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イサム・ノグチの彫刻がミュージックビデオでダンサーと”共演”

イサム・ノグチの力強い彫刻のまわりで、ダンサーたちが肩を揺らし、ステップを踏み、動き回る。これは、英国のミュージシャン、FKAツイッグスのディレクションによる新作ビデオだ。

FKAツイッグスがイサム・ノグチ財団・庭園美術館の協力を得て制作した「Playscape(プレイスケープ)」のスクリーンショット The International Woolmark Prize via Youtube
FKAツイッグスがイサム・ノグチ財団・庭園美術館の協力を得て制作した「Playscape(プレイスケイプ)」のスクリーンショット The International Woolmark Prize via Youtube

「Playscape(プレイスケイプ)」というタイトルが付けられたこのミュージックビデオは、ファッション界の新進気鋭の才能を称える「2022インターナショナル・ウールマーク・プライズ」のファイナリスト7人の発表に合わせて公開されたものだ。ウールマーク・プライズのウェブサイトによると、今年の同賞は「イサム・ノグチの画期的かつ多岐にわたる仕事と、創作における遊びの重要性に着想を得ている」という。

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FKAツイッグスは、イサム・ノグチ財団・庭園美術館の協力を得て、彫刻家イサム・ノグチの「革新的な」プレイグラウンド(遊び場)ビジョンを表現する作品を集めた。20世紀を代表するアーティストの1人であるノグチは、工具や家具から芸術作品まで、物の機能に関する概念を押し広げた作家だ。1930年代には、「遊べる」アートとして機能する公園の設計を始め、そこにあるだけで遊びたくなるような彫刻を手がけた。

「遊び場は形と機能に関する入門書のようなものだと思う。シンプルで、神秘的で、刺激的で、だからこそ教育的なのだ」と、ノグチは1975年に語っている。

ノグチが1988年にニューヨークで亡くなるまでに、米国で完成したプレイグラウンドは1つだけだった。1973年に全米芸術基金(NEA)からの依頼で、アトランタのハイ美術館近くのピードモント公園にいくつかの遊具を作っている。巨大な石のすべり台や緩い傾斜の小山、クモの足のような支柱に取り付けられたブランコ、登って遊べる青と緑の構造物といった抽象的な作品だ。

ミュージックビデオ「Playscape」は、誰もいない展示室に置かれた遊具彫刻の場面から始まる。すぐにダンサーたちが現れ、有名ダンサーのジュリアーノ・ヌネスによる振り付けで、彫刻のしなやかなフォルムのように踊り出す。

うねる波や無限を表す8の字の記号を思わせる、つややかな赤い彫刻の前で踊るのは、同じような赤のゆったりした衣装をまとったダンサーだ。また、モダンダンサーの経験を持つツイッグス自身もミュージックビデオに出演し、ノグチの彫刻の幾何学的構造に合わせるように手足を止めたり動かしたり、角張った印象のダンスを披露している。

ツイッグスは声明で、次のように述べている。「ウールマーク・プライズから選ばれてこのような才能あふれるデザイナーたちとともに仕事ができ、ダンス界の革命児であるジュリアーノ・ヌネスとの初作品をつくることができてとても光栄です」(翻訳:岩本恵美)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年4月13日に掲載されました。元記事はこちら

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