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今週末に見たいアートイベントTOP5: イヴ・サンローランの人生と仕事を262点で回顧、米谷健 + ジュリアが「微生物」に着目した新作を発表

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

カクテル・ドレス―ピート・モンドリアンへのオマージュ 1965年秋冬オートクチュールコレクション  © Yves Saint Laurent © Alexandre Guirkinger

1. 米谷健 + ジュリア 『Next Generation』 俺たちだって微生物(KYOTOba)

展示風景

国際的な現代美術家が「微生物」に着目した新作を発表

元金融ブローカーの健、オーストラリアや日本の大学で、歴史学の教職や研究職に就いていたジュリアによる現代美術家ユニット、米谷健 + ジュリア 。主に環境問題をテーマにした大規模インスタレーションで国際的な評価を得ており、近年はオーストラリアの塩害に侵された大規模農業地帯で、塩を使って農業と食糧危機をテーマにした作品《スティルライフ》(2011年)や、ウランガラスを使用し、原子力の魅力と恐怖を表現した作品を発表して話題となった。

オーストラリア、ドイツフランスなど世界各国で活動をしていた2人だが、2015年からは京都府南丹市の農村に移住し、有機農業と制作活動を兼業する日々を送る。農業に取り組む中で、土の中の「微生物」の重要性に気付くと、「土と人との関係」へと発展。人そのものも「体内に共生する微生物」を含めた小宇宙ではないかという思いを抱いたという。本展は、それらの気付きから制作された作品を発表する。

米谷健 + ジュリア 『Next Generation』 俺たちだって微生物
会期:9月1日(金)~ 10月1日(日)
会場:KYOTOba(京都府京都市中京区西ノ京南聖町6-5)
時間:12:00 ~ 19:00 


2. ジェフ・スティーブンス「ROYAL BOOD」(GALLERY ETHER)

JeffStevens, LikeaVillain, MixedMedia CollageonCanvas, 121.9x91.4cm, 2023

権力や富の背後にあるものに疑問を投げかける、複雑でリアルなイメージ

ロサンゼルスのストリートアート・コレクティブ「KAMP」の共同設立者であり、コロラド州デンバーを拠点とするアーティスト、ジェフ・スティーブンス。『スター・ウォーズ』や『アベンジャーズ』など、ハリウッド映画のマーケティングキャンペーンのデザイナーとしても知られており、巨大産業の内部で感じた社会への違和感が作品の中に反映されている。

「ROYAL BOOD」と題した本展では、権力、富、既存の権威の背後にある方法論に疑問を投げかける。会場には、複雑でリアルなイメージの作品が並んでいる。それらは、政治、宗教、産業の図像を取り壊し、再構築することで、メインストリーム的な文化や権力の根底にある暗い影響を暴き出し、新しいものを構築しようとする人間の根源的な欲望を具現化したものだという。

ジェフ・スティーブンス「ROYAL BOOD」
会期:9月9日(土)~ 9月30日(土)
会場:GALLERY ETHER(東京都港区西麻布3-24-19 山王商会西麻布ビルF1-B1F )
時間:12:00 ~ 19:00(15:00~16:00休憩) 


3. 野口里佳「Rainbow」(タカ・イシイギャラリー)

Noguchi Rika, “Rainbow #12”, 2023, C-print, 88.2 x 63 cm © Noguchi Rika / Courtesy of Taka Ishii Gallery

微視と巨視。独自の視点が光るアーティストの14点を展覧

微視と巨視の組み合わせや、旅を通じての出会い、日々の生活の中にある小さな未知の存在に目を向ける独自の写真世界で、国内外で高く評価される野口里佳。本展では、映像作品《光る海》と新しい写真作品 《虹》 など13点を発表する。

野口自身、本展を「距離」についての展覧会だと語る。2021年のコロナ禍に、自身が暮らす沖縄の浜辺で制作された《光る海》は、パンデミックの制約の中で野口は海の向こうを想像し、日常の中に未知の世界を見つけ出そうとした。鳥取砂丘で撮影された新作の写真作品は、飛ぶことのできない人間がパラグライダーで空を舞う瞬間が美しく描かれている。展覧会を通じて、野口のジャンルを超えて広がり続ける作品世界を楽しんでもらいたい。

野口里佳「Rainbow」
会期:9月12日(火)~ 10月14日(土)
会場:タカ・イシイギャラリー(東京都港区六本木6-5-24 complex665 3F)
時間:12:00 ~ 19:00 


4. 超絶技巧、未来へ! 明治工芸とその DNA(三井記念美術館)

《吸水》(部分) 福田 亨 2022年

現代作家17人による「超絶技巧」作品64点を紹介

「驚異の超絶技巧! 明治工芸から現代アートへ」展からはじまる「超絶技巧」シリーズ展の第3回目。本展では、金属、木、陶磁、漆、ガラス、紙など様々な素材を用い、アスリートのような鍛錬を実践し超絶技巧に挑む現代作家17人の作品、64点を紹介する。

また、超絶技巧のルーツでもある七宝、金工、漆工、木彫、陶磁、刺繍絵画などの明治工芸57点もあわせて展覧する。出品作家は、漆工の池田晃将、樋渡賢、木彫の大竹亮峯、福田亨、前原冬樹、松本 涼、水墨画の山口英紀、金工の長谷川清吉、本郷真也、吉田泰一郎ほか。

超絶技巧、未来へ! 明治工芸とその DNA
会期:9月12日(火)~ 11月26日(日)
会場:三井記念美術館( 東京都中央区日本橋室町 2-1-1 三井本館 7 階)
時間:10:00 ~ 17:00(入場は30分前まで) 


5. イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル(国立新美術館)

カクテル・ドレス―ピート・モンドリアンへのオマージュ 1965年秋冬オートクチュールコレクション  © Yves Saint Laurent © Alexandre Guirkinger

イヴ・サンローランのルック、写真など262点で40年にわたるキャリアを振り返る

1958年にディオールのデザイナーとしてデビューを飾り、1962年から自身のブランド「イヴ・サンローラン」を発表。以来、約半世紀にわたって世界のファッションシーンをリードしたイヴ・サンローラン(1936-2008)。サファリ・ルックやパンツスーツ、ピーコートなどのアイテムを定着させ、女性たちのワードローブに変革をもたらした。

本展はイヴ・サンローラン美術館パリの全面協力を得て、没後日本で初めて開催される大回顧展。21歳で衝撃的なデビューを果たし、自身のブランドとして初のコレクションを成功させ、美術作品や舞台芸術、そして日本にも影響を受けながら独自のスタイルを確立するまでの40年にわたる歴史を、ルック110体のほか、アクセサリー、ドローイング、写真を含む262点、12章構成で紹介する。

イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル
会期:9月20日(水)~ 12月11日(月)
会場:国立新美術館(東京都港区六本木7-22-2)
時間:10:00 ~ 18:00(金・土曜は20:00まで、入場は30分前まで) 

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