ARTnewsJAPAN

ロエベとアレキサンダー・マックイーンの最新コレクションは、偉大なる女性アーティストへの賛美

過去10年間のファッションウィークを振り返っても、今シーズンほどアートとファッションが近づいたことはなかったのではないだろうか。パリでは2024年春夏ファッションウィークが開催中だが、ロエベ(LOEWE)やアレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)といったブランドは、アート作品を生地やデザインの着想源にするというレベルを脱し、歴史に名を刻む女性アーティストたちへの惜しみない賛美を送っていた。

ロエベの2024年春夏コレクション。PHOTO PETER WHITE/GETTY IMAGES

現在、世界中の様々な美術館で、その代表作であるラテックスを流した作品を見ることができるアメリカ人アーティストのリンダ・ベングリスとコラボレーションをしたのは、9月29日にショーを行ったロエベ。べリングスはこのランウェイで、新たに制作された6つの大型ブロンズ作品を披露した。

ベングリスは2022年秋冬シーズンにも、ユルゲン・テラーが撮影したロエベの広告にモデルとして登場しており、両者のコラボレーションは今回で二度目。60年代にプロセス重視の作品で注目を集めた彼女は、1974年のArtforum誌の広告で、自身のヌードボディにラテックス製のディルドをあてた挑発的なセルフポートレートで物議を醸し、フェミニズム美術史において重要な作品として記述されることとなった。

今回発表されたロエベの2024年春夏コレクションでは、ベングリスによる粘土彫刻やラテックスのジュエリーが、流れるようなケープやハイウエストのパンツに巻き付けられていた。Art Newspaperによると、今回展示された彫刻は《Black Widow》(2021年)と《Yellow Tail》(2020年)。ロエベのアート・コンサルタントで、ベングリスの展示を担当したキュレーターのアンドリュー・ボナシナによると、今回発表されたいくつかの作品は何年も前から制作されていたという。

「リンダは、粘土を押し出し機にかけて長いロープ状にしたものをねじるなどして、あの独創的な形をつくり出しています。作品の拡大写真を見ると、彼女の指紋がついていたり粘土の端が破れたりしているのが確認できます。彼女は常に素材の可能性を引き出すことに興味があります。作品は、そのプロセスの証左と言えるのです」

一方、サラ・バートンによる最後のショーとなったアレキサンダー・マックイーンのコレクションでは、20世紀後半のポーランド出身のアーティスト、マグダレーナ・アバカノヴィッチによるファイバーアートがランウェイに登場した。これは今年5月までテート・モダンで開催されたアバカノヴィッチの大回顧展に連動したもので、本展は今月、オスロのヘニー・オンスタッド・アート・センターに巡回予定だ。

ショーでは薄暗い会場の至るところでアバカノヴィッチの力強くも柔らかな大型彫刻が異彩を放ち、彼女の作品へのオマージュとも言える美しく複雑なクリエーションが、バートンの類まれなる才能を裏付けていた。このインスタレーションは、アバカノヴィッチ芸術文化慈善財団の共同ディレクターであるメアリー・ジェーン・ジェイコブが監修した。展示された彫刻の中には、テートで半世紀ぶりに展示された高さ約4メートルの作品《Abakan-Situation Variable》(1970-71年)と、これまでアメリカ以外の国で展示されていなかった《Abakan Violet》(1969年)もあった。(翻訳:編集部)

from ARTnews

あわせて読みたい