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年俸4000万円は安すぎる!? 問題山積の大英博物館が、新館長の募集を開始

2023年に発覚した大英博物館の大規模な所蔵品の盗難・紛失事件。それ受けて、8月にハートヴィヒ・フィッシャー館長が辞任を表明していたが、今週、正式に新館長探しが開始された。

大英博物館の館内。2013年撮影。Photo: Wikimedia Commons

大英博物館は2023年、30年間にわたって2000点もの所蔵品が紛失、盗難、破損していたことが発覚し、所蔵品をeBayで販売していた職員を解雇した。これを受けて8月にハートヴィヒ・フィッシャー館長が辞任を表明し、9月にヴィクトリア&アルバート博物館の元館長、マーク・ジョーンズが暫定館長に就任していた。

今回発表された新館長職の募集要項によると、職務は盗難スキャンダルの影響や、それに付随するおよそ1000人の職員の士気の低下への対応、全コレクションをデジタル化する5カ年計画の遂行、ベナン青銅器やパルテノン大理石などの文化財の本国送還を求める声が再燃していることへの対処など、「重大な課題」に対応しなければならない。さらに、施設の配管や暖房システム、屋根の雨漏りなどのインフラ改善やギャラリーの再編成を含む、大規模な改修プロジェクトの資金調達活動を指揮する任務も担うことになる。フィナンシャル・タイムズ紙によると、このプロジェクトには約12億7000万ドル(約1842億円)の費用がかかるという。

2023年10月18日、大英博物館のジョージ・オズボーン理事長は、文化・メディア・スポーツ省(日本の文化省にあたる)や関連公共団体の業務を精査する英国議会の組織、文化・メディア・スポーツ委員会で所蔵品の盗難スキャンダルについての証言をした際、新館長の人選についてこう語っていた。

「(新館長は)混雑する来館者への対策や、ギリシャなど諸外国との交渉、研究機関であり、世界的な資料を誇る図書館としての機能の維持、イギリスの植民地化の歴史を博物館としてどう解釈するのかなど、さまざまな問題に向き合いながら、学界で尊敬を集めなければならない。非常に複雑な業務なので、適切な人物を見つけるために、とても真剣に取り組んでいます」

新館長職の候補者には、学術的な分野の知識と 、公共部門における大規模で複雑な組織管理の経験の両方を備えた人物がふさわしいとオズボーンは考えているが、そのような優秀な人材を獲得するには、現在の給与は十分とは言えないことも認識しているようだ。

大英博物館の館長職の年俸は約27万5000ドル(約4000万円)とされており、メトロポリタン美術館のマックス・ホレイン館長の基本給100万ドル(約1億5000万円)と比べると非常に低い。しかも、ニューヨーク近代美術館(MoMA)を含むアメリカのいくつかの美術館館長は、給与に加えて非課税の高級住宅や住宅手当の恩恵も受けている。

ニューヨーク・タイムズ紙によると、館長職の有力候補には、ロンドンの科学博物館館長のイアン・ブラッチフォード、ナショナル・ポートレート・ギャラリーの館長で、5300万ドル(現在の為替で約71億円)をかけた3年にわたる改修工事を監督し、2023年にリニューアルオープンさせたニコラス・カリナン、昨年のフェルメール大回顧展を成功に導いたアムステルダム国立美術館のタコ・ディビッツ館長らの名が挙がっている。(翻訳:編集部)

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