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今週末に見たいアートイベントTOP5: スターリング・ルビーが展覧会を3館同時開催、時間を思索するダレン・アーモンドが5年の歳月をかけた新作を公開

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

Yukino Yamanaka pose 2023 Oil on Canvas 727x606mm

1. ダレン・アーモンド 「Timeline」(SCAI THE BATHHOUSE)

ダレン・アーモンド《 Entropy》2023、麻にアルミニウム、金、銀、アクリル、146 x 102 x 3 cm  協力:SCAI THE BATHHOUSE

5年の歳月をかけて制作した新作も。「時間」について思索するダレン・アーモンドの現在地

イギリス人現代美術作家のダレン・アーモンドは、時間や距離といった、客観的な指標が見過ごしてきた領域に分け入り、個人の記憶や感情、またはその土地の歴史を手がかりに、「時間」について思索を続けてきた。同ギャラリーでは7年ぶりの個展となる本展も、時系列という意味を持つタイトルが示すように複数の時間軸が交差するような展示となっている。

世界初公開となる新作シリーズ「エントロピー」は、キャンバスに金属箔を貼って放置し、経年変化させる中で生じた色彩を絵の具に混ぜて使用しており、完成までに実に5年の歳月をかけたという。また、同じく初公開の「英国の歌鳥」シリーズは、2011年に死去した画家、ルシアン・フロイドのスタジオを訪れた際に見つけた絵の具で汚れた山積みの布をスマートフォンで撮影し、そのデジタルイメージを用いて作品を制作した。それらの作品は、時間が不可逆なものだということを私たちに教え、現代社会が置き去りにしてきた記憶や感情を蘇らせてくれるだろう。

ダレン・アーモンド 「Timeline」
会期:11月18日(土)~ 2024年2月10日(土)※12月20日(水)~ 2024年1月15日(月)冬期休業
会場:SCAI THE BATHHOUSE(東京都台東区谷中6丁目1-23)
時間:12:00 ~ 18:00


2. スターリング・ルビー 「SPECTERS TOKYO」(草月プラザ 石庭「天国」)

Sterling Ruby “SPECTERS”, 2023 Metal, textiles, wood, gourds 579.1 x 259.1 x 289.6 cm © Sterling Ruby. Courtesy of Taka Ishii Gallery / Photo: Matthew Grover

世界的アーティスト、スターリング・ルビーが日本初のパブリックアートを披露

1972年にドイツで生まれ、ロサンゼルスを拠点に活動するスターリング・ルビー。立体作品、ドローイング、陶器、写真、映像、キルトやソフトスカルプチャーといった布作品など制作スタイルは幅広く、作品に込められたテーマは社会問題、自身の過去、美術史における問題など多岐にわたる。

イサム・ノグチが手掛けた屋内庭園で展開される本展は、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の『怪談』をはじめとする、日本の怪談に着想を得たサイト・スペシフィックなインスタレーションを発表する。ルビーにとって日本初のパブリック・アートとなるこの作品は、使い古された布やオブジェが天井からつるされ宙を漂う。見る者は、死者について考え、この世にはいない存在が私たちの世界に紛れている可能性を思い出させるだろう。ルビーは同時期、東京と京都の計3カ所で展覧会を開催する。TERRADA ART COMPLEX IIのタカ・イシイギャラリーではペインティング「TURBINE(タービン)」シリーズの新作を披露するほか(11月23日~12月23日)、タカ・イシイギャラリー 京都では、日本の怪談に触発され制作した立体作品やペインティングなどを展示する(11月25日~2024年1月20日)。

スターリング・ルビー 「SPECTERS TOKYO」
会期:11月23日(木)~ 12月23日(土)
会場:草月会館1F 草月プラザ 石庭「天国」(東京都港区赤坂7-2-21)
時間:10:00 ~ 17:00


3. ウェス・アンダーソンすぎる風景展 in 渋谷 あなたのまわりは旅のヒントにあふれている(ヒカリエホール)

マリーズ・チョコレート アメリカ、オハイオ州、クリーブランド @Accidentally Wes Anderson, Malley’s Chocolates

「ウェス・アンダーソン的」風景写真300点あまりが一堂に。人気インスタコミュニティ発の展覧会

「ポップなパステルカラー」、「シンメトリー(左右対称)な構図」など、唯一無二の世界観の作品を創り出す映画監督のウェス・アンダーソン。そんな「アンダーソン的」風景写真を世界中から集めるインスタグラムのコミュニティ「AWA(Accidentally Wes Anderson)」は、フォロワーが185万人を超え、書籍はアメリカでベストセラーとなっている。

