行方不明のボッティチェリ絵画をイタリアの一般家庭で発見! 早逝の恋人を描いた約160億円の貴重作品
イタリアの芸術家サンドロ・ボッティチェリの絵画が、ナポリ郊外の個人宅で発見された。この絵画は50年間、所在不明の状態だった。
この作品はもともと、イタリアのサンタ・マリア・ラ・アリータという町の小さな教会に飾られていたもので、その後、地元の家族に譲渡され、数世代にわたって個人の邸宅に大切に保管されていた。しかし、ボッティチェリの最後の作品群のひとつであり、約1億ユーロ(約161億円)の価値があるとされるこの絵画は、謎めいた状況で姿を消し、イタリア政府による捜索も実らず、紛失したとみなされていた。
文化遺産保護を任務とするイタリア国家憲兵隊のマッシミリアーノ・クローチェは、声明で次のように述べている。「ボッティチェリの絵が保管されていた私邸を当局が最後に査察したのは、50年以上も前のことです。それ以来、不可解なことに、この絵は当局から忘れ去られていたんです。作品について調査した結果、ボッティチェッリの絵が50年以上も個人の邸宅に保管されていることがわかり、検査することにしました」
その絵画は15世紀のもので、聖母マリアと幼子を描いている。ガーディアンによれば、キャンバスは擦り傷で傷つき、ニスの酸化による色調の劣化が見られるが、この作品は大規模な修復が予定されており、一般公開されるかもしれない。憲兵隊は今後、この絵画を半世紀にわたり所有していた一族が、作品の正当な所有権を持っているかどうかを調査する。
クローチェの声明は以下のように続く。「この作品は、この家族の間で代々受け継がれてきたものです。しかし、私たちは、彼らが作品を適切に入手したかどうかを調査しています......作品を保持する権利がなかったことを確認した場合、その作品は国家の手に渡るでしょう。あるいは、一家の所有物でありながら、より安全性を確保するために美術館に展示されることもあり得ます」
イタリアでは、このような文化的価値のある作品を個人が所有できるのは、その安全性と保存が保証されている場合に限られる。もし、その個人が所有してもよいと判断された場合でも、イタリア国家憲兵隊によって定期的にその作品が検査されることになる。
美術史家のペッペ・ディ・マッサはラ・レプッブリカに対し、次のように語っている。「ボッティチェリがこの絵を特に大切にしていたのは、この絵画に描かれている聖母が、ボッティチェリのミューズであり、23歳で亡くなった恋人、シモネッタ・カッタネオ・ヴェスプッチをモデルにしていたためです。教皇シクストゥス4世は、システィーナ礼拝堂の完成資金を得るために、有力なメディチ家から経済的支援を募り、この作品を田舎の小さな教会に寄贈したのです。(中略)私たちはこの絵画が、美術館などの正当な場所で保管されることを願っています」
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