末に見たいアートイベントTOP5: 石内都が写した銀座の記憶、世界的アーティスト、アルフレド・ジャーのヒロシマ賞受賞記念展

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

Yukari Nishi. Untitled Scene: U. 2023. Oil on canvas. 227.3 x 181.8 cm. Photo by Arito Nishiki. Courtesy of Gallery COMMON.

1. Material, or (21_21 DESIGN SIGHT)

展覧会企画チームが写真家ゴッティンガムとともに海岸で撮影した本展のイメージビジュアル Photo: "Untitled (Your Materials #63–126)", 2023 ©Gottingham Image courtesy of Nippon Design Center and Studio Xxingham

デザイン、マテリアル、素材の関係を読み解く

「もの」が人によってデザインされる過程で、特定の意味を持たなかった「マテリアル」が意味を持つ「素材」になると定義し、マテリアルから人工物を生み出す間のどこからがデザインなのかを考える展覧会。ディレクターを務めるのは、デザイナーの吉泉聡。企画協力には芸術人類学者の石倉敏明、バイオミメティクスデザイナーの亀井潤を迎え、私たちとマテリアルのつながりを、地球をめぐる広大な視点から読み解いていく。

人は思考だけでなく、直接触りながらマテリアルに意味を見出してきた。古代から続けられてきたその行為を、デザインやアート、暮らしのなかで生まれた手仕事などから紹介する。祖父が身の回りのもので農具を作る様子を見て育ったというイ・カンホは、2 kmものナイロンコードを手で編んで制作した作品を出展。「編む」行為はマテリアルとの対話であり、自分自身の修練だと説明する。マテリアルを使うのは人間だけではない。館内には、鳥がクモの糸や羊の毛を用いて作った巣が館内に展示されている。また、狩猟免許を持ち、自ら熊を狩る永沢碧衣は、熊が眠るインスタレーションを制作した。

ほかに、ARKO、青田真也、ACTANT FOREST、上田勇児、遠藤薫、太田翔、小野栞、金崎将司、亀井潤(Amphico)、ゾフィア・コラー、TAKT PROJECT、DRIFT、似里力、畑中正人、ピート・オックスフォード、Formafantasma、BRANCH、本多沙映、三澤遥+三澤デザイン研究室、吉田勝信が参加。

Material, or 
会期:7月14日(金)~ 11月5日(日)
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2(東京都港区赤坂9-7-6)
時間:10:00 ~ 19:00  (入場は30分前まで)


2. 第11回ヒロシマ賞受賞記念 アルフレド・ジャー展(広島市現代美術館)

《広島、長崎、福島》2019 Photo: Kenichi Hanada

チリ生まれのアーティストが見つめる「ヒロシマ」

1956年にチリで生まれ、ニューヨークを拠点に活動するアルフレド・ジャーの、ヒロシマ賞受賞記念展。ヒロシマ賞は広島市などが主催し、美術の分野で人類の平和に貢献した現代作家に贈られるもの。これまで三宅一生蔡國強オノ・ヨーコらが受賞してきた。世界各地で起きた歴史的な事件や悲劇に眼差しを向けるジャーは、ヒロシマや、東日本大震災と福島の原発事故をテーマにした作品も手掛けてきた。今展では、ヒロシマが題材の新作や、日本国外に取材した過去の代表作などを披露。ジャーナリスティックな視点から制作されたインスタレーションや写真、映像作品が展示される。

建築と映像制作を学んだジャーの作品は、空間を意識し、五感に訴えかけるようなインスタレーションが特徴だ。会場では、『ヒロシマ・ノート』なども出版した大江健三郎の著作名でもある「われらの狂気を生き延びる道を教えよ」の文字をネオンで表した作品が出迎える。広島市の上空から原爆ドームに向かってドローンで撮影した映像作品には、会場にある驚きの仕掛けが施されている。生と死が入り交じる作品群を、その目で確かめてほしい。

第11回ヒロシマ賞受賞記念 アルフレド・ジャー展
会期:7月22日(土)~ 10月15日(日)
会場:広島市現代美術館(広島県広島市南区比治山公園1-1)
時間:10:00 ~ 17:00  (入場は30分前まで)


3. Yukari Nishi with magma「Index ♯7」(Gallery COMMON)

Yukari Nishi. Untitled Scene: U. 2023. Oil on canvas. 227.3 x 181.8 cm. Photo by Arito Nishiki. Courtesy of Gallery COMMON.