本展はヨーロッパ、アジア、北米など世界各地で撮影された、ウェス・アンダーソン映画のワンシーンのような写真300点あまりを展示する。10のキーワードで分けられた展示会場も、映画の雰囲気そのままの可愛らしくポップな空間。写真や動画の撮影はOKだ。ノスタルジックでフォトジェニックな展覧会は、ひととき素敵な世界旅行に連れて行ってくれるに違いない。

ウェス・アンダーソンすぎる風景展 in 渋谷 あなたのまわりは旅のヒントにあふれている
会期:11月25日(土)~ 12月28日(木)
会場:ヒカリエホール(東京都渋谷区渋谷2丁目21-1 渋谷ヒカリエ9階)
時間:11:00 ~ 19:00(土曜日は20:00まで、入場は45分前まで)


4. Ginza Curator’s Room #006 Daisuke Miyatsu「室礼の美」(思文閣銀座)

岡部蒼風 作品47-8(初原)

近代日本画から見附正康、新里明士まで。時を超えて東アジアの芸術が出会う場所

毎回異なるゲストキュレーターを迎えるシリーズ企画「Ginza Curator’s Room」。その第6回は、世界的な現代アートのコレクターで横浜美術大学教授、森美術館理事の宮津大輔が務める。タイトルにある「室礼」とは、年中行事に合わせて室内を整えるという意味。平安時代から始まったその習わしは、室町時代には床の間へと集約された。宮津は様々な作家の作品を並べ楽しむこの展覧会を室礼になぞらえた。

明治期は日本画、第2次大戦後は墨人会の前衛書、走泥社のオブジェ焼など、大きな時代の節目に、日本の芸術は新しい概念を生み出してきた。現在は工芸などの伝統技術を用いた作品と、いわゆる純粋芸術の領域が揺らいでおり、革新的なコンセプトと表現で新風を吹き込むアーティストが活躍していると宮津は話す。本展は彼らの作品と、近代日本画、前衛書、オブジェ焼を展示することで、日本の近代以降の芸術を一望する。出品作家はAyako Someya、エレン・アルトフェスト、上田桑鳩、オーギュスト・ロダン、岡部蒼風、黒田泰蔵、新里明士、林千歩、藤井達吉、毛冠帥、見附正康、宮永理吉、森田子龍、八木一夫、劉致宏ほか。

Ginza Curator’s Room #006 Daisuke Miyatsu「室礼の美」
会期:11月30日(木)~ 12月13日(水)
会場:思文閣銀座 (東京都中央区銀座5丁目3番12号 壹番館ビルディング)
時間:10:00 ~18:00


5. 山中雪乃 「POSE」(DIESEL ART GALLERY )

Yukino Yamanaka pose 2023 Oil on Canvas 727x606mm

人物を描き続ける山中雪乃の新境地

山中雪乃は、初期より一貫して人物をモチーフとしており、そのスタイルは具象からランダムなストロークを用いた抽象へと変化している。意図して設けられた空白や液体が流れるような表現、どこかエゴイスティックな表情やポーズは、「私」から「何か」への変異するプロセスをとらえ、これまでの人間像から脱しつつある未完の存在としての私たちの姿をあらわにする。

本展は新作の絵画12点と初の立体作品を展示する。タイトルの「POSE」は絵画で観られるモデルの姿勢のほかに、見せかけの態度やうわべだけの状態を意味する。情報過多の現代社会の中で、何が本物か見せかけかを判断できないまま、私たちは定まらないポーズを繰り返す。この状況の中で生まれつつある得体のしれない何かが示しているのは人間性の退廃か、新たな事態の予兆なのだろうか。人間性が問われる現代で、山中の作品は絵画と空間の関係を問い、失われつつある絵画の実在性、そこに宿る他者の存在に迫る。

山中雪乃 「POSE」
会期:12月2日(土)- 2024年1月16日(火)
会場:DIESEL ART GALLERY (東京都渋谷区渋谷1-23-16 cocoti DIESEL SHIBUYA B1F)
時間:11:30 ~ 20:00

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