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旅先の若きホックニーを助けた夫婦に贈られた、猫の陶作品がオークションへ

美術学校に通っていた頃のデイヴィッド・ホックニーが、旅先で出会った夫婦に猫の陶芸作品を贈った。それがこのほどオークション会社Stacey's Auctioneers and Valuersのセールで出品されるとアートネットニュースが報じた。

Stacey's Auctioneers and Valuersのオークションに出品される、若きホックニー作の猫の陶作品。オークション会社はこの作品に "the cat of kindness" というタイトルをつけた。 Photo:Stacey's auctioneers and valuers

この彫刻は、1955年にホックニーからベッドフォードシャーのピーター&ウェンディ・リチャーズ夫妻に贈られたもので、予想落札価格は3万〜4万ポンド(約544万〜約726万円)。

ホックニーはブラッドフォード美術学校在学中、友人たちとヒッチハイクでイギリス中の美術展を巡るのが趣味だった。1955年、ロンドンに戻る旅路の途中、ホックニーと友人のノーマン・スティーヴンスは、大雨で旅行を中断せざるを得なくなった。2人はリチャーズ家の小屋の軒下へ避難したが、夫妻はずぶ濡れになった学生たちに気づくと、家の中に招き、お茶を入れ、服を乾かしてあげたのだ。

ホックニーは旅行中、しばしば道中で出会った人々に作品を贈った。この彫刻は、ホックニーが制作し、贈り物にした6つの猫の作品のうちの最初の作品と考えられており、郵送でリチャーズ夫妻に贈られた。3人はその後も連絡を取り合い、ホックニーは長年にわたって夫妻に手紙や絵を送り続けた。

BBCによると、ホックニーは彫刻を贈る前にリチャーズ夫妻に宛てた手紙に、「この猫をどうしたらいいのか本当にわからない。郵便配達員に、たくさんのわらとおがくずでしっかりと梱包されていなければ危険だと言われました。直接運ぼうかと思っています」と書いていたそうだ。

同様のホックニーの陶芸作品は、オークションで高値で取引されており、2011年のボナムズでは4万ポンド(現在の為替で約726万円)、今年6月のクリスティーズでは9万4000ポンド(約1708万円)で落札されている。

また、今回のオークションでは、ホックニーとスティーヴンスが共にデザインした大きな陶製の皿や、木版画2枚と手描きのカードも出品される。オークションは10月23日から始まる予定だ。(翻訳:編集部)

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