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恐竜のレプリカ標本にスプレーを噴射した活動家を逮捕。動機は「化石燃料による健康被害を訴えるため」

10月26日、ロンドン自然史博物館で、恐竜の複製骨格標本にオレンジに染色したコーンスターチを吹き付けた2人の気候変動活動家が逮捕された。彼らはイギリス政府に石油・ガスプロジェクトの中止を要求していたという。

10月26日、ロンドン自然史博物館で行われた抗議行動。Photo: Courtesy of Just Stop Oil

今回の抗議行動は、環境運動団体のジャスト・ストップ・オイルによるものだ。同団体のプレスリリースによると、活動家の胃腸科医ウィル・ステーブルフォース博士と理学療法士スティーブ・フェイは、10月26日午後1時50分頃、ロンドンの自然史博物館に展示されている陸上で最大級の恐竜のひとつ、パタゴティタン・マヨラムの高さ26フィート(約8メートル)の複製骨格標本にスプレーを噴射。その後2人は床に座り込み、「健康のために──石油を止めよう」と書かれた横断幕を広げた。その後ステーブルフォースとフェイの両名は、駆け付けた警察官によって現行犯逮捕されている。

テレグラフ紙によると、この恐竜のレプリカは、ロンドン自然史博物館で開催中の「ティタノサウルス:最大の恐竜としての人生」展の中心的な展示物であり、その日は一般公開されていなかった。この骨格は、2014年に南米から発掘された化石をもとに作られたもので、アルゼンチンのトレリューにある科学研究・展示センター、古生物学博物館(Museo Paleontológico Egidio Feruglio、MEF)から博物館に貸し出されているものだ。

抗議者の1人であるステーブルフォースは、「NHSの医療コンサルタントとして、私は長年、化石燃料が根本的な原因である病気の患者を診てきました。私たちは、化石燃料による健康被害のメッセージを伝えるために合法的にできることはすべて行ってきましたが、何も変わらない今、もはや法を破るしか方法はありません」と、抗議行動の前に発表した声明の中で述べた。

ステーブルフォースとフェイは、ロンドンで10月30日に行われた抗議デモへの参加を医療専門家と一般市民に呼びかけたが、ジャスト・ストップ・オイルのプレスリリースによると、同組織は、政府が新たな石油・ガスプロジェクトの承認を打ち切るまで、毎日市内で行進するよう呼びかけている。

今回の抗議は、ランセット誌、JAMA誌、Medical Journal of Australia誌など、世界中の200誌以上の保健専門誌が、気候変動と生物多様性の損失との「不可分のつながり」を認識し、「健康を維持し、破局を避けるためには、この問題に共に取り組まなければならない」と世界の指導者と保健専門家に呼びかける社説を同時に掲載した直後に行われた。

10月21日、王立小児科・小児保健大学(RCPCH)のカミラ・キングドン学長は、ガーディアン紙に対し、「気候危機はすべての子どもたち、特に低所得世帯の子どもたちの健康と福祉に『存亡の危機』をもたらしており、早急な対策が必要だ」と述べた。自然史博物館での事件は、石油・ガス開発の新規ライセンスを認可したイギリス政府に対し、ロンドンの高等法院がグリーンピースからの法的異議を棄却した1週間後に起こっている。

環境活動家による抗議行動は、いくつかの国の美術館や歴史的なモニュメントで行われているが、特に知名度の高い美術作品やモニュメントは、ニュース報道や人々の注目を集めることができることからターゲットになりやすい。これまでに行われた抗議行動の多くは、作品の保護ガラスにペンキや食べ物、スライムを塗るなど、恒久的に作品を損傷しない、非暴力的な直接行動の形態をとっている。(翻訳:編集部)

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