激動の時代のアートメディアを率いた2人の編集長が相次いで辞任。「次なる時代への道筋を示した」
アート分野の国際的なニュースメディア、アートニュースペーパーのアリソン・コール編集長と、アートネットニュースのアンドリュー・M・ゴールドスタイン編集長が相次いで辞任を発表した。
アートネットニュースで7年前から編集長を務めていたアンドリュー・ゴールドスタインは、9月末、編集チームに宛てたメールの中で退任を表明し、こう振り返った。
「アートネットニュースの非凡なジャーナリストチームと仕事ができたことを誇りに思います。彼らには心から感謝しています。アート業界のみならず、世界全体が絶え間なく揺れ動いている今、アートネットニュースは、真摯な報道姿勢を貫くことによってアート市場の内情を伝え、アート業界がコロナ禍を乗り越える道筋を示しました。また、権威ある美術館・博物館が、人種差別や性差別、植民地主義の過去を清算する激動の瞬間に立ち会い、それを記録しています」
ゴールドスタインは2017年にアートネットニュースに入社するまで、アートや建築、旅行などに関する出版を行うファイドン社のチーフ・デジタル・コンテンツ・オフィサーだった。ファイドン在職中はポッドキャスト「Art Angle」のホストを務めたほか、定額ニュースサービス「Artnet Pro」やデータ分析レポート「Artnet Intelligence Report」などのプロジェクトを指揮。それ以前には、アート作品のマーケットプレイス、アートスペースの発行するウェブマガジンの編集長や、美術情報のニュースメディア、 アートインフォのエグゼクティブエディターを務めた。
ゴールドスタインは退任発表のメールで、「私たちは読者の目線を重視しながら、アーティストやアートディーラー、コレクター、美術館館長、そして物事をより良い方向に変え、最高のアートを世に送り出そうとしているさまざまなイノベーターたちに光を当て、前進のための道筋を描いてきました」とも述べている。しかし、今後の予定については言及されていない。
一方、アートニュースペーパーは10月2日、5年半にわたり同紙の指揮をとってきたアリソン・コール編集長の退任を発表した。ただし、コールはエディター・アット・ラージ(特任記者)として今後も在籍する。今後は、イギリス政府のアートとクリエイティブ産業の文化政策に情報を提供するために新設された政策ユニットを監督するという。
コールの在籍中にアートニュースペーパーは、イギリスとアメリカにおいて紙媒体とオンラインの双方で拡大を続けた。退任発表の声明によると、彼女の入社以降、広告収入および発行部数がピークに達したという。
アートニュースペーパーの発行人であるインナ・バジェノワは、次のようにコールの功績を称えている。
「アリソンは、アートニュースペーパーの文化戦略をリードし、アート界の記録媒体として同紙を成功させるという困難な任務を負ってきました。特任記者としてのアリソンとの継続的な関係を楽しみにするとともに、新しい挑戦における成功を祈っています」(翻訳:清水玲奈)
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