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NFTの95%が無価値? 専門家らが「NFTは死んだ」と題したレポートを発表

仮想通貨とデジタル・アートの革命としてもてはやされたNFT(非代替トークン)は、ほとんど無価値になった──金融とブロックチェーン技術の専門家からなるコミュニティ、dappGamblが、新しいレポートの中でそう結論づけた。

NFT元年と言われた2021年、ロンドンのサザビーズで「Natively Digital: A Curated NFT Sale」と題されたオークションが開催された。写真はそこに出品された、ケヴィン・マッコイによる《Quantum》(2014年)。Photo: Tristan Fewings/Getty Images for Sotheby's

dappGamblの専門家らは、「Dead NFTs: The Evolving Landscape of the NFT Market(死んだNFT:NFT市場の進化する風景)」と題した新しいレポートの中で、7万3257のNFTコレクションのうち6万9795が、ビットコインに次ぐ仮想通貨であるイーサ(ETH)において、ゼロ・イーサであるとの調査結果を示した。つまり、NFTの95%が、今日1円の値もつかないというのだ。NFT元年と言われた2021年には170億ドル(約2兆5000億円)もの取引高を誇ったものとしては惨たらしい暴落だが、レポートでは、現在も2300万人が、実用的な用途も価値もないこれらのトークンを所有していると推定している。

しかも、NFTの供給は需要を大きく上回っているのだ。調査対象となったコレクションのうち、完全な所有権を主張できるのはわずか21%。つまり、5つのコレクションのうち約4つが売れ残っていることを意味する。この背景には、熱狂的なブームが去り、買い手の目も肥えてきた中で、「明確な使用例や説得力のある物語、真の芸術的価値を持たないものは、売るのがさらに難しくなってきている」と専門家らは指摘している。

また、NFT投機の全盛期には、何億円にも相当する暗号通貨で取引された作品に注目が集まったものの、今、これほど法外な価格で取引されているものはほとんどない。調査対象になったもののうち、6000ドル以上で取引されているのは1%にも満たず、最も高価なコレクションの大半が、5ドルから100ドルで推移。フロア価格(最低価格)がゼロのものは、5分の1にものぼる。もちろん、中にはより高価なNFTもあるが、それらの価格は「具体的な実際の需要とは無関係に」設定されている可能性が高いという。レポートでは、こうした「売り手の希望的観測」を反映した価格設定は、ほぼ無きに等しいNFTの本来の価値に対する投資家の見方を歪めてしまう懸念があると警鐘を鳴らしている。

一方、dappGamblの専門家らは、2021年から2022年にかけてのようなNFTブームの再来はなくとも、NFTが生き残りをかけて進化する可能性はあると結論づけている。例えば、特別なイベントにアクセスするためのパスや、ビデオゲームで購入・取引される仮想アイテムになるなど、特定の機能を持たせることは十分に考えられる。

しかし、これではNFTの最大の欠点である環境負荷には対処できない。非代替型トークンはブロックチェーン上でミントされるが、そのプロセスには莫大なエネルギーが必要であることに加え、それらが売買されるNFTマーケットプレイスの運営には、二酸化炭素排出量が大きいマイニングリグが用いられる。「Dead NFTs」は、トークンをミントするだけでも莫大な負荷がかかることを指摘した上で、調査によって特定された「所有者や市場シェアが明らかでない」約20万件のNFTコレクションによって、住宅で2048軒分、自動車で3531台分の年間生産量に相当する二酸化炭素を排出していると報告している。

もちろん、NFTが盛り上がっているときにそんなことを懸念する人はほとんどいなかった。さらにいえば、仮にNFTがささやかな復活を遂げることがあっても、コミュニティが気候危機への懸念を議論するとは思えない。次のハイプ・サイクル(ガートナー社が発表する、注目の技術の成熟度、採用度、社会への適用度を示した図)の妨げになるようなことは許されないのだ。(翻訳:編集部)

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