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  • 2023.12.15

今週末に見たいアートイベントTOP5: 日本初公開作品も! 150点が集結する「キース・ヘリング展」、身体・ ジェンダー・セクシュアリティに切り込む百瀬文の代表作 etc.

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

百瀬文《山羊を抱く/貧しき文法》(2016)

1. 二藤建人 x 馬嘉豪 「HOLMGANG」(TAV GALLERY)

2人の私的な戦いから世界的な紛争状況を考える、共作の映像作品を発表

若手彫刻家、二藤建人(にとうけんと)と馬嘉豪(マ・ジャホウ)による2人展。二藤は触れられない他者との境界や、重量を可視化する表現者として、彫刻作品を起点としながら写真や映像、インスタレーションなど幅広い表現方法で作品制作に取り組む。一方、中国西安出身の馬は、膨大な人口数の下に潜む暴力性や違和感、今日性とその行方を人型の建築模型用フィギュアに圧縮し表現を行っている。

本展では、初共作となる新作映像作品を発表する。彫刻表現の基礎的なメディウムである水粘土を約150キロ用意し、メイクアップアーティストの手によって、粘土でそれぞれの理想の姿に武装した2人は、お互いの粘土を奪い合い、飛ばしあい、一方が動かなくなるまで戦いを続ける。それらの過程を通して、私的な想いが交錯し、本人も気付かない姿が現れる。闘争に内在する欲望の発露は、今日のパターナリズム(社会的な組織における保護・支配の関係)の転倒の問題に通じ、世界的な紛争状況へと呼応する。多くの鑑賞者の立ち位置を揺さぶるきっかけとなるだろう。

二藤建人 x 馬嘉豪 「HOLMGANG」
会期:12月8日(金)~ 12月24日(日)
会場:TAV GALLERY(東京都港区西麻布2-7-5 ハウス西麻布4F)
時間:13:00 ~ 20:00

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2. 門倉太久斗 個展「スピードレクイエム 」(Gallery10[TOH])

男性と「速さ」の関係に注目。そこに潜む美しさを見つめる

「22世紀ジェダイ」としても活動する門倉太久斗は、美術大学でデザインを学んだ。卒業後はコムデギャルソンでパタンナーとして勤務しながら、アニメなどをモチーフにしたネックレスを制作し、注目を集めた。本名名義の活動は、新しい男性性やジェンダーをテーマに、自由な表現を追求している。

本展では男性と「速度」について自身の考察を反映した新作を含む絵画作品を発表する。人類は食糧が安定して手に入るようになると狩猟の必要が無くなり、男性は筋肉を持つことの意味を失う。その不安を埋め合わせるために、馬、自動車、飛行機など筋肉を代替し、速く移動する方法を考えたのだと門倉は考え、速さを追及する中で生まれた美しさに注目する。男性と速さの関係に潜む美しさへの、門倉の新たな視点を楽しんでもらいたい。

門倉太久斗 個展「スピードレクイエム 」
会期:12月9日(土)~ 12月31日(日)
会場:Gallery10[TOH](東京都渋谷区千駄ケ谷5-20-11 第一シルバービルB1F)
時間:13:00 ~ 20:00


3. キース・ヘリング展 アートをストリートへ(森アーツセンターギャラリー)

《イコンズ》 1990年 中村キース・ヘリング美術館蔵 Keith Haring Artwork ©Keith Haring Foundation

貴重な「サブウェイ・ドローイング」5点を日本初公開。6章でへリングの人生と創作に迫る

1980年代のアメリカを代表するアーティスト、キース・ヘリング(1958-1990)。31年という短い生涯の中で、アーティストとしての活動期間はわずか10年ながら、「アートはみんなのために」という信念のもと、地下鉄駅構内やストリートなど日常の風景にアートを拡散しながら、社会への強いメッセージを発信してきた。

本展は6メートルの大型作品を含む、約150点を展示する。社会に潜む暴力や不平等、HIV・エイズに対する偏見と支援不足に対しての活動のほか、バスキアアンディ・ウォーホルとの交流など、へリングの人生と創作をを6章で辿る。そのほか、日本で起こったキース・へリングブームと彼の日本での活動も紹介。日本初公開となる、ニューヨークの地下鉄駅構内の使用していない広告掲示板にチョークで描いた「サブウェイ・ドローイング」5点も注目だ。

キース・ヘリング展 アートをストリートへ
会期:12月9日(土)~ 2024年2月25日(日)
会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52F)
時間:11:00 ~ 19:00(金・土曜は20時まで、12月31日~1月3日は18:00まで)


4. CAF賞2023 入選作品展覧会(ヒルサイドフォーラム)

国内最大級の学生アートアワード。栄えある13人のファイナリストを紹介

高校~大学院、専門学校の学生を対象とした、若手アーティスト育成を目的とするアートアワード「CAF(Contemporary Art Foundation)賞」。2014年に創設され、10回目の開催となる今年は、木村絵理子(キュレーター)、白石正美(SCAI THE BATHHOUSE)、野路千晶(Tokyo Art Beat 編集長)、桝田倫広(東京国立近代美術館主任研究員)の4人が審査員を務めた。

本展は、多数の応募の中から審査を通過した、絵画、彫刻、映像、パフォーマンス、インスタレーションなど13人のファイナリストによる入選作品を展示する。展示作家は、遠藤梨夏、菅野歩美、岸裕真、小島千尋、小林弘実、佐藤瞭太郎、清水冴、鈴木創大、Ting ZHANG、藤瀬朱里、堀内悠希、山口塁、リー・ケビン。本展開催中に、最優秀賞1人、優秀賞1人、審査員特別賞4人を選出する。

CAF賞2023 入選作品展覧会
会期:12月12日(火)~ 12月17日(日)
会場:ヒルサイドフォーラム(東京都渋谷区猿楽町18-8)
時間:11:00 ~ 19:00(17日は17時まで)


5. 百瀬文「わたしのほころび」(久留米シティプラザ)

《山羊を抱く/貧しき文法》(2016)

映像作品と参加型パフォーマンスで百瀬文の創作を紹介

独自の視点で時代を捉え、表現方法をも模索し応答しようと試みる意欲的な作品を紹介する「知る/みる/考える 私たちの劇場シリーズ」の4回目は百瀬文をプロジェクトとして紹介する。1988年生まれの百瀬は、自他の身体から生まれる違和感やコミュニケーションの不均衡、ときに社会や他者によってラベリングされるジェンダーやセクシュアリティを「演じる」映像やパフォーマンス作品を制作してきた。

本プロジェクトでは、手話を巡るコミュニケーションを描いた《Social Dance》(2019)、男性の動きをモーション・キャプチャーでデータ化し作られた、女性のCG映像を2つの画面で映し出す《Jokanaan》(2019)、かつての戦争で、ヤギが兵士たちの性の処理対象として使われていたという話をもとにした《山羊を抱く/貧しき文法》(2016)の映像作品3点と、参加型パフォーマンス《定点観測》を九州初公開する。

百瀬文「わたしのほころび」
会期:12月15日(金)~ 12月17日(日)
会場:久留米シティプラザ スタジオ(福岡県久留米市六ツ門町8-1)
時間:映像展示 11:00 ~ 19:00(17日は17時まで)※《定点観測》は12月16日14:00、17:00、17日11:00、14:00

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