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戦利品としてドイツの美術館から盗まれた絵画が、元米軍兵の親族から返還される

ドイツ・ミュンヘンにあるバイエルン州立絵画コレクション(BSPC)は、このほど、民間会社とFBIの協力を得て、1945年以来行方不明になっていた風景画を取り戻した。

バイエルン州立絵画コレクションに返却された、ヨハン・フランツ・ネポムク・ラウテラー《イタリア的な風景》。Photo: Courtesy of FBI Chicago

その風景画は、18世紀ウィーンの画家ヨハン・フランツ・ネポムク・ラウテラーによる《イタリア的な風景》。もともとバイロイト新宮殿の所蔵品だったが、第2次世界大戦後に失われたとの届け出があった。2012年以来、ドイツ・ロスト・アート財団のロスト・アート・データベースに登録されている。

2022年12月、盗難美術品の回収を専門に行うアート・リカバリー・インターナショナル(ARI)のもとへ、アメリカ・シカゴに住むある人物から、「盗まれた、あるいは略奪された絵画」を所有しており、返却したいという問い合わせが入ったのが最初だった。ARIのプレスリリースによると、所有者の叔父が第2次大戦中にアメリカ軍に従軍した時、ドイツからその絵画を持ち帰ったという。ARIはこの絵の画像を数枚送ってもらったが、作者やタイトルに関する情報はなかった。

弁護士でARIの創設者クリストファー・A・マリネッロと彼のチームは、ドイツのWantuch Thole Volhard事務所の弁護士と協力し、この絵画が、かつてバイエルン州立絵画コレクション(BSPC)の分館、新バイロイト宮殿の所蔵品だったと突き止めた。2011年に初めてアメリカのアート市場に登場しており、BSPCが返還交渉を行ったが失敗に終わっている。

所有者は、返還にあたって金銭の支払いを要求していた。これについて、マリネッロは記者発表で、「私は当初、所有者と紛失の証拠書類をすべて共有し、盗まれた美術品には金銭を支払わないという我々の方針と、親族であるためこの要求は不適切であることを説明しました。2011年に誰かがシカゴの美術品市場でこの絵を売ろうとし、美術館側がクレームを出すと姿を消したことも分かっています。結局、私はFBI美術犯罪チームにこの事件を決着させるよう依頼しました。FBIは略奪を確認し、絵画を無条件で明け渡すよう促してくれたのです」と説明する。

ARIは、ナチスによって略奪され、後に公的または私的なコレクションで発見された美術品の調査や返還業務を頻繁に行っている。マリネッロは、「このように、連合国の兵士が戦利品として持ち帰ったようなケースに出くわすこともあります。戦争に勝ったからといって、それが正しいとは限らないのです。私たちは、すべての人が正しい行動をとり、盗まれた美術品がどこにあろうと、それを返すことを期待しています。略奪された美術品の問題はなくなることはなく、後世に引き継がれることが多いのです」と話している。

10月19日、シカゴのドイツ領事館で、この絵は正式に美術館に返還された。ドイツ・ミュンヘンにあるアルテ・ピナコテーク美術館からのプレスリリースによると、返還によって《イタリア的な風景》は、対になる作品《イタリアの風景》と再会することになるという。(翻訳:編集部)

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