今週末に見たいアートイベントTOP5: ミニマル・アートの代表作家カール・アンドレの回顧展、国内外94組が参加する横浜トリエンナーレが開幕!
関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!
1. 小金沢健人×佐野繁次郎 ドローイング/シネマ(神奈川県立近代美術館 鎌倉別館)
小金沢健人と佐野繁次郎が時を越えて叶える「線」の共演
現代美術作家と同館の所蔵作家を取り上げ、新たな側面を読む展覧会。今回は、1974年生まれの小金沢健人(こがねざわ・たけひと)を招き、同館所蔵の佐野繁次郎(さの・しげじろう、1900-1987)作品とコラボレートする。小金沢は絵画、映像などジャンル横断的に表現活動を行い、国際的に高い評価を得る。対して佐野は、独特の描き文字と線画による装幀・挿画が油彩画と並び多くのファンを持つ。時代やジャンルが異なる2人だが、ニュアンスに富んだ描線と余白を使うという点で共通している。
本展では、小金沢健人が同館所蔵の佐野作品に目を通し、数百点をセレクトした。映画のワンシーンを思わせる洒脱なイメージで物語を広げる佐野のカット原画をもとに、小金沢が、時間と空間、平面と立体へと展開する新作のインスタレーションを創出する。佐野が描いた町並み、人々などパリのモダンな風景が、小金沢の解釈によって展示空間に展開される。時代を越えて「線を描く作家」が協働する異色の「上映」を楽しんでもらいたい。
小金沢健人×佐野繁次郎 ドローイング/シネマ
会期:2月23日(金・祝)~ 5月6日(月)
会場:神奈川県立近代美術館 鎌倉別館(神奈川県鎌倉市雪ノ下2-8-1)
時間: 9:30 ~17:00(入場は30分前まで)
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2. 横山奈美 - 遠くの誰かを思い出す(ケンジタキギャラリー六本木)
インドでの経験から生まれた代表シリーズの新作を発表
1986年生まれの画家、横山奈美は、ものを見て描くという行為を通して、私たちやものに与えられた役割や制度を再考している。消費され捨てられるものに光を当て、それを描く「最初の物体」シリーズや、ネオンをモチーフに、ガラス管や配電線まで克明に描く「ネオン」シリーズなどで知られる。
本展では、新作の油彩、木炭、ブロンズ作品を展示する。「ネオン」シリーズから、「昨年インドを旅した際に出会った人たちに一枚の紙に寄せ書きのように書いてもらったものを、文字の配置もそのままにネオンにして描いた」という大作を出品。キャンバスに散りばめられた「I am」の文字は、「私は」というニュアンスの他にも「私がいる」という存在を表す言葉として扱っているという。また、ラブという名の犬と少女が共に過ごした思い出の場面を木炭で描くシリーズ「ラブと私のメモリーズ」の新作は、インドで入手した中古の額に合わせて制作した。
横山奈美 - 遠くの誰かを思い出す
会期:3月2日(土)~ 3月30日(土)
会場:ケンジタキギャラリー六本木(東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル3F )
時間: 12:00 ~18:00
3. Elena Tutatchikova / On a Windy Path | 風の音が道になって(POST / limArt)
思考や経験を表現する作家の新作や手描きの冊子を展示
ロシア、モスクワ生まれで京都を拠点に活動するエレナ・トゥタッチコワ。人間としていかに世界を知覚し想像できるかを問いながら、歩き、考え、経験したことを映像や言葉、ドローイング、写真、近年ではセラミックなどの作品を通して表現する。本展は、エレナ・トゥタッチコワの作品集『聴こえる、と風はいう』(ecrit、2022年)の刊行記念展。
同書は、作家自身が置かれた環境、新型コロナウィルスによって世界が大きく変化した2019年からの3年間に制作されたドローイングやセラミックをはじめ、詩やエッセイ、インスタントフィルム写真などを収録している。本展では、同書に収録された作品のほか、新作のセラミックやドローイング、そしてトゥタッチコワが2023年9月に自身で発行した、手描きの線が一枚一枚に描かれた冊子『Echoes: O』を展示する。
Elena Tutatchikova / On a Windy Path | 風の音が道になって
会期:3月9日(土)~ 3月31日(日)
会場:POST (東京都渋谷区恵比寿南2-10-3)
時間: 11:00~19:00
4. 「カール・アンドレ 彫刻と詩、その間」(DIC川村記念美術館)
美術館では日本初。ミニマル・アートを代表する作家の回顧展
1960年代後半のアメリカを中心に興った「ミニマル・アート」の代表的な彫刻家であり、今年1月に逝去したカール・アンドレ(1935–2024)の、国内美術館としては初となる展覧会。アンドレは、木材・金属・石などの素材を同一規格に加工し、床に並置するスタイルで知られる。
本展では、「スクエア」や「カ ーディナル」をはじめとする代表的な床置きの大型彫刻13点に加え、小品8点を展示する。横幅15メートルにも及ぶ《上昇》(2011)や、国内美術館では収蔵されていない作例である《メリーマウント》(1980)など、アンドレの典型的な彫刻作品を紹介する。整然として無機質な印象とは裏腹に、実際の作品を前にすると金属の光沢や錆、木の手ざわり、石の重みなど、物質それ自体の大らかな姿を目にすることが出来る。そして不揃いなユニットがあることにも気が付くことだろう。 また、初期の詩のアンソロジーである「セブン・ブックス」から厳選した約40ページを、作家本人のデザインをもとに制作した展示台で紹介。タイプライターの文字が紙の上に視覚的構造をともなって配置されるアンドレの詩は、彫刻的な文学表現と言える。
「カール・アンドレ 彫刻と詩、その間」
会期:3月9日(土)~ 6月30日(日)
会場:DIC川村記念美術館(千葉県佐倉市坂戸631)
時間: 9:30 ~17:00(入場は30分前まで)
5. 第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」(横浜美術館など)
ピッパ・ガーナーが日本初出展。横浜を舞台に94組が参加する芸術祭
横浜を舞台に3年に一度開催される、現代アートに特化した芸術祭。毎回国際的に活躍するアーティスティック・ディレクターを招き、彼らが選んだテーマをもとに世界中から集めたアーティストとその作品を紹介している。8回目となる今回は、北京を拠点に活動するアーティスト、キュレーターのリウ・ディン(劉鼎)と、美術史家、キュレーター、北京インサイドアウト美術館ディレクターのキャロル・インホワ・ルー(盧迎華)がアーティスティック・ディレクターを務める。小説家、魯迅が著した詩集『野草』(1927年刊行)を今日的な形に解釈し、それぞれの地域の現実と歴史に深く関わることで力強い表現を生み出すアーティストたちを選出した。
市内の3つのメイン会場のほか、街中にも会場を設け、計94組の作品を展示する。社会に鋭い問いを投げかけるトランスジェンダーアーティスト、ピッパ・ガーナー、気候変動問題をテーマにするジョシュ・クラインは日本初出展、⼟肥美穂、北島敬三+森村泰昌、志賀理江⼦、SIDE CORE、佃弘樹が新作を発表する。そのほか出品作家は坂本⿓⼀、⽥中敦⼦、ケーテ・コルヴィッツなど。メイン会場に設けられる、7つのテーマで作品を掘り下げる「セクション」にも注目だ。
第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」
会期:3月15日(金)~ 6月9日(日)
会場:横浜美術館(神奈川県横浜市西区みなとみらい3)、旧第一銀行横浜支店、BankART KAIKO、クイーンズスクエア横浜、元町・中華街駅連絡通路
時間: 10:00~18:00(6月6日~9日は20:00まで、入場30分前まで)