シュールさが漂うアメリカの幸せな家庭像

西洋的なノスタルジーと奇妙さが同居する作品を描く西祐佳里。杉山純と宮澤謙一のユニット・magmaとコラボし、西の新作ペインティング19点と、magmaが西の作品からイメージを膨らませた立体作品10点を発表する。

西の絵には、1970〜80年代のどこか懐かしい「幸せなアメリカの家庭」が描かれるが、登場するキャラクターは、体が人間で頭部は熊や風船という不気味で不穏な姿をしている。鑑賞者は、この理解不能なシチュエーションに戸惑い、不安や不快さと格闘することになる。西によると、様々なイメージをコラージュさせる手法は、自己分析の手段であり、潜在意識がキャンバスに投影されているのだという。廃材や電動器具などを組み合わせ、アナログ感あるビビッドな色彩の作品をつくるmagmaが、西の絵にどうインスパイアされたのかも注目だ。

Yukari Nishi with magma「Index ♯7」
会期:8月19日(土)~ 9月17日(日)
会場:Gallery COMMON(東京都渋谷区神宮前5-39-6 B1F)
時間:12:00 ~ 19:00 


4. 「石内都 初めての東京は銀座だった」(資生堂ギャラリー)

「月光荘の絵具」 2022

石内都が写した、銀座の記憶と物語。未発表のオリジナルプリントも

今も昔も特別な街、銀座。日本の代表的な写真家・石内都も、数々の思い出を持つ一人だ。ジャズ喫茶を目当てに初めて銀座を訪れたのは15歳の春のこと。以来、美大時代には画材を買い、映画を見て、個展も開いてきた。本展では、資生堂の企業文化誌『花椿』のウェブ版に、石内の写真に森岡書店店主の森岡督行が物語を添えるかたちで連載された「銀座バラード」(2022年6月~2023年5月)のための撮り下ろし写真を展観。未発表作を含む約30点のオリジナルプリントが並ぶ。

被写体にしたのは、銀座を訪れるきっかけとなった歌手のレコードや、画材店の月光荘で戦時中に製造販売されていた絵の具など、石内の記憶と結びつく品々だ。他にも、寿司屋の包丁やテーラーのはさみ、洋食店のオムライスと、銀座で歴史を紡ぐ老舗で撮影した。これまで、自身の母親や被爆者の遺品などを撮影し、“モノの記憶”を写し出してきた石内。今回の作品たちからも、銀座のさまざまな記憶や物語が想像される。

「石内都 初めての東京は銀座だった」
会期:8月29日(火)~ 10月15日(日)
会場:資生堂ギャラリー(東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビルB1F)
時間:11:00 ~ 19:00 (日・祝は~18:00)


5.  わたしのからだは心になる?展(SusHi Tech Square)

アート×テクノロジーを体感する新施設がオープン!

東京都のメディアアートとテクノロジーの体感拠点としてオープンした「SusHi Tech Square」。新鮮な視点を持ち自由な思考を育むための展覧会シリーズの初回として、「わたしのからだは心になる?」展が開催されている。スマホを操作する指先の感覚やVRの中の自分など、テクノロジーの発展とともに変化する私たちの身体感覚。気鋭の8組のクリエイターが、作品を通じて現代における身体のありようを問いかける。

展示は「機械と身体」「バーチャルな身体」「社会のなかの身体」「環境と身体」という4つのゾーンで構成される。小鷹研究室as 注文の多いからだの錯覚の研究室は、幽体離脱のような感覚が得られる体験装置を制作。鏡とディスプレイの仕掛けによって自分の体が奇妙なカタチに映し出されることで、自分であって自分でないような感覚が生み出される。デザインラボのSynfluxは、仮想空間での衣服に着目。どのような姿でも許容される仮想の未来空間において、ユーザーが自ら改造できる「アバタースキン」を考案した。会場には「アートコミュニケーター」が常駐し、会話を通じて鑑賞者の作品理解を助けてくれる。

わたしのからだは心になる?展
会期:8月30日(水)~ 11月19日(日)
会場:SusHi Tech Square(東京都千代田区丸の内3-8-3)
時間:11:00 ~ 21:00 (土・休日は10:00~19:00、入場は30分前まで)

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