「傍観できない」──環境活動家がワシントンのナショナル・ギャラリーで今年2度目のアートアタック
11月14日、ワシントンD.C.にあるナショナル・ギャラリーの南北戦争に関する展示横の壁に、環境活動家が赤い顔料で文字を書く抗議行動を行った。抗議の目的は、ジョー・バイデン大統領に気候変動に関する緊急事態宣言発令を要求するためだ。
11月14日に環境活動団体、Declare Emergencyのメンバーであるジョージ・グリーンと名乗る紫のポロシャツを着た男が標的にしたのは、ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリーに展示されたオーガスタス・サン=ゴーデンズの彫刻《ショー第54連隊記念碑(The Shaw 54th Regiment Memorial, 1900)》(1900)だ。
全長17フィート(約5メートル)で、石膏に金属加工されたこの彫刻は、同館によると「南北戦争で北部軍に入隊したアフリカ系アメリカ人の最初の連隊のひとつである、マサチューセッツ第54連隊のロバート・グールド・ショー大佐と隊員たちの勇敢な努力を記念する」もの。その隣の壁には、1863年7月18日のフォート・ワグナーの戦いにより、死傷、捕虜、行方不明となったマサチューセッツ第54連隊の兵士の名前のリストが掲示されている。グリーンは指に赤い顔料を付けて、そのリストの下に「Honor Them(彼らを称えよ)」と書いた。
抗議行動を行ったジョージ・グリーンは、サン=ゴーデンスの彫刻のそばで、「尊厳ある非暴力的な市民的不服従」を行った理由について、「現在、気候変動という非常事態によって被害を被っている人々、そして将来被害を被るであろう人々の大半は、(奴隷制を終わらせるために戦い、多くの戦死者を出した)マサチューセッツ第54部隊の兵士と似た境遇にある人々だからです」と説明した。
彼はかつて、住居を失ったソルトレイクシティの人々と一緒に働いた経験を引き合いに、山火事や「経済の沈没」によって、さらに多くの人たちが家を追われることになる可能性があると訴えた。また、気候変動が食料調達に及ぼす影響を受けるのは、特に黒人やその他の有色人種、先住民のコミュニティに多く見られる最貧困家庭だと強調した。
グリーンはDeclare Emergencyがフェイスブックで発表した声明の中で、「何もしないで傍観することはできません」と述べている。
ナショナル・ギャラリーの広報担当アナベス・ガスリーは、US版ARTnewsの取材に対し、「抗議行動をした人物は逮捕され、事件は現在も捜査中です。美術品に被害はありませんでした。スタッフによる懸命な壁の清掃作業により、翌日の15日には展示を再開しました」と答えた。
同館がDeclare Emergencyによる抗議行動の標的になったのは、今年に入ってこれで2度目だ。2023年4月27日、2人の環境活動家がエドガー・ドガの彫刻《Little Dancer Aged Fourteen》の台座と保護ケースに黒と赤のペンキを塗りつけた。これを受け、2人の活動家は今年5月に「アメリカに対する犯罪の共謀」と美術館の展示物や所有物に対する傷害の罪で、アメリカ司法省に起訴されている。(翻訳:編集部)
from ARTnews